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5 - determination

作者の実生活の方でトラブルが色々あって遅れました。すいません。台風やばかったですね。

「『C.T.』……」

漣はその名を噛み締めるように呟く。

耳を塞ぐ手を緩め、その目はどこか虚空を見つめている。

「……知らない名前だ」

漣が小さくそう呟く。魁斗はほっと胸を撫で下ろした。

だが、同時に1つの可能性も消えた。

少しだけ光が遠ざかったような感覚を覚えるが、今はそれどころではない。

「信じてくれますか」

改めて冷静に問い直す。

「あ、ええ……はい。取り乱してすみません」

漣は体を縮めたまま、それでも落ち着きを取り戻し応えた。


「でも、なんで『倉木総合病院』のことを知ってるんですか?こう言っちゃ悪いですけど、君達みたいな子供がその情報を知っているなんて俄には信じられない」

「信じてもらえないかもしれませんが、自力であなたの名前の載ったカルテを入手したんです。その中でも一番あなたが接触しやすい人物だった」

郁からの依頼という形ではあるが、そのカルテに載った人物に接触することなどで情報を集める必要は元々あったのだ。

「……申し訳ないですが信じがたいですね」

「でしょうね。でも、本当なんです」

「あなたのカルテ、地下に保管されてたんです。まるで隠されてるみたいに」

啓も口を挟み、漣を説得しようと試みる。

だがその瞬間、漣は眉をひそめた。

「……待ってください。『倉木総合病院』にカルテがあったんですか?」

「はい。地下の、名前のない部屋の中に」

「じゃあ、最初から……いや、そうとも限らないか」

漣はぶつぶつと呟いている。思うところがあるのだろう。

そして暫く一人で考え込み、時に何かを呟き、やがて魁斗達のことを見据えてゆっくりと顔をあげた。

「……正直、まだあなた達の事は信用しきれません」

「じゃあこれ以上何を……っ!」

抑えきれず感情を昂らせた啓を、魁斗が制する。

漣はそれを見て言葉を続けた。

「ですから、重要な情報は僕の方で確証が得られたらお教えします。僕も確かめなければならないことができた」

「でもあなたはここに匿われているんじゃ?」

「ええ、ここの管理職の方にツテがありまして。僕から頼んで身を置かせていてもらっていたんです」

「……それは何故?」

そう訊くと漣は一瞬黙ってしまい、何かを考える素振りを見せた後再び口を開いた。

「……詳しいことは話せません。ですが、僕はもう今まで通りの普通の生活は送れないことは解っていた」

漣がゆっくりと立ち上がる。

「でも、もう違う。このままここに留まるわけにはいかない」

そう語る漣の目は、それまでの虚ろ気なものではなく、どこか確固たる意思を持ったものに見えた。


その時、ドアノブがガチャリと音を立てて動く。

間髪入れず開けられたドアの先にいたのは。

「お兄ちゃん!ようやく見つけた!」

自力でこの場所までたどり着いた、海達3人の姿だった。

「あれ?その人って」

拓が漣の顔をまじまじと眺めている。

「ありがとうございます、『C.T.』の皆さん。僕はきっとどこかでこういうきっかけを待ってた」

漣はどこか苦笑するような笑みで魁斗たちのことを順番に見ていた。

「『C.T.』……?」

駿が首を傾げるが、啓が謝るようなジェスチャーを見せたことで何かを察したようだった。

「あなた達の名前は忘れません。その時が来たら、また会いましょう。全てを解る限り、話します」

海達は話の流れについて行けておらず、困惑しきっている。

魁斗はどこか不安そうな眼差しで、漣のことを見つめるのだった。

次回は2018/10/03(水) 19:00に投稿します。

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