表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
105/1486

第105話


 「オラッ、起きろ」


 「へぶッ!?」


 ビンタをしてヨルデとその子分を起こした。


 「こ、ここは」


 「フェルナンキアだ」


 「なっ! 本当に俺たち全員を抱えてここまで来たのか!?」


 「ああ」


 「バケモノめ………」


 なんか今更だなー。

 

 「んじゃ、そろそろ俺たちは行くからな。入り込んだ連中の処理もしねーとだしな」


 「はい。それに報告もしないと」


 今回の件は思った以上に大事そうだ。

 魔族が関わっており、既に危害を加えられた人間もいる。

 当の本人はキョトンとしているが。


 「じゃあな」


 「ま、待ってくれ!」


 どう言うつもりかヨルデが引き止めて来た。

 本当にどう言うつもりだろうか。


 「ンだよ」


 「この前は悪かった!」


 「は?」


 この前とは、寺島の件だろうか。


 「お前は、俺を助けてくれたんだよな? なら、せめて、今までの事を謝らせてくれ!」


 「………あー」


 謝られるとは思わなかった。

 こいつもこいつの兄貴の様に性根が腐っていると思ったが多少はマシらしい。


 「それは俺じゃなくて今度寺島………お前らが脅かした奴にあったら言え」


 「ああ、そうするよ!」


 「そうか。じゃあな、懲りてんならもう繰り返すなよ」


 不良の俺が言えた事じゃないけどな。


 ヨルデ達はそのまま何処かへと去っていった。







 「さて、侵入者どもを回収しに行くか。お前はギルド職員とかに連中を護送して貰う様手配してくれ。俺はさっきの魔族を連れて帰る。多分オマケ付きだ」


 俺はニヤリと口角を上げる。

 

 「オマケ?」


 「ああ、オマケだ」










———————————————————————————











 「厄介な魔法掛けやがって。まさかここまで高度な魔法を掛けれる人間だったのか………メンドクセー」


 俺の捕らえた魔族を解放しようとしている人影。

 声からして恐らく女だ。


 「危険度を釣り上げないとだ、はぁ………ダルい。もういいや、諦めよー」


 魔族は諦めて帰ろうとした。

 しかし、


 「よっ」


 「!」


 こうなる事を大体予想していたので俺はここへ急いだ。

 結果ギリギリのところで間に合ったわけだ。


 「つれねーなァ、同胞を置いて行くか? 普通」


 「びっくりしたー………君らがさっき出ていったと思ったから出てきたんだけどな。いっぱい抱えてたけど」


 「やっぱ監視してたな。あの辺からだろ」


 俺はさっきまでこの魔族がいた場所を指差した。


 「気づかれちゃってたかー。面倒くさいやつ見つけちゃったなぁ」


 「メンドクセーと思うンならさっさと捕まれ」


 俺は一歩引いて飛び出す準備をした。


 「うーん………そうだなー………うん、ヤダ」


 「!」


 突如得体の知れない気配を感じた。


 何だ、この感じ………


 周囲には俺とこいつ以外何もない。

 かと言って視線は感じない。

 だが、()()()()()()()()()は感じる。


 『リア、帰還しろ』


 「!」


 突然声が聞こえた。


 「りょーかーい」


 「待ちやがれ!」

 

 俺は魔族に向かって飛んだ。

 しかし、


 「!?」


 すり抜けた。


 『残念だったね、おにーさん』


 「それは………【空間転移】か………!」


 「! ………これは本格的におにーさんを警戒する必要があるかもね」


 【空間転移】


 とある固有スキルの技の一つ。

 まず肉体を転送し、追って精神を転送する。

 転移する速さを重視するためにこの様に分けられた。


 「チッ………おい、声だけのやつ」


 『………』


 「テメェらの目的は何だ? なぜこの国に手ェ出しやがる」


 なぜだ。

 人間を滅ぼすためか?

 それとも征服するためか?

 否。

 それならばとっくに戦争になっているはずだ。

 しかし、現状その気配はない。

 これはいわゆる冷戦、ただの睨み合いでしかない。

 こっちは勇者を召喚してあるが、まだ育成段階。

 戦ってはいない。


 すると、声の主は重々しい声でこう言った。


 『それがこの世界に来た者としての使命だからだ』


 「ッ! テメェは!」


 その瞬間、謎の気配は消え、声は聞こえなくなった。



 「………クソっ」


 これで確定した。




 エヴィリアルは“召喚”をしている




 「ん?」


 俺は足元に落ちていた紙束を拾い上げた。

 何か色々書いてある。


 「………これは」









———————————————————————————











 「これが、今回の報告です。こちらがその現場を“現像”したものです」


 メイは、ダグラスとギルファルドに写真を渡した。

 

 「まさか魔族どもが絡んできやがったたァな。どう思うよ、ギル」


 「さぁな、滅多なことは言えぬよ。私も今回の様なケースは初めてだからね。何だかんだ魔族は一般市民に手を出すことは今まで殆ど無かった。それがここに来て急に手を出して来たとなると………」


 「戦争か」


 「まぁ待て。その可能性も否定はできないが、手を出してくるならもっと前に出しているだろう。そうそう結論は出せない」


 ダグラスは忌々しげに舌打ちをした。


 「選りに選ってこの大会かよォ………ったく、勘弁しろよなぁ」


 「それと、ケンくんがそろそろ捕縛した魔族をここまで連れて来る筈です」


 「ほう、坊やがかね」


 メイは坊や?と一瞬首を傾げたが、ケンのことだろうと思って、はい、と答えた。


 「うぃーっす」


 俺はちょうどそのタイミングでギルドに着いた。

 手には捕まえた魔族と、さっきの女魔族が落とした紙束を持っている。


 「お、ギルファルドのおっさんも一緒かなら丁度いいや」


 俺は抱えていた魔族を適当に転がした。


 「ほらよ。あと数時間で起きる。【ルミナスイリュージョン】掛けてっからちょっと待ってくれ。それと」


 テーブルの上に拾った紙束を置く。


 「ンだこれは?」


 「中身見てみろよ」


 ダグラスは紙をめくった。


 「………こいつァ」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ