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第1022話



 「疫病調査ねぇ」




 偶然ギルドに居合わせていた俺は、ギルドマスターの執務室でリンフィア達を待っていた。

 妙にソワソワするのは、やはり手持ち無沙汰だからだろうか。



 否。

 はっきりと理由はわかっていた。




 「分かりやすくソワソワしてんの珍しいな」


 「まだそんなに感情は死んでねーぞ、俺は。いやさ、いよいよか、ってのがな」


 「?」




 こうなるのをずっと待っていた。

 治療費を集めている時点で、領主が関わっているのは間違いない。

 となれば、関わるには領主本人か大規模な組織の了承が必要だ。



 相手は腐っても領主。

 時が来るのを待っていたが、思ったより早く機会が回って来てくれた。




 「つか、ソワソワしてるっつーけど、お前も気になってたんだろ? 疫病問題」




 そう指摘され、思わずずっとやっていた手遊びを止めるコウヤ。

 こいつは俺と違って相棒イーボのために、イーボの妹の治療費まで工面している。


 領主に疑念を持っているいま、奴が善か悪かは俺以上に白黒はっきりさせたいところであろう。





 「………お?」





 ノック音が聞こえる。

 が、相手は返事を待つことなく、勝手に部屋に入ってきた。





 「お二人とも、いらしてたんですね」


 「なるほど。いきなり調査が指名で入って来たと思ったら………お前の仕業か。ルージュリア」




 隙のない笑みを浮かべるルージュリア。

 さも何もないように笑っているが、恐らく何か権力を濫用して指名に持っていったのだろう。


 その時だった。




 「!!」




 青い画面、ウィンドウが表示され、メッセージが打ち込まれる。

 どうやら,ミッションが始まったらしい。


 その内容は、





 「………バッドエンドを回避しろ?」





 内容は異界童話。

 しかし、そこにあるのはバッドエンドを回避しろという指示と、もう一つ。



 嘘をつく子供【達】という文字のみであった。



 括弧抜きされている“達”を除けば、これもまた童話。

 いわゆるオオカミ少年の元となった物語だ。


 これまでもそうだったが、異界童話は向こうの………地球の童話が元となっているものだ。




 例えば、ゴーレム騒動の場合は、“幸福な王子”という童話が元となっている。




 『美しい街の象徴となっている、宝石の目を持ったこれもまた美しい銅像。


 その銅像には意思があり、ある日渡鳥に語りかけ、街の貧しいもののために、自身の一部の宝石を配るように頼んだ。


 渡鳥は、進まなければ死んでしまうとわかっていたが、王子の頼みを聞いて宝石を配り、最後には価値のなくなった王子の銅像と共に生き絶えていった。』





 という話だ。




 優しさと自己犠牲。

 このテーマに沿うシナリオが、本来ゴーレムの件で織りなされていた。



 本来なら俺たちは街を守るためカーバンクルと共にゴーレムと戦うのだが、その途中でカーバンクルは額の宝石に込められた魔力を使い、自身の命と引き換えに街を救うことになる………筈だったが、計画を俺たちが潰したことでシナリオが変わり、自己犠牲はせずに済んだ。




 そう。

 細部は違えど、テーマは守っている。

 自身を犠牲に、弱者を救済するシナリオだったのだ。



 そして今回は、オオカミ少年。




 バッドエンドは、狼かは知らないが、何かによって誰かが死ぬ。

 その原因はプレイヤーによる嘘。

 そして、嘘つきとなるのは、どうやら俺たちだけではない。




 と、俺は踏んでいる。




 「オオカミ少年………」




 ふとそう呟いたコウヤ。

 そう言えば、こいつはこの童話を知らないはずだ。

 だったら前準備として教えておこう………と、思ったが、




 「知らねーだろ。聞くか?」


 「ん? ああ、いや大丈夫。ウィンドウの文字に触れれば詳細がでるんだ。嘘つきの話だろ?」




 どうやら取り越し苦労だったようだ。




 「言っとくことがあるのは俺の方だぞ、金髪」


 「ん?」




 トントン、といつの間にか出していた攻略本を叩くコウヤ。

 どうやらミッションについて何か知っているらしい。




 「今回のミッションだけど、デバッガーは出ない。シナリオが決まってないからね」


 「そりゃ朗報だ」


 「けど悲報もあるんだなぁ」




 まぁ、タダではないだろう。

 そうそううまい話はないという事だ。




 「聞こう」


 「シナリオが決まってない。つまり、俺は先を読めない。今回ばかりは助言はできそうにないってこと」




 まじかーとため息混じりにそう呟きながら、俺はソファーにもたれ掛かった。


 思った以上に面倒くさそうだ。

 イーボの妹が絡む件だから、なるべく確実に動きたかったが、こうなってしまったら仕方がない。



 と、廊下から足音が聞こえてくる。

 リンフィア達とゲルニアだ。

 とりあえず、話は一体終わりだ。




 「続きは後かな」


 「だな。あ、悪いな。置いてけぼりだっただろ?」




 いえいえと手を振るルージュリア。

 何やらやけに大人しい。


 まぁ、気にしなくてもいいだろう。




 「いやぁ、悪いッピね。待たせちゃって」




 ギルマス達が部屋に入って来た。

 どうやら話し合いが始まる………かと思いきや。





 「さて。早速出向こうか」


 「? 出向くって?」


 「疫病患者達がいる別の里だッピ。これからまずはそこの患者達の様子を見て、その里の別宅にいる領主様のところに挨拶に向かうッピ」



 「「「!!」」」




 いきなりの対面。

 てっきり調査後になると思っていたが、思ったより早く会うことになりそうだ。

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