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第1064話



 人が立っている。



 目の前には、恩師ファリスが。

 憧れ、慕った魔導の師は、頼もしい背中を見せていた。



 しかし、何かが引っかかる。

 そう思い、再び見ると、見覚えのある影が複数。




 そこにはリンフィアが。

 その隣にはニールが、ラビが立っていた。


 戦争の際共に戦った異世界人・楠 流や、共に旅をした亡国の王女ウルクリーナ・ルナラージャの姿もあった。


 剣の達人であり、ファリスの旧友でもあるラクレー………ベラクレール・ルーテンブルクの姿も、その弟子でありケンの親友という異世界人、獅子島 蓮の姿も、ある。


 そして、自分を会長と呼び、どこまでもついて来てくれていた生徒会の副会長であり、魔法と呪印を併せ持った奇跡の種族である『天人』の1人、レイ・ウェルザーグも、その兄であるルイ・ウェルザーグもいた。






 やはり、何かが引っかかる。

 それに、なぜか胸が締め付けられるような息苦しさを感じていた。


 恐怖?


 ………いや、違う。





 そう思い、再び前に集中する。






 道は遥か先へ。


 姿は見えない。


 しかし、確かに感じていた。






 この遥か先にいる者を………ヒジリ ケンの存在を。
















——————————————————————————————


 













 「起きませんね」




 気を失ったリンフィアとミレアの様子を伺いながら、ルージュリアはそう言った。

 しかし、それは明らかに気絶でも眠ったわけでも無かった。



 2人は空な表情で、目を開けたままぼーっと立っている。

 ただ、意識はここになかった。




 「始まった………と判断していいんでしょうか」


 「いやぁ、俺に聞かれても」




 と言いつつ、攻略本を漁るコウヤだが、今のところ目欲しい情報が光の文字になる気配はない。





 「話には聞いていましたが、“試練” というのはこうも唐突に始まるものなんですね」


 「試練ねぇ………」





 手持ち無沙汰になったコウヤは、ぶちぶちと草を引きちぎりながらそう呟いた。




 あらかた予想は付いているだろうが、この試練とは、当然の如く例の勇者のレッドカーペットに関連している。


 だが、こうして意識がある………つまりは選ばれなかった以上、目的を達成するための協力が出来ないのだ。





 「ちなみになんで俺らはないの?」


 「詳細は存じ上げませんが、私たちが選ばれなかったというよりは、彼女たちが選ばれたのかもしれません」



 「「うーん………………」」






 共通点はプレイヤーであることくらいしか思い浮かばない2人はこれ以上こうなった原因について考える術はなかった。






 「ま、待つしかないよな。こうして2人とも多分頑張って………………んえ?!」


 「え?」





 間抜けな声が漏れる。


 ルージュリアは、声に反応して咄嗟にコウヤの方を見ると、コウヤは驚いた顔で何かを見ていた。

 ため息をつきながら、くるりと顔の向きを変えるルージュリア。


 すると、




 「………………え?」




 文字通り、息をするのを忘れてしまっていた。




 「あれ………………ここはさっきの………」




 キョトンとした顔で、リンフィアは目をパチクリとさせていた。


 あまりにも早い目覚め。

 予想外の事態に、起きていた2人は混乱していた。





 「あ、2人も何か見たんですか?」


 「いや、俺らは何も無かったけど………………」




 するとリンフィアは、意識のないミレアと驚いたコウヤたちの様子を見てなんとなく状況を理解した。


 恐らく、かなり正確に。




 「なるほど………………()()()()()私は早く目が覚めたって事かな………」


 「え………………」


 「何があったか説明しますね」








 呆然とする2人をよそに、オホンと咳払いをするリンフィア。

 そして、そのまま何があったのか語り始めた。





 「結果だけ言うと、私は勇者のレッドカーペットっていうのは取れませんでした」


 「「!!」」





 2人は………特にルージュリアは、目に見えて肩を落とした。

 すると、





 「それにしても、これって結構意地悪な試験………試練? わからないですけど、そういうものですよね」


 「え、ええ………」





 リンフィアは、なんとなく中で見たものを元に、これが一体どう言う試練なのかなんとなく理解していた。

 そして、答え合わせをすることにした。





 「多分、自分の中で抱えている大きなコンプレックス………恐れているものと向き合う、みたいなものですよね」


 「はい。その通りですわ………ちょうどいい機会ですので、森で説明できなかった部分をここで説明致します」





 より詳細を知っているルージュリアは、補足も交えこの勇者のレッドカーペットを手に入れるための試練について説明を始めた。





 「先に申し上げますが、森で語らなかったのは、試練の内容的に余計な情報を与えて悪影響が出てはいけない、と勝手ながら判断させて頂いたためです。レッドカーペットのためとはいえ、黙っていて申し訳ありません」





 一言述べて、頭を下げる。


 では、と。


 仕切り直しということで、顔を上げたルージュリアは、深妙な面持ちで語り始めた。





 「勇者のレッドカーペットと言っても、この試練そのものは、白紙化以前に存在していました。その管理を行なっていたのが、まさにエルフ族長だったのです。これは、私の父………ウンディーネ族長・ウンディルから聞いた話なのですが、そのエルフ族長曰く——————」













——————————————————————————————













 不思議な空間だ。


 目の前にいるみんなは、本人ではない。

 これは、ミレアの抱いているイメージ。



 この空間は、ミレアとなんらかの形で呼応していると、ミレア自身薄々勘づいていた。





 「ここは………私の産んだ場所………………そしてここは、まさしく()()()()()()()()()………といったところでしょうか」






 前に手を伸ばすミレア。

 当然だが、届くことはない。



 そう、届いていないのだ。



 示しているのは強さ、その立ち位置。

 誰よりも後ろにいるミレアは、この中の誰よりも弱いという事。




 それはミレアにとって、重々承知している事実であり、何よりも辛い真実である。




 ここは、そんなミレアの深層心理が生み出した世界。


 目的はわからないが、そういうものであると、ミレアは確信していた。






 「試練みたいなもの………ということですか………」






 ——————是、である。






 「!!」






 声が聞こえた。

 それは耳をすり抜け、頭の中で響いていた。




 そして、ミレアにこう言った。










 ——————汝に問おう。求めるは………さらなる力か?

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