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第1013話



 女の神威によって逃走に成功した2人は、里の外へ脱出し、アジトへと逃げ帰った。

 しかし、ついさっきまでいた仲間の気配は当然になく、その物悲しさは、ガージュをあれほど慕っていた男に追い討ちをかけていた。




 「死んだ………………ガージュが………死んだ」




 肉体的ダメージはほぼ無い代わりに、精神的には深い傷を負った。

 そうしてぶつぶつとつぶやく男を、パートナーの女はじっと見ていた。


 すると、男は突然つぶやくのを辞め、ハッと顔を上げた。




 「………イド」


 「なぁに、ジル」


 「俺たちだけで復讐できると思うか?」




 その質問に対して、イドと呼ばれた女は、無常にもはっきりとNOを示した。


 だが、




 「だけじゃ無いなら、どうにかなるかもね」



 当てはあった。

 ケンたちに対抗するための戦力が、一つ。



 「いいの? 多分こっちも無事では済まないよ」


 「いい。ガージュは、俺たちを拾ってくれて、しかも駒である筈が結局は守ってくれたんだ。でも、もういない。俺たちはまた掃き溜めのなんでもない石ころに逆戻り………だったらせめて、あいつらを道連れにして死にたい」





 その目に、迷いはなかった。

 すでにその目は死人のそれ。

 生きる意味はなく、ある目標も、結局は望ましい死に方。


 それ故に、一度きりの最期を目指すが故に、意思は強固であった。




 そんなジルに向かって、そう………とイドは呟き、特に否定も止めることもなく、話を進めた。




 「“騎士”の連中に合流する。騎士さえ利用できれば、勝ち目は十分ある」


 「ああ。精々利用してやる。それに、乗っかれば万一俺たちが死んでもあいつらが勝手に道連れにしてくれる。ちょうどいいじゃないか………………ふふ、ふふふっ………」





 そしてジルは、ケタケタと笑い続けた。

 どこかわざとらしいそれは、まるで己を保つためのようであった。




 「………本当にそれでいいのかな、ガージュ」




 だから、この声がジルに届くことは、きっとない。








——————————————————————————————













 「そういえば、ミッションわりと大きく逸れたのにデバッガーが出てこなかったな」



 と、俺は骨つき肉にかぶりつきながらそう言った。



 「ああ、それは多分、向こうのミッションが消滅して、原因がこっちじゃなくて向こうにあるって判定になんだと思う。んで、その元凶の死んでしまったから、奴が出なかったって感じ………じゃない?」


 「ハッキリはしねーわけね」




 とはいえ、俺も大方そんなものだと思っていた。


 回答をもらってスッキリしつつ、また肉を齧る。


 まぁ、出なかったのでラッキーくらいに思っておけばいいだろう。

 正直、ノームを呼んだのはもし出た時に加勢して、デバッガーが消えるまでの時間稼ぎを手伝って貰おうと思ったからだ。



 結局、デバッガーが出る事はなかったのだが。

 ただ、族長なんて化け物が出てきたのだから結果オーライだ。

 あいつがいてくれて本当に助かった。




 「………そういやあいつも族長だったな。だったら本名は——————………口に出せないって事はガチだな」


 「族長かぁ………やっぱりすごく強かったですよね」





 呑気そうにリンフィアそう言うが、正直あんな差を見て少しばかり焦りがないわけではなかった。


 だが、裏を返せばテッペンとの差は測れたわけだ。

 あれが、最低限目指すべき俺たちのゴール。



 道は果てしなく遠い。

 用意された道レッドカーペットを渡っても、それは同じ事だろう。



 しかし、めげている暇はない。


 今はまだ、せいぜい4級魔法20発ぽっちしか撃てないような貧弱だが、少なくとも2級魔法で撃ち合いが出来る外界ではSランク相当の実力は欲しい。



 そうすれば、玉座の影くらいにはきっと手が届く。






 「力が欲しいか若者よ………」


 「………………何やってんだオメー」





 酔っ払………てはいないらしい。

 座っている俺の顔を上から覗き込むようにルージュリアはそう言った。





 「うふふ、いえいえ、お悩みの様子でしたので軽いジョークでもと思いまして」


 「にしちゃァドンピシャな事言ってたな」





 力が欲しいか?


 決まっている。

 当然だ。


 俺は、弱いままでいるわけにはいかない。

 俺が弱いと、俺は俺を通せない。


 日本にいた頃も、俺が俺であり続ける為に、俺の気に食わないことを気に食わないままにしない為に、親父の拷問の後も体を痛めつけ続け、知識を蓄えた。




 だから、俺はそれを続けるだけだ。





 「何かあるんだろ。だったら頼む。手ェ貸してくれ。ただでとは言わねー。俺に出来る事ならなんだってやる」


 「なんでも………?」




 この際だ。

 思い切ってそう言ってしまおう。


 きっと損はない。

 俺の直感が言っている。

 ルージュリアは、絶対に手放すべきではない。



 何故ならこいつは——————





 「なんでも………だと!?」


 「うるせーぞチンピラ」




 コウヤは放っておくとして、一体何を要求してくるやら。




 「ふむ………………そうですね………………」




 すると、ルージュリアはポン、と手を叩いてこう言った。




 「それはまた今度にしましょう。いわゆる貸しにする………というものです」


 「………それが一番怖いんだよなー………………けど、まぁいいさ。聞いてくれるって事でいいよな」


 「すぐにとはいきませんが、近いうちに貴方達はきっと()()に力を借りねばならなくなります——————」





 どうやら、聞いてくれるらしい。


 よかった。

 何をするのかはわからないが、期待はできそうだ。


 そうやって、期待に胸を躍らせていると、ルージュリアは一言、こう付け足した。



 決して聞き逃せない、この一言を。






 「——————管理者が消し去った、あのレッドカーペットを求めて、ね」




 「「「!!!?」」」





 俺たちは、一斉にその一言にハッとした。


 ルージュリア………もしかすると、こいつは俺たちが思っているよりも、ずっとこの国の核心に近い存在なのかもしれない。

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