第1040話
「侵入者はこの奥か?」
黒装束の男が尋ねると、同じく黒装束の別の男は、コクリと頷いた。
似た格好、ユニフォームとでも言わんばかりの統一感は、同じ団体に所属していることを窺わせる。
しかし、それも普通ではない。
目すら覆って完全に顔は隠され、マントのせいで体格も違いがわからない。
強いて言えば身長には若干の違いはあるが、それ以外では頭巾に一本引かれた線の色くらいでしか、区別はつけられそうもない。
とにかく不気味な集団であった。
そして、その集団は、森の奥にある小さな家を一点に狙っていた。
「間違いありません。“魂狩り” の魔力です」
「よし、とうとう追い詰めたな。抜かるなよ。確実に息の根を止め、任務を遂行しろ」
「「「承知」」」
森の周りに火を放ち、サラマンダーの力で炎のリングを作り出す。
逃げ場を無くし、敵を追い詰めた彼らが次に行うのは、実行——————すなわち殺害。
故に、
「夜分遅くにご苦労なこった」
「「「!?」」」
臨時の用心棒として、俺は役目を果たすことにした。
「身のこなし、暗具、気配の消し方、忍び足、言わずもがな殺し屋だな」
向こうで俺がやった様な超速パワーアップが出来ず、地道な努力が必要な不便な世界だが、利点もあった。
それは、装備や雰囲気などをしっかり観察すれば、ある程度手の内が見えるという点。
ポイントを割り振って成長するシステムである以上、器用貧乏は論外だ。
だから、ある程度のミスリードは防げる。
まぁ、こいつらは完全に見たまんまだから関係ないのだが。
「さてさて………敵の数は………」
木の上からよく見える。
人数はきっちり5人。
サラマンダー2名と、エルフ2名に、シルフが1名。
遠距離3、近距離2。
1人で戦う身としては厄介だが、まぁ問題はないだろう。
時刻は午後23時58分。
運がいい。
向こうは恐らく0時決行の予定だったのだろうがそれが功を奏した。
神の知恵、使い切っても即回復可能。
思い切りやれる。
「ダメ元で聞くが、領主からの使いって事でOK?」
「………………ッ!!」
近距離戦闘員2名、左右から挟み込む様に飛び込み、少し離れた場所から魔法を放つ準備をしている。
魔力解析——————完了。
雷属性の速攻魔法・数種。
放てばタイミング的には絶妙。
防御を妨げ、数発のダメージが確実に入る。
しかし、
「せっかちだな。仕事は余裕を持ってやれよ」
「「「!?」」」
解析の瞬間、魔力をたどり、魔法術式を破壊。
そして、ついでに術式を改変。
一つは大きく狙いを外れ、向かってくる黒装束の男に向いた。
「!?」
身体を捻って回避する男。
向かって来たのは速度重視の雷魔法。
漏れ出た焦りの声が聞こえる。
回避するのに全神経を注いだ様で、当然攻撃どこではなかった。
そして、一瞬にして瓦解した陣形。
向かってくるのは1人。
「そうそうタイマン張れよ。なァ?」
「っ——————」
心臓を狙って突き出されたダガー。
しかし、動揺と躊躇でブレた攻撃は、容易く刈り取れた。
「よっ………」
スルッと距離を詰め、ダガーを外に弾く。
暗殺者といえど、やはり白紙化の影響か、動きは甘く隙だらけ。
武器を奪われた直後の動きも雑で、抑えるのは容易であった。
「はいちょっと悪いね」
そして、懐から取り出した粉を黒装束の口に当てた。
G・Rが調合したという眠り薬。
無力化ように作ったと聞くが、効果のほどはどうなることやら。
「!? っ、ぃ…………ぅ…………………………ぁ………」
「生捕成功ってか。安心しろ、女でも手は出さねーから。まー戦利品は貰ってくけど」
黒装束を腰に下げてるアイテムポーチを奪い、こちらの腰に括り付けた。
「さて。命を狙われている以上これは正当なカツアゲだ。というわけでテメェら」
「「「っ………」」」
一言言って、さっさと倒したい………と思ったが、敵の力量を見た限り、“力試し”に使ってもこのレベルなら問題ないだろう。
いい機会だ。
予定通り、ここでしっかり腕前を見せてもらう。
「身ぐるみ差し出してオネンネしてろ………です」
「「「!?」」」
一斉に振り返る黒装束達。
気配に気づかない杜撰さは今は突っ込まないとして、取りあえずここはG・Rにやってもらおう。
「お手並み拝見だ」
「了解………です!」




