6 - accident
ごめんなさいもう更新期間ちょっと長めに取らないとしんどいです。
リアルが忙しいです(ただしゲームはする)。
「魁人っ!!!」
啓が必死の形相で此方に合図する。
啓が合図をしたということは、起こりうる最悪の事態が近づいたということだ。
「拓、構えろ!!!」
「お、おう!」
拓が拳大の石を握り締め、上投げの姿勢で構える。
直ぐに守衛所の扉が開けられ、男が飛び出してきた。
男が構えている物――そのシルエットは、突撃銃のように見えた。
まずい。
「拓っ!!!」
「うおらああぁぁぁ!!!」
拓が雄叫びと共に全力で石を投げる。
その軌道はぶれること無く男の肩へ向かって行き、銃を構える左肩に直撃した。
「うっ……!」
元々些か覚束なく構えられていた銃先が大きく揺らぐ。
逃さない。
間髪入れず男の元へ走り、飛びかかる。
相手は大人だが、負傷直後ということもあり不意を突かれれば思い通りに体は動かない。
石の直撃した男の左肩に自らの拳で追い打ちをかける。
男が悶えるが、すかさず反対側に回り込み右腕にも攻撃を仕掛ける。
男は怯んで銃を取り落とす。
間を開けてはならない。続けろ。
男の体格は大人の中ではそれほど大きい方でもないが、子供が一人で倒すのは流石に難しい。
そう判断し、膝カックンの要領で強く膝裏を膝で蹴る。
突然の衝撃に男が体勢を崩す。
まだだ。最後まで。
男が取り落とした銃を素早く拾い上げる。
安全装置が外れている。こいつは撃つ気だった。
その事実を認識した途端、焦燥と共に怒りが沸いた。
体勢を崩し地に手と膝をついた男を横目に睨む。
「な、何なんだ君たちは……!」
何も言わず、男の額に銃先を突き付ける。
男は完全に怯えきって脱力し、へなへなと座り込んでしまう。
そのまま銃先で無抵抗な男の額を押し、地面に頭を付かせる。
「引き金を引かれたくなかったら俺等の事は忘れろ。誰にも言うな。いいな」
男は恐怖に震えながら何度も首を縦に振る。その開ききった目には涙が滲んでいた。
それでも銃先を突き付けたまま、男の事を睨み続けた。
「か、魁人……?」
心配そうに近寄ってきた啓の声により現実に引き戻され、ハッとして周りを見渡す。
啓の後ろで拓も海も不安そうにこちらを見ている。
駿は一旦戻ってきた様だが、特に不安そうな様子は見せていなかった。
状況を飲み込むより前に、自分の責任を果たしたことだけで精一杯なのだろう。
緊張の糸を緩めるため、わざとらしく大きく息を吐きながら銃を下ろす。
「……撃たねえよ、流石に」
男から離れた場所に銃を投げ捨てる。
「よ、良かった、もしかしたらって一瞬……」
「俺も、あんな怖い魁人初めて見た」
海はただ黙っている。駿も特に口を挟むことは無かった。
「……とにかく今は先へ行こう」
「お、おう」
「え、この人どうするの?」
男は姿勢を変えずただ恐怖に怯えている。腰でも抜けたのだろうか。
「どっかに縛ったりできたらいいんだけどな。場所もねえし……」
守衛所も考えたが、他に誰かが来る可能性は十分に考えられる。
それに言ってしまえば縛るための道具など何も持っていない。近くにロープでもあれば別だが。
「……お前、この事は絶対誰にも言わないって約束しろ。でなければ次は撃つ」
男を再度睨み付け、脅すように言う。
男は言葉を発さず、ただ首を縦に振り続けた。
「……じゃあ、先へ進もう。駿、入り口はあったか?」
「でかいシャッターの横に人が入る用のドアがあった。シャッターは閉まってたから中の様子はわからないが、多分入れる」
「よし。じゃあそこへ行くぞ」
ドアをゆっくりと開ける。
どうやらシャッターは大型トラック用の搬入口だったようで、中はトラックを停められる程度のスペースがあった。
運良く部屋の中に人影は見当たらなかった。
「とりあえずはもうちょっと奥まで入らないと分からないよな」
「流石にここに地図とかはなさそうだしね」
啓の言う通り、流石に搬入口付近では館内図の類は見つからない。
代わりにトラックに荷物を搬入するための、大きめの入り口が正面にある。
「ここに入るしかないか……」
「そうだな、他に入り口は無いし」
「とりあえず俺が先に入るぞ」
観音開き型のドアを片方だけ少しずつ開いていく。
正面と左右に廊下が繋がっている。今のところ正面に人影は見当たらない。
自分が通れる程度までドアを開き、身体を通す。
すぐに左右を確認する。人影は見当たらない。ただ広く白い廊下が続いている。
右側の奥に階段の看板が見える。左側と正面は廊下の途中にドアが見えた。
「……よし、とりあえずは入れるぞ」
ドアの隙間から手招きし、皆を中に引き入れる。
全員がゆっくりと侵入し、拓がなるべく音をたてないようにドアを閉めていた。
その時だった。
左側からドアが開く音がした。
それに驚いた拓がドアを閉める音を強く立ててしまう。
「やべっ……!」
ドアが開いた場所から、白衣の男が顔を出す。
「えっ……!?」
「こっちだ!!!」
咄嗟に右側へ皆を連れて走り出す。
「ちょ、ちょっと!待ちなさい!」
「逃げろ!!!」
階段の看板へ向かって走る。
直後、突然サイレンと共に館内放送が響き渡る。
『緊急事態発生。緊急事態発生。実験室内及びその周辺の職員は直ちにその場を離れ、安全を確保してください。繰り返します』
「何なんだよっ……!」
「とにかく今は逃げろ!!!」
後ろから確かに追いかけられる感覚を覚えつつ、ひたすらに走るのだった。
次回は2018/11/07(水)19:00 を目安に投稿します。
また間に合わないかもしれません。




