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第1011話



 ギリーの嗚咽と怒号が聞こえる。

 でも、それはすぐに耳をすり抜けた。

 少し、頭が回らない。


 俺は、“ガージュ”を作った原因である者として、罪を償うと言う形であいつを死なせるべきであった。

 なのに、俺は結局何もできなかった。




 「約束通り、ギリーは生かしておくッピよ。ここで俺が手を出せば、俺はとんだ恥晒しだしね」




 去ろうとしていくピクシルが、ぼやーっと見える。

 しかし、妙に頭がぼーっとするせいで、どこか焦点が合わない様であった。


 そうやっている間にも、話は進んでいった。




 「ピクシル………テメェわざわざこんな事する為だけにこんな辺境まできたのかよ」


 「言っただろう? 暇つぶしだと。ここにいるのはそのために手下の仕事を肩代わりしてのことだッピ。まぁ、お陰で面白いものが見れたからよしとするかな」


 「——————」




 もしかすると、それはガージュのことに対して言ったわけでもないのかもしれない。

 少なくとも、虫の居所の悪い俺にとっては、それは余計な一言に他ならなかった。









 「………何が、面白い?」





 「「「    」」」






 騒然としていた場が、突如しんと静まり返る。

 すぐそこまで来ていたいたギルドの連中も、足をとめ、言葉を発さなくなった。


 しかし、そんな事は関係なく、俺は()()()()()()()()()()()腕の拘束をから離れ、ゆっくりと前に進んだ。




 「別に殺したことに文句はない。あいつはもう死んで仕方ねぇ奴ではあったんだからな。けど、“裁く余地のある” 悪人を、テメェ勝手に殺されちゃァ、秩序も何もあったもンじゃねぇよな………………なァ、オイ………」


 「………詭弁だッピね」




 ため息混じりにそう呟くピクシル。





 「君らの………因縁? まぁすごい一方的な因縁はだが、話は聞いているッピよ。これに関しての俺の見解だけど、アレは逆ギレもいいところだろう? 分かりやすい仇はいないし、奴隷にしていた貴族も多分もう死んでる。やり場のない怒りを君にぶつけていたに過ぎないッピ」


 「違う。アレは正当な怒りだ。あいつはただ、その晴らし方を間違えただけだ。だから、せめて俺が助けなくちゃいけなかったのに………」




 少なくとも、あいつの怒りは間違いではなかった。

 おれはまちがいなく、妹を失った一因にはなっているのだから。




 「………………?………………ああ、お前そういう………ははは、そういう事か。なるほど………シューメイもとんでもない怪物を生み出したッピな」




 あたりが未だに静まり返っている中、ピクシルの笑い声だけがあたりに響き渡った。


 そして、ひとしきり笑うと体に魔力を纏い、戦闘態勢へと移行した。




 「戦るのなら、相手をするのもやぶさかではないッピよ。ルーキー共のトップにいるであろうお前の力を測るのは、今後のためにもなりそうだしね」




 空中で構えをとり、両手に魔法を携える。




 「………」




 魔法………もはや相殺など考えるべきではない。

 レベルの差は明らかであり、ぶつけたところで俺共々消されるのみ。


 だから、俺は素直に殴ることにした。





 とっておきは、ある。




 使ったことがないので、リスクや代償もわからないし、効果の程も不明。

 しかし、間違いなく今の俺が出せる最高戦力。


 殺す気がないのであれば構わない。

 俺も殺せるとは思っていない。



 けど、一撃喰らわせなければ、俺の腹の虫は収まらない。




 先に来いとあからさまに先手を譲るピクシル。

 ならばその油断に大いに乗っかるとしよう。




 魔力ではなく、神威に全神経を注ぐ。

 そして全身を、俺も体の全てを、隈なく把握する。


 頭に浮かぶ俺の情報。

 そして浮かび終えた俺の頭にあるものは、“今の俺”。


 そして、そこに被せる様に、“強化後” をイメージする。





 “3倍” は、もうわかった。

 であれば、さらに上があるはず。



 




 「——————」



 「!!」






 俺がやろうとしたことに気がついたのか、ピクシルは目に見えて警戒度を変え始めた。



 だがもう関係ない。

 あの羽虫は、何がなんでもぶっ飛ばす。





 そして、神威を解放し——————ようとしたその瞬間、









 ——————ゾクリ、と。








 「   」





 全身が凍る様な気配を感じた。

 すると、




 「お待ちください」


 「「「!?」」」




 と、発動の瞬間突然目の前に現れた人影によって、技が食い止められた。

 俺を静止させるため、肩にトンと手を置かれた瞬間、急激に集中が弱まり、神威が霧散した。




 「全く………何故そう無茶をしようとするのですか?」



 「………………お前………………ルージュリア………だよ、な?」





 目の前にいた人物の、口調も、外見も、まさしくそれはルージュリアであった。

 しかし、今感じた異様な気配、この場に飛び出した速度、肩を押さえている凄まじく強い力は、俺の知っているルージュリアのものではなかった。


 すると、




 「………………これは驚いたッピ。話には聞いていたけど、本当にお前まで来ているなんて」


 「ピクシル。ここは私に免じて何も言わずに去っていただけませんか?」




 やって来るや否や、ルージュリアはピクシルに停戦を求めた。




 「おい、何を勝手に………」




 悪いが怒りは鎮まらないし、鎮める気もない——————が、しかし。

 それをわかってのことか、ルージュリアは俺が戦いを辞めざるを得ない状況にしていた。




 「伝令に出ていたミレアさんが戦闘中です。冒険者も加わって優勢ですが、彼女が殺されれば()()()でしょう」


 「!」




 この女、明らかに意図があってミレアを残してきている。


 こいつ、“ゲーム” について全て話したわけではないのに、わかっているのだ。

 ミレアが死ねば、全て終わりだと。



 ………こうなると、俺も選ばざるを得なくなる。





 「………わかった」




 俺は拳を下ろし、神威を解いた。

 それを見たピクシルも、戦闘態勢を解いて、楽にし始めたのだった。




 「さぁ、行ってください」


 「はいはい。でも………」


 「………」




 キッ、とルージュリアが睨むと、ピクシルは肩をすくめて、無駄口一つ叩くことなく去っていったのであった。


 突然のルージュリアの登場、正体、そしてそのルージュリアとピクシルの奇妙な関係。

 色々な謎もやり場のない怒りも残して、スッキリとしない結末と共に、ゴーレム騒動はひとまず収束したのであった。

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