第1014話
近況について。
数日前、ガージュ一行が仕掛けたゴーレムを破壊したケン達は、攻略本で敵の特殊ミッション………レッドカーペットを調べることで、その数日後に里へ攻め入ってくることを知った。
当然、迎え撃つ事を決めたケン達は、協力者を募るべく、以前助けたウンディーネのセルビアの元に向かったのだが、何者かの手を回されており、協力は得られなかった。
その後の調査の結果、敵は領主と共謀してケン達を妨害して里を襲おうとしていることがわかった。
敵は里1番の権力者。
衛兵すらも操作しており、作戦は難航するかと思われた。
しかし、ケンはいつもと変わりなく対策を立て、数日後一行はガージュらを迎え撃つことに成功。
そこでケンはガージュと戦うことになるのだが、ここで衝撃の事実が判明する。
それは、ガージュがケンを恨んでいる理由についてであった。
もともと、ガージュはプレイヤーであり、人間界にいた。
その頃のガージュは妹のレイジュと二人暮らしであったが、妹は様々な経緯よりルナラージャの貴族の奴隷になってしまった。
妹を救うべくガージュは戦いを学んでいたが、その最中で人間界では戦争が起こり、その際妹は解放されたが、戦果に巻き込まれ帰らぬ人となった。
そして、戦争は終わり、仕掛けたルナラージャ王国も貴族も消え、残った選択肢としてガージュは当時指揮を取っていたケンを恨むようになったのだ。
せめてのケジメとしてケンは神の知恵を封じ、生身でガージュと戦うことに。
激闘の末、ケンは辛くもガージュに勝利を収めた。
他にも散っていたリンフィアやルージュリアの戦況も優勢であり、この戦いは完全に勝利で終わると思われた。
しかし、ケンとガージュの目の前になんとこの国最強の妖精の一角であるピクシーの族長ピクシルが登場する。
戦況は絶望的。
たとえ全員で向かっても勝てるとは到底思えない敵だったが、ここでなんと、あの最強の冒険者であるノーム………元ノームの族長である彼が現れ、なんとか全滅は免れた。
しかし、ピクシルの手により生捕りしたガージュは後世に裁かれることなく死亡した。
ガージュの償いの機会を奪ったピクシルに激怒したケンはピクシルに向かっていくが、ほとんど何もできず、このまま敗北するというところで、なんとルージュリアが現れ、ピクシルと会話を交わし、戦況を収めた。
その後、ゴーレムの出現を阻止したという知らせを受け、全員の無事を確認し、首謀者も死亡したということで、一旦このゴーレム騒動は決着ということとなった。
が、この国の頂点との格差を思い知った一同、特にガージュの事について色々な面でまだ整理が出来ていないケンにとっては、あまり気持ちの良い勝利というわけにはいかなかった。
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ここで場面は移り変わる。
今この場にはいないが、ケンたちにはもう2人着いてきた仲間が居る。
そう、ニールとラビだ。
あの白い空間からこの国に放り出される直前、謎の声が聞こえて来て2人はおそらくその声の主に攫われてしまったのだ。
しかし、敵意はなく、どこか聞き覚えのある声だったので、ケンたちは2人の捜索はは後回しにすることにして、ゲームを始めたのだった。
そしてケンたちが色々とやっている間、当然ながらラビ達にもいろいろなことがあった。
ということで、場面は少々遡り、2人が攫われた直前へと戻るのであった。
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「………………ぬわはっ!!?」
奇声を上げつつ顔を上げたラビ。
「………??」
あたりを見渡すと、後ろにある巨大な木以外、原っぱと湖と森が広がる、これといって何もない野原にいる事に気がついた。
今まで意識を失っていた割に不思議と直前までの記憶はハッキリしており、頭の方も冴えている。
しかし、
「………………どこだ、ここ。みんなは!? ししょうたちはいないから………ニールねえ!? どこ!? どこいった!?」
突然わけの分からない場所に飛ばされ、当然少しばかり混乱していた。
故に、
「………………おい」
「んお!? ごめん!??」
下敷きにしていたニールのことに気が付いていなかった。
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「全く………しばらく下敷きにしてたな、お前」
「へへへ、わるいね」
反省の色はゼロ。
まぁわかっていたことだとニールは諦めることにした。
「それで、ここは妖精界………で合ってるのか?」
「さぁ………? けど、むこう外界とはまりょくのかんじがちがうから、べつのところにきたのはたしかだぞ」
「そうか………けどまぁ、幸い森もあるし、見た感じ湖には魚もいる。木で隠れていたが裏には山もあるからサバイバルをするには事欠かなさそうだ」
おー、と感心するラビ。
現状、場所も分からず、力や武器も失った。
まだ生まれて5年も経っていないラビとしては、サバイバル力のあるニールの存在は凄まじく頼もしかった。
「サバイバルにはなにかコツとかあるのか?」
「フッフッフ………………知らんな」
「ようじょなりにがんばるか………」
それを聞いたラビは、ハァとあからさまなため息をついた。
流石にいきなりガッカリされるのは心外だったようで、ニールは慌てて弁明を始めた。
「ま、待て! まだ遅くはない! いいか、ラビ。動物と出会って食べる! これがあればいいのだ!」
「すごいなニールねえは。なんてすごい(空っぽな)のうみそなんだ」
「だろう?」
「そういうところだぞ」
「どういうところだ?」
この人はもうダメかもしれない。
そう思い、ラビは遠くを見つめるのであった。




