5 - encounter
作者の怠慢により予定してた時刻から1時間更新が遅れました。
すいません。
流石に休日ということもあり、中は多くの人々が行き交っていた。
家族連れや友人同士で遊びに来る子供達、ベンチで休憩している老夫婦もいる。
人混みの中に紛れ、進んでいく。
奥に潜るためのヒントを得るため、至る個所を注視しつつ進んで行く。
だが彼らは傍から見ればただの子供達。
周りの人間と何も変わらない、ただの子供達だ。
雑踏に紛れる。
人の波に溶けていく。
風景の一部となる。
「ねえお兄ちゃん、防犯カメラ、いくつか見てたんだけど」
海が袖をくいくいと引っ張る。
「うん?」
「種類がいくつかあるみたいなの。古い奴が混じってるみたい」
海が1つの防犯カメラを指差す。
「例えばあれは新しい奴なのかな、全方向見渡せる奴だよね、多分」
黒い半球状の防犯カメラだった。中のカメラがどこを向いているかはわからないが、ある程度の方向は見渡せるのだろう。
「……そういえばこの辺りは最近工事してたな」
駿が思い出したように言う。
ムーンサイドポートは20年程前に完成した施設であり、部分的に老朽化が見られていた。
また20年前の世代に合わせて作られていたため、数年前からちょくちょくリニューアルのための工事が行われていたのだ。
「それでカメラも一緒に新しくした、とかか」
「だろうね」
リニューアルオープン時には確かに様々な補修が施されていたが、その中にカメラの交換も含まれていたのだろう。
「それで海、古い奴ってのは?」
「うん、1方向しか見られないような……なんかこんな、細長い奴」
そう言いながら海が長方形状のものを示唆するジェスチャーをして見せる。
「それは動いてたのか?」
「ううん、見てる限りでは動いてなかった」
「じゃあ死角が多いのはそのカメラらへんだろうな……まだ工事してない場所がいいか」
拓が首を傾げる。
「『しかく』が多いってなんだ……?四角形が多いことが何が良いんだ?」
「死角は見えない場所の事ね、拓」
啓が苦笑しながらフォローを入れた。
「……従業員専用入り口はトイレの近くが多かった」
駿が静かな口調で情報を追加する。
「なら、工事してないところのトイレから行けば良さそうだな」
「まだ工事してないところならゲーセンの近くだ!」
拓はゲームセンター付近の事はよく知っているようだ。
「じゃあ、とりあえずその辺まで行ってみよう」
ゲームセンターの付近はゲームの筐体の音が重なり合い、他の店舗の近くと比べてかなり騒々しい場所になっていた。
「……お前いつもこんなところいるのか」
「いやずっといるわけじゃないけど……っていうか、俺1人でここ来るわけじゃないし」
駿は騒音に耐えられないのか、耳を軽く押さえている。
「トイレだったよね……あ、あれ?」
啓がトイレを指差す。
「え、カメラそもそも付いてないじゃん」
海が驚き周辺を見渡すが、防犯カメラのようなものは見当たらない。
「あるとしたらゲームセンターの中にあるんじゃないのか?」
「なのかな……まあ、無いだけありがたいけどね」
「そのトイレの奥に従業員専用の扉は?」
「……あるな」
駿が少しトイレの方を覗き込み、『STAFF ONLY』と書かれた扉を発見する。
「んじゃ、周りにばれないように一人ずつ入っていこう。俺が先に行くから、タイミングを見計らって入って来てくれ」
そう言うと魁人が『STAFF ONLY』の扉に近づいていく。
確かに周りにカメラはない。ドアには特に変わったところもない。
ゆっくりと扉を開く。
誰もいない。外より無機質なライトが照らす質素な廊下が続いている。
扉をゆっくりと閉め、中へと進んで行く。
とりあえずは皆を待たなくては。
近くに箱が山積みにされているのを発見し、その陰に隠れる。
それから程無くして、啓が続いて入ってきた。
魁人が手を伸ばして箱の陰にいることを知らせ、啓が同じように隠れた。
その時、廊下から足音が聞こえた。
数人分の足音。
会話を交わす声が聞こえる。
扉に近づいてきている。
自分たちは恐らく見つからないだろう。
だが――。
扉が開く。
足音はまだそこまで辿り着いていない。
「……あっ」
「あれ、君?ここはトイレじゃないよ」
「すっ、すいません!間違えました!」
バタンと扉が閉められる。
「……今俺言い方きつかったか?」
「いや別にそんなことはないと思いますよ、あの子が焦ってしまっただけじゃないですか」
「そうだよな、そう信じとくぞ」
「気にしすぎですよー」
そう話しながらスタッフ達も扉を開けて外へ出て行ってしまう。
焦りを隠せない顔で啓が魁人を見る。
ほぼ同じような顔をしたまま、魁人も啓を見ていた。
「……どうする……?」
次回は2018/09/27(木) 19:00に投稿します。




