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第1066話



 ——————答は出ぬ………か。





 「………」





 矛盾する考え。

 そのどちらも本心。


 答えを出そうにも、どちらかがどちらかを邪魔していた。



 すると、





 ——————ふむ、なるほど。





 声の主は、何かに納得してそう言った。

 そして、ミレアにこう言った。





 ——————資質はある。





 「………………!!」






 しかし、こう続けた。






 ——————だが、迷いもある。実に難儀。






 未だ選別中。


 ミレア同様、この声の主もまた、何かを決めあぐねていた。

 だが、どうやら望みが断たれたわけではないらしい。


 すると、声の主が一つ提案した。






 ——————躊躇いがあると言う事は、悪しき者ではない。しかし、ただ善良なだけの者に、この力は扱えぬ。





 だが、と。

 声の主は続けた。




 ——————とはいえ、汝を逃せば、機会は永久に訪れぬやもしれぬ。世界から隔絶され、改編されてしまったこの妖精界で、ここまでやって来れた者は実に稀有だ。失うのはあまりにも惜しい。そこで、一つ提案しよう。



 「あ………」




 いつの間にか、体の自由が戻っていた。

 しかし、今はそれよりも目の間に現れたものにミレアは気を取られていた。


 いつの間にか目の前に現れた小さな光の球。

 静かに光を放つその小さな光からは、どこか吸い寄せられるような魅力を纏っていた。



 ただ、正体不明というわけでではなかった。

 これが何なのか、求めていたミレアは、直感的にその正体を悟っていたのだ。





 ——————まずは、“欠片” を与えてやろう。




 「!!」





 光は、ミレアに向かって飛んでいき、瞬く間に同化した。


 そして、変化は間も無く訪れた。





 「ぁ——————」






 ———鼓動が聞こえる。


 体の細胞が、血液が、魔力が、私と言う存在が、今体を巡るその力を受け入れ、歓喜していた。


 身震いするほどの力。


 その一端が、解放されたのを感じる———






 それはまだ不完全な力。

 しかし、今のミレアにとっては、十分に強い力であった。





 ——————度を過ぎた力は、人を破滅に導く。まずは、それを使いこなせ。




 「は、はい!!」







 互いに、用は無くなった。

 声の主の気配が遠のいていく。


 ミレアの身体も、だんだんと実体が薄れ始めた。


 唐突だが、去る時間という事だろう。

 すると、






 ——————ミレア






 声の主は、ここで初めてミレアの名前を呼んだ。

 それは、これまでとは違い、とても柔らかい優しい声であった。







 ——————いずれまた見えよう……………私のかわいいひ孫よ。






 「!! 貴方は——————」


 












——————————————————






————————————






——————






———



















 「待って!!」





 瞬きの後、突然景色が変わり、視界が一気に明るくなった。

 思わず目を細めたミレアは、段々と元の場所に戻ってきたことを自覚した。






 「あ、ミレアちゃん! 戻ってきたんですね!」


 「リンフィア………私………」


 「あー!!」




 と、リンフィアは突然大声を上げたと思うと、嬉しそうな顔でミレアに駆け寄りながらこう言った。




 「わぁ………凄い………わかります! 成功したんですね!?」




 リンフィアは、真っ先にミレアの変化に気がついた。

 外見的な変化こそないものの、確かに内側にあるこれまでとは別の力の存在に気がついていた。




 「封じられていた、古の神の力を手にしたんです」


 「神………?」




 説明を入れたのは、ルージュリアであった。




 「ええ。その力は、かつて妖精界に存在したという今は亡き種族たちの崇拝した神の持つ力。エルフ族長たちが、代々守って来た偉大な力です」


 「神の………」




 力を受け取ったことで、体力、魔力共々、確かに向上している。

 しかし、それ以上にはっきりと存在感を強めているものがあった。


 そう、神威だ。



 神の力を得たというだけあって、神威の質がこれまでよりも遥かに良いものとなっている。

 目の力も、どうやら少し増しているようだ。





 「副次的な効果ですが、それがあれば疫病を治せると思います」


 「副次的?」


 「ええ。主となる力は別にあります。力が馴染めば、自ずとお分かりになると思います。何にせよ、おめでとうございます。これでまた一歩、打倒管理者に近づけました」





 いまいちピンとこないミレア。


 しかし、これで確実に力を得た。

 王になり、おかしくなったこの国を救うという目標にも、段々と近づいている実感が湧いた。





 「良かったな、金ロールちゃん。これで金髪も助かると思うぜ」


 「はい!」




 ケンの役に立てる。

 それだけでも、ミレアにとっては大きな収穫であった。




 「にしても、この神威………だっけ。の雰囲気結構変わったな。なぁ、銀髪ちゃん」





 マジマジと特に変わりないミレアを観察しながらコウヤはそう言った。

 しかしコウヤの言う通り、神威の質が変化し、少し別のものになっている様子はあるようだ。





 「確かに………前の神威と比べて………こう………………………あれ………?」



 「?………どうしたんですか?」



 「あっ、なんでもないです! 改めて見ると結構な変わり具合だったので」





 ブンブンと手を振って誤魔化すリンフィア。



 ミレアは特に気に留めてもいなかった。

 だが、リンフィアの方はそうもいかなかったらしい。


 嬉しそうな顔をしているミレアをじっと見つめ、リンフィアは訝しげな表情を浮かべる。




 確かに、質は変わった。

 しかし、少し妙であった。


 神威も、魔力同様個人で少し差異が生じる。

 指紋のようなものだ。

 だから、これは似ているだけかも知れないと思ったが、それにしてはある人物の気配があまりにも濃く感じだ。


 理由はわからない。

 それでも確かに感じた。




 あの日新たに神威を会得した、ラビと同じ神威の気配を。


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