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第1046話



 「ほう………………堂々としたものだな」


 「戦いに関して、意味のねーことはしない主義でね。それに、アンタが敵だとはっきりさせてくれて助かったよ。これで心置きなく潰せるからな」





 俺がそういうと、愉快そうな笑みを浮かべる領主。

 お互い笑っているが、その空気感は全く笑えない。


 言葉の一つ一つに妙な敵意が纏わり付き、絶えず何かを探っている。


 出し抜くためのヒントを求めている。





 「聞いた通り不遜な男だ。それに見た目は想像以上に若い。若者なのは知っていたが、まだ子供。しかも人間の子供だ」


 「まぁ、アンタらの尺度で見れば人間のガキなんて赤ん坊みたいなもんかもしれねーな」


 「そう、赤子。無邪気、無垢、何もわかっていないが故に、わがまま勝手に大人の邪魔をする………」




 領主は肩をすくめながらそう言った。

 好き勝手言ってくれるものだ。


 すると、更に領主はこう続けた。




 「聞いているぞ。里の民を救っているとな。そんな偽善を行っているにも関わらず私を倒そうとするということは、君はきっと私を悪だと思って邪魔をしているのだろう?」


 「心当たりは?」


 「ないに決まっている。悪事に関してはね。ただ強いて言えば、一見すると悪だと看做されかねないことはしたかもしれない。例えば………疫病の件とか、ねぇ」




 ハッ、と思わず乾いた笑いが溢れる。


 疫病の事をピンポイントで当ててきたのは、おそらく俺がG・Rと一緒にいることを知っているから。

 疫病の件を知らなければ、確かにG・Rとは組んでいない。


 あれも側から見ればテロリストみたいなものだ。


 だが、それでも俺がG・Rと行動を共にしているのは、




 「悪だろ、普通に」




 こいつが悪であるという確信を持っているからだ。




 「ダメだと思ったら見捨てて、何も言わずに家族から金を搾り取る。何様だテメェ」


 「それが幼稚なんだよ。あれはもう治らない。それ故私が利用している。始まりの里はただでさえ力が弱い。動くには金もいる。その金で救えるものは救うし、そもそも意味のない殺しはしないつもりだ。しかし、切り捨てるべきものは切り捨てる。利用できるのであれば、生きている者のために利用するだけだ」





 患者は見放すべき。


 はっきりとそう言った。




 「驚かないということは、私が()()で何をしようとしているのかよく理解しているようだな。死者の冒涜なんて言ってくれるなよ? 私は別に悪政を敷くつもりはない。利用した力で更に上へと上り詰めたあかつきには、その責務を全うするつもりだ」




 いけしゃあしゃあとよくもここまで口が回るものだ。


 しかし、合理不合理で見れば、領主の判断は一概に否定できるものではない。

 今までの里は、治安が悪かっただけで、暴政を行なっていたわけではない。


 だが、こいつに政はさせてはいけない。

 これだけはわかる。




 「領民が病に冒されてもハナから救おうとしないやつに、そんな地位は任せられねぇな」


 「ははは、それは言いがかりというものだろう。私も最初は救おうと………」


 「ウソだな」




 キッパリと、突っぱねるように俺はそう言った。


 しかし、領主は一瞬目を丸くするも、“ほう?” と惚けて見せた。

 認めるつもりはないらしい。


 いちいち言わせるなと言いたいが、今はそれをグッと堪えて俺は丁寧に説明をしてやった。


 


 「疫病の蔓延はここ2〜3年のものだと聞いている。アンタの別宅のある里を見回ったが、放置されて2〜3年………隔離までの作業はだいぶ早かった。つーか早すぎだ。んでもって隔離先は自分の自宅。正気を疑うね。普通ウチに患者を集めて自分も住むか?」




 無表情を貫く領主。

 ならばはっきりと言ってやろう。




 「アンタはあれが疫病ではないと知っていた。感染らないのにわざわざ “隔離” したのは、その時からやる事は決まっていたからなんだろ? 自分を強くする素材を、内々で集めていたんだ。救うつもりなんてよくも言えたもんだなこのタヌキが。裏しかねぇだろうが」


 「もういい。わかった」





 顔を覆うように右手で頭を抱え、領主はそう言った。


 これ見よがしにため息をつき、頭を振っている。

 観念したのかとおもった。



 いや、その通りだ。

 観念したのだ。


 故に、取り繕うのをやめた。




 「ならばもう、選択肢は一つだ」






 ——————途端に、空気が変わった。






 「お前も里では顔が知れている。なかなか人望も得ているようだな。そんな奴を殺せば後に面倒事になりかねない。故にここで手を引くのであれば、領地の追放で許してやろうと思ったのだが、思ったよりお前は色々と知っているらしい」




 グッと指先に魔力を集める領主。

 だが、魔法を使う気配はない。


 これは恐らく——————攻撃の合図だ。




 「ご退場願おう。ここはお前に相応しくはない」


 「そっくりそのまま返すぜこの外道が」





 部屋の周りを囲む気配。

 凄まじい人数が、そこに集まっていた。



 やっぱりな、となんとなく予感はしていた。

 というより、のこのこ敵が乗り込んで手を出さないわけがない。


 ただ、俺も馬鹿ではない。

 一応、G・Rの頼み事を受けるにあたって()()もしてきた。



 というわけで、死なないように頑張るとしよう。

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