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3 - sister

「う、海?病院行くとは言ったけど、診察じゃねえぞ?」

「わかってるよそんなの!」

海は躊躇なく魁斗の横に座り、魁斗の方をニヤつきながら見ている。

「……悪い事するんでしょ?」

悪戯っぽく海が魁斗に訊く。

啓が渋い顔をしたが、それに気づく者は居なかった。

「ま、まあ……」

「私も連れてってよ!お兄ちゃん達だけずるい!」

「んな事言ったってなあ」

「拓は黙ってて!」

「はぁ!?」

海は昔から気が強く、啓達と初めて会った時から呼び捨てで呼んでいる。

その上態度も強めなので、魁斗は若干手を焼いている。

当の本人達はそれほど気にしてはおらず、一人の同年代の友達のように振る舞っているのだが。

「どうせまた夜に抜け出すんでしょ?逃がさないんだからね」

「言い方怖っ!」

その言葉を聞いた魁斗は、今までの呆れた笑い顔を崩し、何かを考え込むように真剣な顔つきになった。

「……どうした魁斗」

「んー、いや……

病院なら忍び込むんじゃなくても行けないかなあって……」

「……?どういうこと?」

啓はもはやチェスの方から身体をそらして話を聞いている。

「俺らスパイなんだろ?他の人の中に紛れ込むってのも手なんじゃないかって」

海は期待していた答えと全く違う種の話が始まってしまい、困惑しながら訊く。

「え、何それ、昼の間に行くの?」

「……まあ多分その方がいいだろうな」

「いつ行くつもりなの?」

「何時でもいいけど?なんなら今日行くか?」

「「「はぁ!?」」」

魁斗が挑発的に笑っている。海は困惑したまま固まっている。数分前とは立場がまるで逆だ。

魁斗がフッと吹き出す。

「……流石に冗談だよ、来週の金曜とか――」


「やってやろうじゃない!出来るもん!」

海が叫んだ。


「は!?お前勝手に決めてんじゃ……」

「何よ拓、ビビってるの?」

「なっ、そういう訳じゃ……!」

そこまで言って拓は口車に乗せられそうになっていることに気づき、ハッと黙り込む。

拓もいつの間にかゲーム機を放置していた。

「啓も行けるでしょ!?」

「えっ!?えっ、えっと」

「行けるよね?」

「あ、あぁ……うん……多分」

啓も折れてしまい、自分の発言に後悔しているのか下を向いてしまった。

「駿は!?」

海が駿の方に振り向く。

「……ってあれ、聞いてなかったの?」

駿は本を読んでいたのか、ここまでの流れに気づいていなかったといった素振りで魁斗の方を見ていた。

「……すまん」

「この後病院に行くの!良いよね?」

「……良いんじゃないか」

そう答えるとすぐに本に視線を戻してしまった。

「……ま、まあ良いでしょ!じゃあ行くよお兄ちゃん!」

「まあまあ、仕度してから、な」

魁斗はたじたじとなりながらも海を宥め、自身の仕度をするためにパソコンを閉じて席を立った。

「……なあ啓」

「うん?」

「こいつら、兄妹揃ってやべーな……」

「そ、そうだね……」

啓がふと駿の方を見る。

本を読み続けるその頬が、少しだけ紅く染まっているような気がした。

次回は2018/08/11(土) 19:00に投稿します。

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