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第1018話



 久々の実践。


 身体は鈍っていないが、()()()鈍っている。

 正直、恐怖はあった。


 持ち合わせは、下りに下がった戦闘能力と、これまで培ったアイビリティ外の技術。



 そして猪一頭と——————







 「あ、おいらは規則なので参加できないですブフ」


 「………まじ?」


 「マジですブフ」




 ラビがチラッと視線をやった時に、偶然目があった猪は、自分が戦力にされている事に気づいたようだ。

 否定されてしまったが。



 という事で、機動力は失った。

 結局、持ち合わせは、ドン底のステータスと経験と木の枝だけ。


 3歳にも満たないラビにとってはどう考えても絶望的である。


 しかし、これだけ絶望的でも、戦意は欠けらも失って居なかった。

 これまで培ってきた経験が、意地が、そして囚われている仲間の存在が、退くことを許さなかった。




 「こうなったらしかたないな………よし………………こいよ」




 蠢いた魔力が一点に収束する。

 視界が歪み、その一点を黒点が穿った。



 その瞬間に、来る………と。






 穴の奥から感じる混じり気のない敵意と、野生の危険の匂い。

 危ないものが、この奥にいる。


 そして、それはもうすぐそこに居て、自分の首を刈りに来ると、ラビは瞬時に理解した。




 「初戦………スライムってのはあまいか………サーペント? ゴブリン?………まさかコボルトか?」




 コボルトが来るとなると、流石に分が悪い。

 しかし、一切勝ち目がないわけでもない。


 戦略を駆使し、偶然持ち合わせた機動力を利用すれば………






 「グゥゥゥゥウウ…………」


 「………………ん?」




 突然現れた巨体に、目をパチクリさせ、首を傾げるラビ。

 いやいやそんなはずないと、ラビは再び目を擦った。


 そして目を開くと、




 「ゥゥゥゥ…………」




 やはり、ランクD−相当の危険モンスター “トロル”は目の前にいた。





 「ちょっとまてええええええ!!! ふざけんなおまえアホかァ!? 2さいちょっとのようじょになにもとめてんだ! その辺の2さいなんざまだくびもすわっとらんぞ!」


 「首くらい据わっとる。その辺の2歳児舐めるな」


 「ニールねえちょっと“くうき”よもっか!?」




 ツッコミ役を兼ねるケンや流がいないため、翻弄されるラビ。

 しかし冗談抜きでこれはかなりピンチだ。





 『試練ですので』


 「これぜったいおかしいぞ………」





 経験値未入手のラビの現在の素の実力は、冒険者のランク換算すると、最低ランクのGにも満たない。


 対して相手はD−ランク。

 ゴブリンジェネラルほどではないし、腕力のみの敵であるが、その腕力が危険なあまり、知能や機動力を差し置いてこのランクに置かれた。


 一撃でも喰らえば、などという次元ではない。

 防御しようがそんな事お構いなしに、掠っただけでも致命傷である。


 戦う時期は間違っても今ではない。





 『いいですか。趣旨を………』


 「ああもう!!」





 声をかき消しすように大声を出すラビ。

 流石にムッとしたのか、声の主も少し声を低くして文句を言い始めて居た。




 『………あのですから、主旨を………』




 しかし、文句も、忠告も、ラビに届くことはなかった。

 何故なら、声の主とラビとでは、この試練の認識がまるで異なっているから。


 何せ、





 「ほんッッッとに………()()()()()()!! ニールねえ!」



 「確かに、かろうじてって所だな。助力すれば、本当にギリギリだが………………………うん。勝てる」





 何か、戦いを避ける助言をしようとしていた声の主と違い、ラビはあれを倒す気満々であった。





 『は?』




 驚く声の主をよそ目に、ラビは持っていた枝を折り、小さくなったその破片をダガーのように構えた。




 「というわけでだ。“いくさのかみ” たのむぞ、ニールねえ」


 「私よりお前だ。いいか?」





 両手をラビの方に向け、意識を集中する。


 体の中を流れる魔力………その更に奥深くに眠るもう一つの力を呼び起す。

 瞳の黄金は、一月前よりもずっと濃く、強く輝いていた。



 神威が、その本領を発揮する。



 この1ヶ月、この力を重点的に鍛え続けた。

 慣れない力、本来自分のものではない上に、神の力なんて言われている大それた力を扱えるようになるまで、一体どれだけかかった事か。



 しかし、苦労の甲斐はあった。

 リンフィア同様、段階を踏んで強くなるその力の一つ目は、対象のの肉体を強化し、戦闘技術を更に一段階、二段階と進化させる。



 さぁ、準備は整った。

 後はもう、攻撃あるのみ。






 「ぶっ潰してやれ」


 「とーぜん!!」




 枝を2本構え、ラビは一気にトロルに向かって駆け出していった。




 『なっ………』




 どこかしらで、驚愕の声が漏れたのが聞こえる。

 そうなるのも無理はない。

 何せラビの初速は、明らかに白紙化した子供の速度ではなかったのだから。


 しかし、




 『ですがこれでは………』




 強化されたとて、それはせいぜい大人を少し越える程度。

 トロルには到底及ばない。

 だが、そう思っていない人物がここにいた。




 「黙って見てろ」


 『?………しかし………』


 「試練なんだろう? どうせ主旨は戦闘じゃなくて、格上相手に臆せず向かっていけるか………いや、ちゃんと考えて倒そうとして動けるか、ってのを見ているってところだろうけどな」


 『!?』




 ニールは頭は悪いが、こういう点においてはめざとい。

 というよりは勘がいいのだ。

 ちゃんと要点はおさえている。




 『ならば何故………』


 「言っただろ? 黙って見てろ。確信がある………もう直、面白いものが見られると思うぞ」





 そう、神威を持っているのは何もニールだけではない。

 この1ヶ月、神威を鍛えたのは、ラビも同じ。


 つまり、本領発揮はこれからだ。

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