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第1041話



 4対1。



 近接型は1人潰したので、近接型1人と遠距離3人。

 “知る力” で身につけているものを調べてみたら、遠距離は魔法だけでなく、飛び道具も忍ばせていた。


 さぁ、どう出るか。




 「………ん?」




 ふとG・Rの手元を見てみると、持つ位置が短いことに気がついた。

 そういう持ち方かと思ったが、あれでは満足突けないだろう。


 という事は、




 「ッッ!!」


 「!!」




 やはり、と予感が的中し、面を食らった黒装束達の様子を見て、ついほくそ笑んでしまう



 正面、少し離れた場所にいる近距離の黒装束に向かって、G・Rは槍を放った。


 そう、投擲だ。



 風が可視化されたかのように見えるほど、勢いのついた一撃。

 次第に加速しながら敵の脳天を目掛けて突き抜けていく。



 凄まじい威力だ。




 「ッチ………」




 しかし、それを黙って喰らうほど敵も甘くはない。

 面を喰らいつつも、落ち着いて槍を躱す。


 最短の一歩。


 槍を恐れず、斜め前に身体を入れ、助走に入る。

 そして、その一歩を軸に踏ん張り、前へ飛ぼうとしたその瞬間、





 ヒュルリ、と。


 風を切り裂く様な高い音が響く。

 すると、




 「!?」




 避けたはずの黒装束に切り裂かれた様な傷が出来ていた。


 なるほど。

 纏わせたのではなく、魔力を満たしたのだ。


 あれは魔法武具。

 見えている範囲の外に、刃を纏わせる。

 下手に近づけば斬られる上に間合いも取りずらい。

 なかなか性格の悪い武器だ。



 だが、こうなるとG・Rは丸腰。

 この後の攻撃をどう受けるか。



 敵は一体魔法で来るか武器で来るか。





 「………む」




 魔法——————を一瞬使う素振りが見えたが、俺の魔法破壊を警戒したのか、瞬時に切り替えた。



 そう警戒せずとも、俺は手を出すつもりはないというのに。

 何せ、G・Rの顔には、薄らと笑みが浮かんでいるのだから。





 「………来い」




 その瞬間、僅かに感じる魔力の揺らぎ。

 不自然かつあまり感じた事のない種類のもの。


 何かが、一瞬で駆け抜けた。





 「!! あれは………」


 「「「!!」」」




 何も無かった筈のG・Rの手から、槍が出現した。


 目は敵の武具を捉え、槍の辿るべきルートを一瞬で読み取る。



 そして、目つきが変わった。

 的確にかつ最低限、頭の中で描いた線を辿る。


 その刹那、飛んでいる武器の勢いは死に、全て地面に真っ逆さまに落ちていった。



 あまりにも慣れた手つきに、思わず舌を巻く。




 それに、驚いたのはそこだけではなく、投擲槍最大の弱点である、手元から離れるという点を克服したこと。


 これはかなり大きい。




 「そろそろ行き………ます」




 遠距離担当の黒装束と距離を詰めるG・R。


 すると、




 「!!」





 鳴り響く鈍く高い金属音。


 魔力の衝突と鋼のぶつかり合いで、鮮やかな炎が飛び散る。


 先程のダメージからすぐに回復した接近役の黒装束と位置を入れ替わり、接近役がG・Rの攻撃を受け止めた。




 敵は手数の多いダガー。


 今のままでは間合い的には少し近すぎるが、敵はその状況を保つため、息をつくも間も無く連続で仕掛けて来た。




 怒涛の連続攻撃。


 細やかな動きは、槍使いに強い圧力と窮屈さを絶え間なく与える。




 丁寧な足捌きと最小限の動きで躱しているが、これもどれだけ持つ事か。








 今はまだ遠距離担当も攻撃を出しきれずにいるが、一瞬でも隙を見せた瞬間、背中からやられてしまう。




 一旦距離を置きたいが、風の放出はない。


 恐らく、接近で使うと自分も巻き込まれるのだろう。




 だが、それでもなお、G・Rの表情は崩れない。


 不気味なまでに平静を保ったその顔からは、何かが透けて見えていた。


 そして、






 「道連れです」




 「!!」






 強引に下がって距離を取るG・R


 しかし、下がり方は甘い。


 抜けきれない間合い。

 敵と程よく距離が空いた事で、遠距離担当の躊躇が完全に消えた。




 突如として危険に囲まれたG・R。

 いや、囲まれにいったのだ。


 


 この状況を作り出すために。







 「巻き………上げる!!」



 「「「!!」」」





 放たれた武器を次々に薙ぎ払う風の幕。

 風は、視界を一瞬にして覆った。



 だが、本番はここから。

 風が晴れたその瞬間、そこには内側にいた2人の姿はなかった。



 魔力をたどり、首を曲げた先は——————遥か上空。




 あの風の正体は、凄まじい上昇気流であった。

 しかし、すぐさまハッと気がつく。



 この一瞬で、既に決着がついた事に。






 「風のなかで動くには、コツが必要………です。巻き上げられたのがウンディーネならまだしも、サラマンダーなら少しは楽かと思い………ました。が、思った以上に、楽………でしたね」




 先程の女同様、睡眠薬で男が眠らされていた。

 顔を負っている布が取れ、素顔が見えていた。



 妙に安らかな表情だ。

 まるで、憑き物が落ちたかのような、そんな顔をしている。


 すると、何を思ったのか、G・Rはその男の顔を見て、なにやら苦い顔をしていた。


 そして、小さな声で、しかし3人には聞こえるようにこう呟いた。




 「………また、お告げ………………ですか」


 「「「!!」」」




 明らかに動揺を見せる3人。


 それを見て、G・Rの表情はさらに険しいものとなった。





 「意義のない暴力も、望まない殺しも、お告げの名の下強制される。これが、今の妖精界の現状………です」



 「………………」







 正気じゃない。


 生活………いや、人生の操作。



 俺たちもレッドカーペットを進んでいたらああなっていたと思うとゾッとする。



 しかし、妖精たちにはもっと酷であろう。

 俺たちの様に、選択する自由すらなかったのだから。



 故に、





 「………続け………ましょう。構えて………ください」





 G・Rは武器を取る。

 戦えば、違反ではない。


 名前は奪われない。


 それが、G・Rにできる唯一の救済であった。





 「私が、勝ち(救い)………ます」

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