表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1052/1486

第1047話


 今日の収穫はある程度得られた。

 後は脱出すればそれでいい。


 ただ、一つ聞きたい事があった。


 それだけを聞いて暴れるとしよう。




 「なぁ、領主サマ。冥土の土産と思って聞くけどよ」


 「殊勝な心がけだな。死んでくれるのか」


 「冗談と本気の区別もつかねぇのか?」


 「本気になるのだから関係ない」



 本当に余計な口の回るおっさんだ。

 が、ここでイライラしても仕方ない。


 尋ねておこう。




 「アンタがずっと追っているあの女。あいつはアンタの元部下か?」


 「………それを聞いてどうする?」


 「単なる好奇心、つったら教えてくれンのかよ」




 やれやれとかぶりを振る領主。

 だが、それも結局本人に聞けばわかる事。


 それ故領主は隠す事なく質問に答えた。




 「お前が思っている人物と同一なのであれば、そうだ」


 「!」




 そうか、と呟き俺は剣を抜いた。

 そして、念のため顔を隠し、髪色を変えて準備を整える。




 「意味のないことを………」


 「よく言うぜ。これの意味はアンタが一番よくわかってるだろ?」


 「ッッ………………」




 ほんの僅かに言葉が詰まったのを、俺は見逃さなかった。

 そう、この変装には意味がある。


 以前俺が立てた予測………俺の敗北条件である一定までの好感度の低下を仕掛ける行動を、領主が取れないという予測だ。

 地位も権力もあり、今は人望もある領主。


 貶めようと思えばいくらでもできるのに、わざわざしない理由がわからなかった。



 そこで考えたのは、二つ。



 一つはその条件を知らないというケース。

 そしてもう一つは、直接的に俺の好感度を下げる行為が取れないというケース。




 今の反応を見る限り恐らく——————後者だ。





 「礼を言うぜ、おっさん。これで俺も動きやすい」


 「賊だ!! 始末しろ!!」




 開戦待った無し。

 周囲の魔力が膨れ上がり、幾つもの魔法が形成されていく。



 そう。

 こいつらは知らない。



 俺を相手に魔法を使うのがどれだけ無意味なのかと言うことを。




 「——————テメェが出てこいよ」


 「!!」




 術式が破壊され、ガラスが割れたような音がそこら中から聞こえてくる。

 集まっていた魔力は霧散し、大惨事となっていたはずの部屋は、何秒経っても無事なままであった。


 驚愕する領主。

 この時初めて、大きく表情を変えた。


 そして、




 「つーわけで、お邪魔しやした」


 「っ………貴様——————」




 手を伸ばす領主。

 当然待つわけがない。


 ドアを蹴破り、俺は部屋を飛びでた。

 だが、これで終わらないことも重々承知している。




 「おお………ゾロゾロと………………」




 一気に駆け抜けようとすると、そこには衛兵達がズラッと並んでいた。

 剥き出しになった敵意が降り注ぎ、ついつい笑いが溢れる。




 ——————ここに来て気づいた事がある。

 それは、敵側の中でも、領主の裏を知っている者と知らない者がいると言うことだ。


 純粋に、表側の領主だけを見て慕っているものもいれば、領主の裏を知ってついて行ってるものもいる。




 前者は別宅にいた執事や、先程のメイド。

 別宅のある里にいた一部の衛兵………俺に助けを求めてきたあの衛兵も多分前者だ。


 しかし、あからさまに俺を警戒していた人物………今まさに目の前で俺を迎え撃とうとしているベルドランドは、恐らく後者。


 後者は、俺が領主に敵対する人物であると知っていたのだ。





 「職務なら容赦はするが、外道に加担して俺を殺ろうってンなら、ある程度の苦痛は我慢しろよ?」


 「………関係ありません。賊であれば始末する。ただそれだけの事」


 「そうかい」




 笑う気は失せた。


 殺したり、闇雲に苦痛を与えるつもりはない。

 ただ、一応無実の俺に職務と称して危害を食えようとするその根性には、灸を据える必要がありそうだ。




 「ここで始末する!」




 ベルドランドの大声とともに、一斉に衛兵達が流れ込んでくる。


 やはり魔法は撃ってこない。

 そして、室内であるお陰か、やたらめったら飛び道具を撃ってくる奴もいなかった。


 攻撃の種類は接近に絞られる。

 多角から迫るそれなりの威力の攻撃。




 しかし、やはり未熟。




 力はいらない。

 そっと剣を差し込み、攻撃の線をずらす。



 そして、すれ違いざまに魔法を残し、発動。


 まとめて3人が倒れ込んでいった——————その瞬間、






 「!!」





 鋭い一撃が、一瞬にして迫る。

 剣を即座に返し、刀身を現れた槍に当て、なんとか攻撃をずらした。


 しかし、





 「っ——————」




 思わず剣を手放してしまいそうな凄まじい衝撃と痺れ。



 重い。



 前にいた3人とは比べ物にならない重さ。


 そして、反撃も早い。

 ずらされた槍を即座に持ち変えて力勝負に切り替える。


 瞬時にそれも弾いて距離を取ろうとするが、圧倒的なステータス差がそれを許さない。

 何より、詰め方——————足運びが他の衛兵とまるで異なる。



 白紙化しても、歩法の技量は変わらない。

 つまり、本来の力量がそのまま現れる。




 「っ………テメェ………」




 槍の持ち主は、ベルドランドであった。


 明らかに戦い慣れしている。


 積み上げられたものは、10年20年の年月ではなく、100を超える歳月を感じる。

 熟練度はまるで計り知れない。




 「ジジィだったのかよ………!」


 「人の尺度で見れば、二周くらいでしょうか、ッ!!」




 予想外の強敵。

 恐らく、白紙化以前の技量は、ニールに引けを取らない。


 厄介なことになりそうだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ