6 - merciless
もう次回投稿日言わない方がいいんじゃないかってぐらい延期してます。
ごめんなさいしか言葉が出ません。
白衣の男が乱暴にドアを開ける。
「追い詰めっ……え?」
「なんだお前急に、普段の奴とちげぇし」
散らかりきって様々なものが山積みになった小部屋の中心、椅子に座る白衣の男児がいた。
「さっき確かにここの扉が開いたのに……」
「ああ、さっき開けたよ。空気が悪かったから換気しただけだ」
「そ、そうなのか……?」
追いかけたのは5人の男女だった筈だ。
そう言われてみればこんな小部屋に5人も、それもこの子以外に居るわけがない、ような気がする。
「ところであんたは逃げなくていいのか?」
「は?」
突然の男児からの予期しなかった問いかけに、思わず変な声を漏らしてしまう。
「逃げるって?」
「さっきの放送聞いてなかったのか?多分実験室で事故ったかなんだかで避難命令出てたぞ」
確かに、子供達を追いかけ始めてすぐに館内放送が流れていた。『緊急事態発生』の言葉に近いものも聞こえた気がする。
「そっそうか、ありがとう」
逃げなければならないという思いよりも、何となく感じた居心地の悪さのためにその場からそそくさと離れようとした。
……だが、この子は?
逃げようと一度は振り返った身体を、首だけ再び振り返す。
「……き、君はいいのかい」
「俺?……んー、まあ適当に頃合い見て出る、かもな」
「かもって……」
男児は男のことなど目もくれず、パソコンの画面から目を離さずキーボードを叩き続けている。
「どうせ大したミスじゃねえよ。勝手に実験室の奴等が綺麗に後始末までして、何事も無かったようにするさ」
「そっ、そうか……」
「そんなに心配ならお前が見に行けば良いんじゃねえの?立派に白衣着てんだからそんぐらい出来んだろ」
まるで挑発するような物言いが、やけに癪に障った。
だが別に取り乱すようなことではない。
「行くわけないだろう、僕にも僕の仕事があるんだ。僕がやらなきゃいけない仕事がね」
「はいはいわかったわかった、じゃあさっさと出てけ」
男児はまるで会話を交わすのも面倒だと言うかのように、手で追い払うジェスチャーをした。
確かに急に押し入ったのは自分だが、流石に鼻につく部分はある。
それでも取り乱すようなことはせず、ただ黙って部屋を出て、扉を閉めた。
「……気になるな」
階段を駆け上がっていく音が聞こえていたが、それよりももう1つのことが気になって仕方がなくなってしまった。
自分の足は自然と実験室の方へと向かっていったのだった。
「……いつまで入ってんだ、そろそろ出ろよ」
男の子が机から椅子を離す。机の下の空きスペースから、身を隠していた啓と海が出てきた。
「お兄ちゃん達も出してあげてよ」
「まあ焦んなって」
男の子が足元のハッチのロックを解除し、勢いよく開ける。
「っはぁーっ!」
「い、息苦しい……」
「……」
狭い収納スペースに押し込められていた魁人、拓、駿が、外に顔を出すなり一斉に大きく息を吸った。
「見つかんなかったんだから俺に感謝しろよ」
男の子はニヤニヤと悪戯っぽい笑みを浮かべつつ魁人達を見ている。
「いや、まあ、うん、感謝はしてるけど……」
「……そんで、悪いがさっさと此処出るぞ」
「えっ」
男の子がパソコンを少し操作し、画面上に大量のウィンドウを表示させた。
「これ、此処の監視カメラな。これ見ろ」
男の子が1つのウィンドウを指差す。部屋の中が煙で充満しているようだった。
「これがさっきから言ってる実験室のカメラだ。今出てるこの煙は触れたりしても今は特に害はない」
「え?じゃあ別に逃げなくたって良いじゃん」
拓が思わず口を挟んでしまう。
「『今は』っつってんだろ。問題が起きるのはこの騒ぎが落ち着いてからだ」
そこまで言うと男の子はパソコンの電源を落としてしまった。
「詳しい話知りたきゃ外に出てから教えてやるよ。とりあえず出るぞ」
そう言うと男の子はすたすたと歩いて外へ出ていってしまった。
「……魁人……」
啓が不安そうに呼び掛けてくる。
わかっている。他の皆もそう思っているだろう。
だが。
「……今は、信じてみよう。なんかあったらその時はその時だ」
男の子の後を追うように、部屋を出て行った。
男の子は工場内のことを知り尽くしているかのように迷いなく歩いて行き、やがて魁人達の入った入り口よりさらに目立たない裏口から外へ出た。
「すげえ……誰にも会わなかった……」
「まあこんなこと起きてたらな。そもそも居ないようなルート取ったけどな」
男の子は両手を白衣のポケットの中に突っ込んだまま軽く息を吐く。
「で、どうなるんだよ。あれ」
拓が耐えきれず男の子に問いかける。こういった焦らしに拓は弱いのだ。
「そんなに知りてえか?」
「当たり前だろ、聞かせてくれよ」
男の子は特に態度も変えず、淡々と話し始める。
「あの煙は別にフェイクって訳じゃない。あのままだとあれ自体に毒性が無いってだけだ。本命はそっちじゃなくて、空気より重い不可視性のガス。あんまり吸いすぎると流石に毒だが、多少吸っても問題はない」
自分から聞いておきながら、拓は理解が追い付いていないようだった。
それでも男の子は話を続ける。
「その内奴等は薬品の製造を再開する。その時に起きる反応にガスの方が少しでも混じると反応そのものが一気に変わり、薬品の製造は一時的に不可能になる。それと同時に可燃性の別のガスが大量発生し、忽ちの内に施設中に流れていく。後はそいつがボイラー室に流れ込めば全て御仕舞い、だ」
「おしまい?」
魁人が何かに気づいたように、息を飲む。
「お前、まさか」
驚愕を隠しきれず、一瞬声を荒げかけた。
男の子は平然と次の言葉を続けた。
「まだわかんねえのか?爆発すんだよ。ボカーンってな」
次回は2018/11/26(月) 19:00に投稿する予定です。
大分間が開きますがそれでも投稿できるかちょっと怪しいので投稿日は期待しないでください。




