第1067話
ミレアの得た能力を軸に展開する物語、『勇者』のレッドカーペット。
それは、その力を危険視した管理者によって、この妖精の泉に封じられてしまっていた。
しかし、誰も訪れるはずのない迷いの森の最深部に、攻略本の力でたどり着いたミレア達は、無事封じられた能力を会得することに成功したのであった。
「そういえば、なんでこんな何もない場所に封じたんでしょうね。来られれば誰でも簡単に手に入っちゃうのに。“お告げ” で封じるような事をすれば誰も手を出せなかったんじゃないですか?」
リンフィアは自作の漆黒サンドイッチを頬張りながら、ルージュリアにそう尋ねた。
「その質問に関しては私ではお役に立てそうもありませんね。何文この儀式についてはわからない事は多いので。ただ、父曰く下手に介入されないように自ら迷いの森を儀式の場所に選んだのでは? との事です」
「自らというのは、先々代エルフ族長ですか?」
気になるのか、ミレアが割って入ってきた。
当然答えはイエスだ。
「もちろん。そういえば、お二人は試練の際に対面なさったのでは?」
「恐らくは」
と言いつつも、ほぼ確信しているような声音であった。
すると、
「私は一瞬でしたし、声だけだったのでよくわかんなかったです。ほとんど追い出されるような感じで試練を抜けちゃったので」
面目ないとリンフィアは苦笑していた。
「追い出された?………妙な話ですね」
「私が妖精じゃないからじゃないですか? 分かりませんけど」
リンフィアはあっけらかんとそう言い放つが、その実は不明。
これ以上議論しても仕方ないので、話題は自然とカイトで領主と戦っているであろうケン達の方へと移っていった。
「そういえば、金髪は今頃カイトか領主の別宅がある里か。あのG・R………だっけ? あの子と色々探ってンだろ。カバンの中で寝てるクジラちゃん通じて連絡あったけど、領主のヤロー、殺し屋までけしかけて来やがったらしいぜ」
「「「!!」」」
おっと。
と、ついつい小声で呟くコウヤ。
ミレアとリンフィアは見るからに顔を顰めていた。
どれだけの信頼があっても、危険が迫っていると分かれば身を案じるというのが人情だ。
ましてや相手は権力者、加えてケンの味方は1人。
表情の翳りは、あって然るべきである。
「悪いな………」
「いえ………お陰で気が引き締まりました。早速始めましょう」
そう言って、ミレアは武器を持って立ち上がった。
実は、まだ4人は帰れない事情………というより、帰らないで滞在しなければならない事情があった。
帰ったところで、今カイトは敵の巣窟。
今でこそターゲットはケンに絞られているが、帰れば全員が敵の的となる。
そうなれば、練習が出来ない。
つまり何が言いたいのかというと、確実に誰の邪魔も入らないこの場所で、ミレアが授かった力を扱えるようにならなければならないということだ。
「貰いものの力、ここでものにしないと………私がもたつけば、子供達の魂は崩壊し、“疫病” 患者は順に死を迎えることになる。それだけは避けないと………」
疫病。
その正体は病ではなく、白紙化によって強制的に移された新しい肉体に順応出来なかった魂が拒絶反応を起こして発生する現象であった。
ルージュリア曰く、副次的らしいが、ミレアが得た力が有ればその拒絶反応を止められるらしい。
しかし、力を貰ったばかりのミレアは、扱い慣れていない神威の力を、まだ完全に操作できずにいた。
これは、時間との戦い。
残り一月………いや、移動時間もろもろを含めれば、多く見積もっても20日………カイトの方で何かことがあった時を考えれば確実にそれ以下になるだろうというの皆の総意であった。
「そんで、どうすんのさ。目覚めさせるたって、わざわざ時間取るンなら簡単じゃないんだよね?」
「ええ。これでも一応、妖精族の秘伝中の秘伝。使いこなせたのはほんのひと握り。本来ならばその試練すら合格したものは数えられる程らしいです」
ただ、それは裏を返せば成功例はあるということ。
そしてルージュリアは、その成功した者が残した能力の開花方法を知っていた。
「ミレアさん」
「はい」
「リンフィアさん」
「はい!」
ルージュリアは2人を呼んだ。
ここ時点では、ルージュリア以外誰も知らない能力の方法。
コウヤも、ルージュリアが知っていると思ってわざわざ攻略本で探す事はしなかった。
それ故に、この後明かされる開花方法に驚かされることになる。
「これは、2名で行う方法です。恐らく、私よりもリンフィアさんが手伝った方が効果的でしょう」
能力を目覚めさせる方法。
それは、
「お二人で、ほぼ殺し合う程度まで、全力で戦って下さい。」
限界ギリギリの戦いをすることであった。




