表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1003/1486

第998話



 「よしっと………………さ、早く避難を」




 コウヤは、抱きかかえたフードの女をおろし、敵を警戒しつつそう言った。




 「もうお役御免ですか?」


 「戦いには参加させられないからね。んじゃ、気をつけて、ララーナさん」




 そう、現場でガージュ達を迎えたフードの女は、ララーナであった。




 「そちらこそ、気をつけて下さい。どうも、今のでも生きてるみたいですから」


 「大丈夫だから、ほら急いで」




 コウヤがそう急かすと、心配そうに窓の方を見ながらララーナは去って行った。

 どうやら、ケンの身を案じていたらしい。




 「あの野郎、意外とモテるのか? ま、俺はセルビアさんがいればなんでもいいけどね」




 軽口を叩きつつ、上を見上げる。

 窓から出た瞬間を狙ってリンフィアが吹き飛ばしたあの敵だが、まだ弱っている気配はなかった。


 ここで戦闘終了、というわけにもいかないだろう。




 「攻撃、一応通りましたね」




 すると、コウヤのいる場所まで、リンフィアがやってきた。




 「どう言う仕組みです?」


 「レッドカーペットでプレイヤーの衝突が決定してる時は攻撃が可能になるんだよ。けど、通知が入ったら例えばこっそり動く側が不利になったりするだろ? だから基本ウィンドウにからの通知はなしで、いつの間にか攻撃可能になってるって形になってるわけよ。ま、お前らが異常なペースでレッドカーペットとの戦いをしてるせいでこうなってるだけで、しばらくすれば街中での戦闘は解禁されるよ」


 「………なるほど」




 そもそも、街中での戦闘禁止は、召喚してしばらくのみのシステム。

 数十日もすれば、運要素以上に実力が伴い始めるので、戦闘の制限はなくなるのだ。



 しかし、話を聞くリンフィアだが、どこかいまいちそうな顔をしている。

 というのも、この話にではなく、先程の手応えが無かったことにムッとしているのだ。



 そして、その手応えのなさの通り、敵はまだピンピンしていた。


 



 「お、見てみ」




 コウヤが指を刺した方を見ると、丁度降りてくるギリーの姿が見えた。

 衣服はボロボロだが、肉体の損傷は想定より小さい。


 何より、今ので相当頭にきているのがはっきりわかるほど、怒りは表に現れていた。




 しかし、キレているのはコウヤも同じ。



 今からでも掴みかかっていきそうなほど、怒気に満ちた目。

 わずかに荒ぶる呼吸。

 ルビィの友人であるラルドを痛めつけ、人質に取り、他のカーバンクルを殺した恨みは、相当なものであった。





 「よぉ、クソ野郎。俺のダチのダチを痛ぶった礼の味はどうよ?」


 「ハァッ………ハァ………………あァ?」




 まさに、一触即発のこの状況。

 状況的には2対1だが、どうやらコウヤは2人で戦うつもりはないらしい。




 「銀髪ちゃん。銀髪ちゃんは先にゴーレムの処理だよ。あれが一番の目標だからね」


 「………気をつけて。ケンくんの予想では、あの人は私やコウヤくん同様、神威を使ってくるみたいですから」




 リンフィアはそれを言い残して、ゴーレムの核を持って逃げた2人組のところへ向かうのだった。




 「決めた。あの時のエルフとウンディーネとクジラを殺そうと思ってたが、先にお前から殺す。ぶっ殺してやる!」


 「こっちに来たばっかの初心者が、勝てると思ってんの? 悪ィけど加減はしない。お前に同情の余地はなしだ」

















——————————————————————————————















 「こっちだ。こうなった時のための逃走ルートがある」


 「ええ、わかってるわ」




 ゴーレムの核を持って逃げる2人。

 今は重要な任務を負っている。



 それは、一刻も早くゴーレムを起動させること。


 それも、可能であればフルパワーで、だ。

 男が手に持ったこの核に一定以上の魔力を注ぐことで、ゴーレムと使用者がリンクし、よりパワーを引き出すことが出来る。


 しかし、




 「けど、気づいてる?」


 「ああ。誰かが来ているな」




 当然、人数を把握していたケン達は追っ手を用意しており、今まさにこの2人に仕向けていた。


 そしてそれは、すでに2人を射程内に捉えていた。




 「………仕方ない。止まろう」




 目立つ場所に出る前に、いっそ迎え撃つことに決めたようだ。

 背中を合わせ、気を張り巡らし、敵の出方を伺う。



 緊張を思わせる面持ちの2人。

 息を飲み、加速する鼓動を全身で感じとっていた。


 当然だ。

 これは最重要任務。

 この2人がトチれば、ミッションどころか、レッドカーペットそのものがダメになる。

 それほどに、男の手にあるものは重かった。


 すると、





 「覚悟が決まったようですね」


 「!!」




 声と共に突然降ってきた、1人と2つのシルエット。

 それは、2人を追跡していたケンからの追っ手。




 「それを、渡してもらいましょうか」


 「んだ!」


 「なのです!」




 ルージュリア、エル、ルビィの3人であった。




 「………やはり邪魔をするか」


 「当然でしょう? こんな街中であの巨大ゴーレムを呼ばれでもすれば、どれだけの被害が出ることか………」




 暴れずとも、倒れ込むだけで相当な被害が生まれるだろう。



 ここは始まりの里。

 フェルナンキアのように屈強な戦士が集っているわけではない。


 なんとしてもここで食い止めねば。




 「絶対に食い止めるという顔だな………………あの男が………ヒジリケンが何をしたのかも知らずに」


 「そういえば、あなた方の頭の方は彼に恨みがあるそうですね」



 まぁ、そんなことは関係ないのですがと、ルージュリアは一蹴した。


 ケンのことは関係ない。

 重要なのは、街が危険だということ。


 その一点だ。




 「いい機会だ。聞かせてやろう。奴が一体なんの罪を犯したかをな」


 「ええ。聞いて差し上げます。塀の中でゆっくりと、ね」




 深く腰を落とし、拳を構えるルージュリア。

 意識を深く集中させ、拳に、足に、魔力を集中させ、攻撃と機動に特化させる。


 恐ろしいまでの希薄と集中力に、エルやルビィも息を飲む。

 目の前の2人も、相応に緊張を感じていた。



 しかし、それでも男は、どこかに余裕を隠していた。





 「いいや、お前はここで俺の話を聞く。聞かなければならない」


 「!!」




 男から漏れ出る奇妙な力。

 僅かにしか感じ取れないそれを、直感で危険だと判断したルージュリアは、咄嗟に身を引いた。




 「っ………………」


 「ほぅ? これを感じ取るか………………だが安心しろ。危害は加えない。ついでに、お前ももう、俺たち事危害を加えることは出来ない」




 男女2人を中心に、妙なドーム状の膜が広がる。

 魔力ではない何か。


 はっきりと感じ取れない何かを、ルージュリアだけが感じ取っていた。


 しかし、その力を感じ取れないものの、存在については知っているエルは、その正体に気づいていた。

 そう、その力というのは、




 「神威——————ですか………」


 「!………なるほど。流石は同じ力を持つ男の元にいるだけはある」




 神威を知っている者だけで通じている会話。 

 神威を知らない他の者からすれば、会話の意味もわからないだろう。


 ともかく、ここで言えることは状況は男達の方に傾きつつある、ということだ。




 「何をごちゃごちゃと………………ッッ!!」


 「あっ………!!」




 会話の一切を振り切り、突然飛び出すルージュリア。

 上げた拳を下ろす気は一切なく、闘志を剥き出しにドームに包まれている2人の元へ飛び出す。


 十分な助走と勢いがつき、魔力による補強の済んだ拳。

 お膳立ては済んだ。


 後は、攻撃あるのみ。




 そしてルージュリアは、全身全霊の一撃を、そのドームに向けて放つ——————










 ——————が、








 「………………………!?」






 ドームは、ビクともしなかった。


 舌打ちをしつつ、引き下がるルージュリア。 

 そして再び飛び出し、一撃、もう一撃と打撃を加えるが、以前ダメージはない。




 「硬い——————!!」




 そして、男は不敵な笑みを浮かべ、ルージュリアにこう言った。




 「やるだけ無駄だ。だから言っているだろう? 話をしよう、とな」




 どうやら、この場は提案を飲まざるを得ないらしい。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ