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第1049話



 正直、これは賭けだった。



 片足が潰れ、魔力も残りわずか。

 神の知恵もだいぶ消耗しており、体力も限界が近い。

 何より、致命傷を避けていたせいで防御の機会が多く、腕の感覚がだいぶなくなってきていた。


 満身創痍とまではいかないが、万全とは程遠い状態で再び戦うことになる。

 一応誘導はしたが、今の俺はこのザマなので、ベルドランドの出方次第で一気に不利になるだろう。



 そして何より、戦況だけを見ればやる意味のない賭けだ。



 ………だが、こいつの本心を、人柄を見極めたい。

 この先の出方で、わかる。



 いや、もうその答えは、すぐそこに迫っていた。




 「………来た」




 背後から伝わる風魔法の気配。


 ベルドランドは、魔法を構えて領主の元へ向かう俺を、全速力で追いかけてきていた。

 魔力を大幅に削りながら風魔法のブーストをかけ、一気に加速している。



 さぁ、ここからだ。

 俺が予想している二つの選択肢のうち、どちらを選ぶのか。




 そして、




 「——————!!」












 俺よりもずっと早く領主の元へと辿り着いて武器を構えていた。

 ()()()()()()()()





 「………そうか」


 「………」




 落ち着き払った表情のベルドランド。

 領主の前に立ち、俺の攻撃を真正面から受ける準備を整えた。

 防御魔法が展開され、目の前にドーム状の防壁が生成される。

 恐らく、この魔法では防壁は破れない。


 しかし、それでいい。


 



 「そんじゃ、喰らっとけ!!」





 風魔法、射出。

 ただし、前ではなく、その場で解放した。




 「!!?」




 風魔法は、一点集中する事で殺傷力を持ち、初めて攻撃用に使えるようになる。


 基本的には、それは刃のように斬る形に特化し、食らえばそこに切り傷が出来る。

 他にも、空気弾のように、強い風を噴き出す事で打撃に転じるものもある。



 しかし、魔法への命令次第では集まった風は霧散し、暴風となって周囲のものを吹き飛ばす。

 そしてそれは、わざと引き起こす事が可能だ。


 それはまさに、部屋のものを丸ごと吹き飛ばすような風を生んでいる、今の光景のようになる。




 「なッ………これは………………!!」




 そう。

 今まさに、俺は風魔法を暴発させたのだ。



 つまり、ハッタリである。



 間近で暴風を受け、飛んでいた俺は減速し、そのまま地面に手をついて停止した。




 「っとっと………」




 風が消え、再び衛兵達が俺を取り囲む。

 向こうではベルドランドがジッと俺を睨みつけていた。


 いつ何をするかわからない俺を前に、こう着状態が数秒続く。

 突如訪れた静寂に、場の緊張が高まっていく。


 次、誰かが動けば、再び戦いは始める。

 仕切り直すにはちょうどいい。



 だが、もう用は済んだ。

 強敵との距離も空いた。

 逃げ道は確保できている。



 あとは歩くだけ。




 「というわけで、首を取るのはまた今度だ」




 んじゃ、と。

 気の抜けた挨拶と共に脱兎の如く逃げ出す俺を、衛兵たちは唖然と見つめ………





 「ここで仕留めろーッッ!!」





 ………るなどという都合のいい展開は起きるわけもなく。


 振り返った俺が目にしたのは、思わずため息が溢れそうになるほどの熱気と、雑魚の群れであった。



 だが問題ない。

 もう直に3分が経過する。


 そうすれば、先立ってしていた準備が役に立つ。





 10………9………8………





 雑魚を相手取りつつ、心の中でカウントダウンを始める。

 ベルドランドの方を見ると、どうやら一度やられそうになってビビったのか、領主はベルドランドを手放そうとはしなかった。


 これで生存率も上がる。

 作戦も、問題なく披露できそうだ。


 


 ——————俺を仕留めるために、恐らく領主は兵の大半を集結させると俺は踏んでいた。

 予想通り、屋敷の衛兵は集まり、周りの警備は手薄になる。


 そうなると、()()()も多少は外に出やすいだろう。





 7………6………5………4………





 出すまいと思っていたが、敵を殺すわけにもいかないという条件が貸せられたので、正直なところ助けは少し欲しかった。

 実際今も、雑魚を相手に峰打ちを喰らわせて戦わなければならないので、かなり手間だ。


 まして先程まで相手をしていたベルドランドは格上。

 本気が出せない所為で片足が潰れた。



 歩く度に激痛が走り、それはどんどん増していってる。

 痛みに丈夫な俺だが、意識はどうしても僅かに引っ張られる。

 そもそも動かないと機動力が落ちるという最悪の問題も抱えている。



 だから、いよいよ頼んでいて良かった。





 3………2………1………





 さぁ、時間だ。


 俺は大きく後退し、少し広い場所に移動した。

 直後、神の知恵は解け、俺は通常の状態へと戻った。



 お別れの挨拶をしよう。




 「ハァ………ハァ………………もし、仕方なく従っているやつがいれば聞け」





 俺はベルドランドにも聞こえるように、大声でそう言った。

 正直、色々と言いたいことはあるが、ここはあえて多くは語らない。


 そして、最後に一言、こう残すことにした。




 「百歩………いや千歩譲って恐怖で従うのはいい。でも、仁義をテメェから捨てやがったらその時は——————迷わず殺すぜ?」


 「「「ッ………」」」




 明らかに表情を動かされる何人かの衛兵。


 顔に浮かぶのは、恐怖ではない。

 自分がしていることへの罪悪感からくる、“痛み” に悶えた顔だ。


 どうやら、まだ救いようのあるやつは残っているらしい。

 同時に、もうどうしようのない奴もいるようだが。



 だがまぁいい。

 間に合ってくれた。




 「時間だ」









 直後、凄まじい破壊音が上から聞こえて来た。

 それは徐々に迫り、そして、




 「数秒遅い」


 「細かい………です」




 天井を貫き、G・Rは颯爽と登場した。





 「「!!」」





 一応指示で顔は隠しているが、バレてしまったらしい。

 顔を見るなり、衛兵達は血相を変えて向かってきた。


 だが、G・Rは雑魚には目もくれず、フードを外して離れた場所にいるベルドランドの方を見つめた。


 すると、




 「!! ………………お前………」





 明らかに異質な反応を見せるベルドランド。

 動揺する奴に向かって、G・Rは悲しそうな表情で、一言。







 「………………ベル」





 そう呼んで、目を逸らした。

 そして、




 「………行き………ましょう」


 「頼む」




 スキル『帰巣』 発動。

 その瞬間、俺たちを狙っていた剣も、槍も、一切俺たちに触れることなく、空を切り裂いた。

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