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第1017話



 「2人とも頑張るブフよ。ちなみにおいらは手伝えないから承知してくれブフ」




 ラビを乗せて猪は階段をトコトコ歩いていた。

 護送はしてくれるらしい。

 ただ、ニールはここまで丁寧に着いてきてくれる猪のことを少し気にしている様子であった。




 「それはいいけど、お前ついてくるのか、肉」


 「あ、改名を………まぁいいブフ。ご主人命令なので、一緒に行くブフ。小さな王様は、まだ子供ブフから、これくらいの手伝いは許してくれるブフよ。多分」




 企みでもあるかと思えば、意外と適当であった。

 嘘をつく様子も理由もなさそうなので、特にニールも疑ってはいなかった。


 しかし、完全に体力は衰えていたので、この助けは正直ラビにとってはありがたいものではある。




 「よろしくたのむぞ。ブタ」


 「おいら多分訴えたら勝てると思うんだ」




 気の緩んだ2人と1匹。


 しかし、襲いかかる敵の気配はなく、これといって彼方からの接触もない。

 景色を眺める余裕すらある。


 意気込んだ割にこれなのだから、拍子抜けというのが正直な感想であった。




 「それにしても、すんげーけしきだな」




 階段の先には、中に浮く円盤があり、それはまた次の階段に、次の円盤にと、頂上の巨大な神殿までずっと続いていた。

 これまでに見たことのないような、なんとも不思議な場所だ。



 「凄いブフでしょう。ここからあの浮遊島、あの一つ一つに異なるバイオームや神殿が広がってるんですブフ」




 宙に浮く円盤は、どうやら浮遊島と呼ばれているらしい。

 確かに、水の流れているエリアや、火山のあるエリア、砂漠やなんの変哲もない草原まで全て揃っており、一つの島として成り立っている。


 そして、そのうちのいくつかに、小さい浮遊島に立つ神殿が見受けられた。


 

 そのうちの一つが、いきなり次の………いや、これから足を踏み入れる場所だ。





 「さぁ、着きましたブフ」


 「ここが………」




 最初の島は、上に見える島と比べて、ずっとこぢんまりとした島であった。


 しかし、それでも見えている神殿は立派なものだ。


 そして、あからさまに気になる物が中央に置かれていた。





 『やってきましたね』





 「「!」」





 どこからともなく聞こえる謎の声。

 案の定姿は見えない。




 『ここは、始まりの試練。力ではなく、戦う意思を試す場です』


 「しれん?」


 『ええ。こちらも、誰彼構わずというわけにはいきません。貴女の目的のためにも、我々の悲願のためにも、この試練は必要なものです』


 「ふーん」




 聞いているような聞いていないような生返事を返す。


 しかし、ぼーっとしているわけではない。

 張り付くような視線で、注意深く周りを見つめていた。


 気乗りしないというわけではないが、この乗せられている間に何処か不信感を覚えていた。




 だが、それは正しい。

 ここはダンジョン。



 たかだか一歩さえも命取りになるような場所。

 行動の一つ一つが命に直結すると考え、注意深く行動する事が生存へつながる唯一のコツである。



 だが、ラビも素人ではない。

 ある程度、罠の内容だったりルールはわかっている。





 『最初の試練は』



 「いけ、ブタ!」





 ラビは気の棒を前にかざし、猪に乗って神殿へ向かった。





 「おい、ラビ。あまり急ぐなよ」


 「だいじょうぶ! しんでんのものにはさわらな——————」





 しかし、自信というものは、時に人の足を掬う。






 「——————い?」






 神殿に入った瞬間、再び景色が一変した。

 突然の変化に思わず立ち止まる猪。



 そこは、広い闘技場のような場所であった。

 中央にはやはり、何かが置いている。


 そして、






 「………?」



 「………?」





 ラビの()()()には、()()()()()()()檻が置かれていた。





 「………ん?」




 鉄格子を両手で握り、首を傾げるニール。

 状況が掴めてなかった




 「どうしたんだラビ。なぜ檻の中にいる」


 「いや、ニールねえがはいってるんだぞ」


 「はっはっは。何を馬鹿な………」




 やれやれと肩をすくませてキョロキョロとあたりを見回す。

 前後左右に柵がある。

 地面も鉄板で、丁寧に天井付き。




 「出せえええええええ!!! 何故私だ!!!??」




 鉄格子をごんごん叩くニールだが、凄まじい硬度の檻はどれだけ曲げようとしてもびくともしなかった。




 『話を聞かないからですよ。竜の騎士殿?』


 「きっさま………抜け抜けとぉお…………」




 この主は何かを言いかけたのだが、運悪くラビが神殿へ突っ走ったため、その説明を聞きそびれてしまったのだ。




 「どんまい」


 「斬られたいかっ!? お前のせいだアホ!!」




 と、一見楽観視しているラビだが、これがまずいと言う事くらいはわかっている。

 1人が檻で、1人が外。


 わざわざ丁寧に分断したとなると、この先の展開は予想するまでもない。




 「いや、まさかあのいちにわながせっちできるとおもってなかったな。それも、『たいしょうをきょうせいいどうさせるわな』なんて、SSランクのぼうけんしゃでもみたことないとおもうぞ」


 「ああ………」





 外観から既に察していたが、このダンジョンはまさに規格外だ。


 主に意思があると言うのであれば尚更。

 やはり、ここはただのダンジョンではない。


 見えない危険が、目に見えている。

 しかし、




 「けど、やったものはもうもどせない。もともとかくごはできてる。ワタシはたたかうぞ」




 とうに覚悟を決めたラビにとって、それは些末な問題であった。




 『ふむ………いいでしょう。では早速、始めるとしましょうか』


 「!!」




 魔力の蠢きを肌で感じる。

 思わず2人は身構え、あたりを注意深く見回し始めた。


 これからもう間も無く、何かが始まる。

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