表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1059/1486

第1054話



 弱いことは自覚しているし、権力も力もない以上、あるもので対抗しなくてはならないのは当然のこと。

 そうして提示された未来は、力がある頃よりもより多岐にわたって存在し、枝はさらに途方もなく広がっていた。

 それでもめげずに未来を見据え、無数にある可能性を自身の手で絞り込む。



 今の自分ではこれがなかなか難しい。



 イレギュラーによって、可能性は潰され、不要な未来が提示される。

 その度に調整し、何度も計算し、手札を集めた。



 何度も、何度も。



 頭の中のゴミ箱には、もうパンパンにゴミ可能性が詰まっている。

 中には望んだ未来が意図せず捨てられたこともあった。




 そして、気がつくと、目の前にはようやくマシな未来が見えていた。

 それは何度も補強した強い枝。


 未だ望まぬ枝も残るが………これで、準備が整った。




 不安はあるが、ただ一つだけ自信を持って言えることがある。




 それは——————ようやくここで、奴の吠え面が拝めるということだ。













——————————————————————————————














 倉庫にて、ヒジリケン発見の報告を受けて4日が経過した。


 あれから音沙汰はない。

 ネームレスの娘の方は、モンスターを討伐している森に出没したという知らせを受けたが、目的は不明。



 ()()()についてバレた可能性を危惧したが、こうも好感度に差が開いてしまった今は敵が何を吠えても問題ない。

 だが、念のため吹聴された時のために、その調査や確認をする人手を既に用意している。



 ぬかりはない。

 最後まで油断せず、一切の隙も見せない。





 現在、好感度は165:58という状況になっている。


 ヒジリケンの方は、特に何もしていないため、徐々に関心が薄れ、数字が下がっている。

 方や領主は、連日のモンスター退治や、その他好感度稼ぎをしたことによって着実に数字を伸ばしていった。




 そして何より、ヒジリケンが行動不能になるほどの負傷を負って逃走したという報告を受けた。


 これはもう、勝ちに等しい報告であった。




 「………………フフフ」




 誰もいないとき放たれた環境。

 それは、領主の感情を誘うように曝け出させていた。


 思わず漏れた笑みからは、悍ましいほどの私欲が見え隠れしていた。




 「これで出し抜ける………ミッションなどと言う枷がなくなれば、後は住民を取り込みたいだけ取り込んで仕舞えばいい。そうすれば私は………いずれは王に………………この国全てを思うがままに——————っと………」




 ふと、大きく開いた両手で顔を覆う領主。

 上がった広角は下がり、抑え込むように昂りを鎮める。


 彼にとって市民は餌だ。

 しかし、支持はまだ必要。

 そのために、わざわざ疫病患者を水増ししたり、今まさに政策の改革などで好感度稼ぎをしているのだ。




 「いかんな………少し落ち着こう」




 悪い癖だと言う自覚はあった。

 だから、いつも通り仮面を被って感情を抑える。



 正義漢、人格者、人気者。



 これを一時のものとしないためにも、慣れていかなければならない。

 いずれ来る、戴冠の時まで。



 そうして頭にうっすらと浮かぶ未来の自分。

 その妄想だけでも、領主はどこか満たされているようであった。



 しかし、




 「………………?」




 何やら外が騒がしいことに気がつき、ハッと現実に引き戻される。


 ガッカリするまもなく、“外面” に切り替えた領主は、バタバタと聞こえる足音が止まった瞬間に、自分の方から声をかけた。




 「ノックはいい。騒ぎか?」




 そして、駆け込んできた召使い——————ではなく、




 「!?」




 冒険者は、肩で息をしながら報告をしようとしていた。

 すぐ様頭を切り替える。


 今、ある用件でしか冒険者を屋敷に入れていない領主としては、何関連の話かはすぐに理解した。


 それを踏まえた上で、報告を促した。




 「森で何かあったのか?」


 「そッ………それ………っ、が………………も、モンスターが………Bランク相当のモンスターの大群が………!!」


 「——————B………だと?」




 Bランク。


 白紙以前なら狼狽えるほどではない通常のモンスター。

 しかし、全てが白紙に帰ったこの国の中でも———特に弱者が集っているこの始まりの里では、とても相手にしてはいられないほどの強敵になってしまっている。




 「兵を総動員しろ!! ギルドとの連携も取れ!! チィッ………これは計算外だ………精々Dが上限かと思っていたら………Bだと? 馬鹿な………そんな——————」




 クスクスと、笑い声が聞こえた。





 「っ!?」




 慌てて振り向く領主。


 しかし、そこには誰もいない。

 安堵して息を吐く………などと言う余裕もなく、冷え切った身体と加速する心臓は煽るように領主を焦らせていった。



 幻聴………それにしてはあまりにもタチが悪い。

 そう思いつつ、ふと見えた鏡に映る自分の表情が酷いものであると気がついた。


 目に見えて浮かぶ不安。

 こうやって客観的に自分を見た領主は、かえって冷静になったのか再び思考を回し始めた。





 (………なんて顔だ………ダメだ。余裕を持たねば………考え方を変えればいい。Bランクを退けたとなれば、評価はさらに上がる。そうすれば、この馬鹿馬鹿しい好感度稼ぎも落ち着けることができる………っ! そうだ、まだギルドには奴がいる。あのノームが動けば十分に勝機は………ある)





 ようやく平静を取り戻す領主。

 しかし、耳には未だ、あの嘲笑がこびりついていたのか、表情は険しいままであった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ