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2 - stillness

工場見学と呼ぶには程遠い説明会から数日が経った、ある日の夜。

昼であろうと夜であろうと日下部精工は静まり返っている。

だがやはり夜の闇に静けさが飲み込まれていては不気味さも増すもので、どことなく不穏な空気が流れているようにも思えた。

「……な、なあ、やっぱりやめねぇ?」

「何だ急に怖がっちゃって。言い出しっぺはお前だぞ」

「別に怖いわけじゃねえし!」

4人は既に工場の前に着いていた。当然魁人は海を振り切って来ている。

「ねえ魁人、今回は何したらいいんだっけ」

「『隠された情報を探す』ったって、具体的にどうするかわからないと困るんだが」

「ああ、そうか」

大雑把な目的は伝えたものの、全てを一任しているわけでもないことには誰も上手く動けない。

「うーん……けどなあ、ここの案内図とかすら見れてないし……そもそもあるかよくわからないけど」

「じゃあまずは内部の把握か?どこに向かうかはその後で」

「マップみたいなものがあれば見つけて、なければ自分たちで把握して、って感じかな」

「まあそうだな。ただ、誰かいるかもしれないしそれだけは気を付けて行こう。……まあ正直誰もいるとは思えないんだが」

今こうして話している前でも工場の中から音は何も聞こえないし、気配すら感じない。

「とりあえず中に入ってみよう。今回は入ったこと自体はバレても誰だかわかんなきゃ大丈夫だから、顔だけ隠していこう」

そう言いながら魁人がマスクを配る。

「監視カメラとかあった時に顔までバレたらまずいからな。体格だけならすぐには特定されないだろうし」

「なんか本格的になってきたよね」

「……なあ、マジで行くのか……?」

「お前が言い出したんだろ」

拓の声が震えている。緊張というよりは恐れに近い感情なのだろう。

「そろそろ入るか」

あまり夜を更かしても眠気が邪魔をするだけだ。

不気味な雰囲気は変わらない。静まり返った空気は動かない。


この夜の闇に、溶けてしまえばいい。


魁人がフードを被る。

啓もそれを見てフードを強めに被る。

駿も静かにフードを被る。

拓は気が乗りきらないような態度を見せつつもフードを被った。

全員が同時にマスクをつけた。

「……んじゃ、行くぞ」

――遊びが、始まった。

次回は2018/07/18(水) 19:00に投稿します。

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