4 - suspicion
個人的な事情により投稿時間を予告から2時間遅らせてしまいました。
すみません。
正体不明のカルテを持ち帰ってから数日が経過した。
啓の言う人物は連絡さえ取れたものの、忙しいらしくすぐには確認できないとのことだった。
そのまま日付と時間だけが過ぎていく。
だが彼らが覚えてしまったスリルは彼らの中から探求心や好奇心を絶やさず、寧ろ日に日に膨らませていた。
幸いなことに過去に彼らが起こした『遊び』は世間の噂に上がることもなく、彼ら自身は至って普通の生活を送っていた。
そんな日々が続いた、ある日。
「あ、いたいた。魁斗」
朝、学校にて。
啓が登校してきた魁斗に駆け寄った。
「連絡が取れたよ。カルテ見てもらえるってさ」
「おおそっか、いつ頃になりそう?」
ランドセルを勢いよく下ろし、机に置いた。
「今日の夕方でいいって向こうは言ってたから、魁斗と他の皆さえよければ」
拓や駿はまだ登校してきていないが、後で彼らにも同じ話をするのだろう。
「俺は大丈夫。海はまあ……その時ダメでも俺から伝えるよ」
「オッケー。ただ、ちょっとひとついいかな」
急に啓が深刻な面持ちになる。
「なんだ?」
机に置いたランドセルを支え、注意深く啓の話を聞く態勢をとる。
「なんかよくわかんないんだけど、出来るなら魁斗の家で落ち合いたいって言ってたんだよね」
「……どういうことだ?」
「わかんない、向こうが言ったのはそれだけだから……」
啓は困ったような表情で俯いてしまった。恐らく本当にそれしか言われていないのだろう。
自分はまだ向こうの正体を知らない身なのだ。慎重に出なくてはならない。
そこで、あることに気づく。
「……待て、なんでそいつ俺のこと知ってんだ」
啓は急に取り乱し始める。
「えっ、あっ、言っちゃまずかった!?ごめん、僕が言っちゃった……」
「俺のことだけか?」
「名前を出したのは魁斗だけだけど、5人で行った、ってとこまでは……」
啓が申し訳なさそうに告げる。
「……結構喋ってんな」
「ごめん……」
また啓が俯いてしまった。
「いやまあ、止めなかった俺も悪いんだけどな。こういうこと、普通無いし」
「次から気を付けるね……」
「次あるかわかんねえけどな。で、問題はそこじゃなくて」
「うん、何でそんな指定してきたか、だよね」
相手はわざわざ『魁斗の家』を指定してきている。
そもそも、元から啓が知り合いなのだから啓の家で行えばいい話だ。
何なら公にできない内容なのだから、個人の家は避けるという手段もあったはずだ。
だがそれを知ってか知らずか、相手は『魁斗の家』を会合場所にしようとしている。
啓の話ぶりからして、恐らく他のメンバーの名前を聞いたりはしていない。
偶然名前の上がった人物を指定しただけだと考えた方が自然ではある。
だが何の為だろうか。
「そいつは俺のこと知ってる奴か?もしくは、俺が知ってる奴か」
「いや、多分どっちも知らない……あ、知らなかった、はずだと思う」
「だよなあ……」
そうなると余計に意図が分からない。魁斗の名前も別にまだ有名ではない筈だ。
「……そいつ、本当に何者なんだよ。教えてくれないのか」
「絶対言うなって言われてるから……ごめん」
「そうか……」
自分の名前が出されていることに多少の不公平を感じたものの、別に啓を責める気はないので口には出さなかった。
だが、答えは決まった。
「……なら、そいつに伝えてくれ。俺の家はダメだ。俺もそいつも含んだ、その場に参加する全員が平等な立場になる場所にしろ」
「う、うん、わかった」
啓は若干困惑しているようではあったが、飲み込んでくれたようだ。
「あと、拓と駿にはこの話はしなくていい。場所だけまだ未定だってことにしてやってくれ」
「うん、わかっ――」
「魁人、啓!!!やべえよやべえよ!!!聞いてくれよ、さっき俺の目の前に鳥のフン落ちてきたんだぜ!!!」
大声で喚き立てながら拓が教室に入ってくる。
「……言う必要も無さそうだけどな」
「……うん」
「やばくね!?目の前だぜ、あと一歩歩いてたら――」
上機嫌に話を続ける拓を横目に、魁人は正体不明の人物をより深く疑るのだった。
次回は2018/08/29(水) 19:00に投稿します。




