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3 - hospital

1階。

此処には入院患者用の病室は無く、主に診察室が多くある。

かと言ってその全ての部屋に医師が常駐しているわけではなく、診療内容によって移動して使い分けているようだ。

看護師も医師がその部屋を使う予定を作らない限りは別の部屋に入ることは滅多にない。

またメインホール側、玄関近くの方には受付と隣接している売店、小さな子供が遊ぶためのプレイスペースがある。

診療に来ている者、診療目的ではない者問わず暇を潰すためには其処を利用しているようだ。

奥の方、メインホールから離れた場所になると、病室も無いので従業者だけの空間に近い状態になる。

利用者がこちら側へ来るときは、医師と看護師が部屋の用意を済ませた後、看護師の誘導に沿ってくる形になる。

つまり、利用者単体で此方に来ることはほとんど無い。

地下への階段はこちら側から向かうことができるが、まずここへ怪しまれずに来るだけでも一苦労だということだ――。

そんなことを考えながら、啓はCT室の中に隠れていた。

(どうしよう……人が出てきたの見えたから咄嗟にここ入っちゃったけど、絶対こんなところ使うにきまってんじゃん……)

深いため息を吐く。

何故「一人でも行ける」などと言ってしまったのだろうか。過去の自分を恨む。

確かに5人である上に海は魁人から離れないだろうから、他の3人のうち1人が単独行動しなければならないことはわかっていたのだが。

自分から率先して出なくてもよかったのに。

(チェスだったらもう負けだよこれ……)

最悪の手を打ったようなものかもしれない。

だが今はとにかく、もう少し、安全な範囲内で調べられそうなことを調べよう。

見つかったら――その時はその時だ。


「なあ、階段ってこっちだったっけか」

「逆だ」

駿が拓の指す方向と反対を指さす。

2階と3階は病室が多く、入院患者や見舞いに来ている者が多く見られる。

2階は病室に加えて倉庫や会議室など事務的な用件で使うための部屋がある。

此処にはあまり人は寄らないようで、時折看護師が何かを持ち出すために倉庫の方へ駆けていく様子が見られるくらいだ。

そんな中で拓と駿は患者の見舞いの付き添いを演じていた。

ただフラフラしているだけでは確実に怪しまれる。

だが2人には此処に入院している知り合いなどいない。

直接誰の見舞いに来たのかなど聞かれてしまえば、本当なら詰みのようなものだ。


しかし、彼らは小学生だ。

それも12歳という、賢いか賢くないのかがとても曖昧なラインなのだ。

ちょっと馬鹿っぽく「わかんないけどここで待ってる」と答えてみる。

相手は、「彼は小学生なのだからそのくらい仕方ないか」と判断してしまう。

もっと狡猾なことを考えているというのに、それに気付かれないまま幼稚な嘘を貫き通すことができる。

小学生でスパイをするという事は、こういうことなのだ。

その本質に、拓と駿は気付き始めていた。

次回は2018/08/15(水) 19:00に投稿します。

若干変なところで切ってますが気にしないでください。

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