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アレンシアレコード  作者: リール
9/9

洋上要塞ストレア

ダレスの後ろにそびえ立つ、全身を重厚な装甲で包んだ鋼鉄の巨人。

その足元には多数の専用武装と思わしき火器の数々が並んでいた。


「こ、これは…まさか第5研が開発していた……」


「なんだニック。コイツを知ってるのか?」

俺は驚愕し、目を見開いているニックに尋ねた。


「はい。我々が地球に来る以前から第5研究所の開発部門で開発が進められていたロボット兵器です。新型スタビライザーとセントラルコンピューターの相性が悪く、開発が遅れた挙句、予定より予算が嵩んで開発は中止になったと聞いていたのですが……」


「そうだ。これがその開発中止になったロボット兵器の完成系。G-1 グランドマスターだ。大侵攻を受けて連合王国になった時、日本とアメリカの技術者にも協力を依頼して再開発が開始され、つい先週完成した新品だ。

本当なら降りなかったようなとてつもない予算をかけて造られた、言わば虎の子って奴だな。」

ダレスは淡々と説明する。


「だが、なんでそんなもんをウチに回してくれるんだ?俺たち212中隊では兵器は消耗品だ。

そんな虎の子、直ぐに壊しちまうかもしれないぞ

?」


「だからだよレイ。最も備品の損耗率が高いお前達の隊に配備すれば耐久性も量れて実戦テストも出来るから一石二鳥ってわけだ。

信頼のおける王室直属部隊で最も優秀な隊でもあるしな。」


「王室直属?何言ってる。俺たちの所属はこのストレアの司令部だぞ?」


「ん?あぁ、そうか。公表がまだだったな。ついうっかり口を滑らせちまった。

確か、あと1時間もすれば招集がかかるはずだ。

細かいことはそこで聞け。

とにかく、コイツの実戦テスト部隊としてお前達212中隊が選ばれた。

勿論、パーツも潤沢に用意してある。思う存分使って壊して性能を確かめてくれ。」


「色々聞きたい事はあるが、ひとまず了解した。

ニック。中隊メンバーに通達。マニュアルに目を通させておけ。」


「了解です隊長。」

ニックは楽しそうな顔をしながら部隊用回線で中隊メンバーを集めた。


1時間後、ダレスの言ったように各隊の隊長が呼び出され、新設された『軍』の発表がなされた。


「皆、よく集まってくれた。これより、新設された新たな軍及びその所属部隊と兵器の詳細な配備状況をモニターに映す。まずはこれを見てくれたまえ。」

ストレアの最高司令官であるハンス・レイグラードがモニターを指す。


各隊の隊長及び各方面司令部のトップが集まるその部屋のメインモニターに、新設された軍と配備される兵器の詳細が映し出される。


《アレンシア連合王国特務機甲軍》


所属:僻地奪還作戦用洋上要塞ストレア


司令部:アレンシア連合王国軍総司令部


《王室直属特務機甲大隊》

『第210特務中隊

第211特務中隊』

M25アールグレイ

20式軽戦車

24式重戦車

25/28式戦車

『第212特務中隊』

G-1 グランドマスター

GL-5 シュピーゲルクリーガー

AT-F mod.A/B ランドアーマー

『第213特務中隊

第214特務中隊

第215特務中隊』

GL-05 スティグマ

HT-1直立自走砲


《第105砲兵師団》

『第1砲兵連隊

第2砲兵連隊

第3砲兵連隊

第4砲兵連隊』

HT-1直立自走砲

直立型自走迫撃砲T-1

22式装甲輸送車

22式自走榴弾砲

8式重戦車

21式対空自走砲


《第501工兵師団》

『第1工兵連隊

第2工兵連隊

第3工兵連隊』

22式装甲輸送車

24式弾薬運搬車

21式対空自走砲

20式軽戦車

20式HREV


《第1-第5普通科連隊》

高機動車

LAV

22式装甲輸送車

IFV-16 ローバー


「これがストレアに配備された軍の名称及び各隊の所属、兵器の配備状況だ。また、記載された兵器の中で1部開発中の兵器も存在する。詳しくは手元の資料を参考にしてくれ。

また、各特務中隊はこれより王室直属部隊となり、新設された王室直属特務機甲大隊の所属となる。各員、奮励努力するように!」

ハンスはそう言うと壇上から降りた。


なるほどな。王室直属特務機甲大隊…ダレスのおっさんが言ってたのはこれか。

と、俺が思いふけっていると、後ろから快活な声が聞こえてきた。


「おいレイ!元気にしてたか?」


「お、ルイスじゃないか。お前こそ元気だったか?」


ルイス・グラフォール。階級は大尉。高身長、短く揃えた明るめの茶髪の好青年で、第210特務中隊の中隊長だ。

任務の重要性の関係で、各特務中隊は基本的に他の隊との合同任務は少ないが、特務中隊同士で組むことは少なくない。

その中でも俺の隊とよくつるんでいるのが実力の近い210中隊で、隊長の俺とルイスは仲がいい。


「ああ。見ての通り超元気だ!

ったく、気づいたら少佐にまで昇進しやがって!

エースはいいよなぁ〜。

ところで、お前さんの中隊には新型兵器が配備されるんだってな?もう見たのか?」


「お前だってそろそろ昇進するだろうが。新型なら丁度さっき見てきたよ。二足歩行のロボット兵器だった。単座と複座の2種あったな。」


「なるほどな。新兵器は有人ロボットか。そりゃお前達に回るわけだ。」


「そりゃどういう意味だ?」


「お前達212中隊が特務中隊の中で最も備品の損耗率が高いが、最も高い戦果を挙げてるからだよ。大侵攻の時も、たった15両の戦車で約2000の二ュールを撃破。内5体は大型二ュールときた。

こんだけ高い戦果を挙げれば、お上の目にもつくさ。」


「なるほどな。流石に目立ち過ぎたか…」

少しやり過ぎたかと後悔していたその時、基地内に警報が響き渡った。


《北西方面より敵襲!敵総数およそ2000!総員戦闘配置。繰り返す。総員戦闘配置!迎撃隊は兵装レベル3で出撃せよ。繰り返す。迎撃隊は兵装レベル3で出撃せよ!》


「ちっ、毎度毎度ブリーフィングの時を狙ったかのように襲撃してきやがって!兵装レベル3って事は大物はいなさそうだが……」

悪態を吐きながら格納庫へ走る。


「来たものは仕方ないですよ。隊長は先に行ってて下さい。僕は中隊のメンバーを集めてきます。」


「任せた!」

俺はニックに召集を任せ、格納庫に走った。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「おっさん!この機体だせるか!?」

俺はダレスのおっさんに確認をとる。


「おうよ。いつでも出せるぜ!兵装は広域殲滅系の火力重視にしておいた。情報によると、今回は数が多いだけで強力な個体は出てないそうだからな。」

ダレスはいつの間にか敵の情報を仕入れていたらしく、既に装備まで万全の状態になっていた。


「流石、仕事が早いぜ。」


「はっはっは!褒めても何も出ねえぞ?…っと、部下が集まったみてーだぜ。」

俺とダレスのおっさんが軽口を叩いていると小隊のメンバーが集合していた。


「第1小隊。グレイス・アーゼンハイム以下4名、点呼が完了しました!」

振り向くと、相棒のグレイスがしてもない点呼をしたことにして、目を爛々と輝かせていた。


「第2小隊。集合しました!」

「第3小隊。準備完了しました!」

「第4、第5小隊、共に点呼完了であります!」

他の小隊も次々に集合した。


「レイ。これ、俺達が使って良いんだな?」

ニヤニヤと笑みを浮かべながらグレイスが聞いてくる。


「そうだ。コイツが今日から俺達の相棒だ。

今まで2人で1両の戦車に乗っていたが、今日から1人1機のロボットに乗ることになる。しかも戦車とは使い勝手は全く違う上に訓練もせずイキナリ実戦だ。かなりの無茶ぶりを要求する事になるが、各員、マニュアルはもう見ただろう。本来は訓練が必要だが、今回は実戦で動いて覚えろ!お前達なら出来るはずだ!良いな!」

我ながら相当な無茶振りだが、使える戦闘車両は現在これしかないから仕方がない。


「「「「はっ!」」」」

しかし、そんな無茶振りなんざいつもの事だと言わんばかりの威勢のいい返事が返ってくる。


「それと、機体が倍になる為、これから各小隊は2個小隊に別れる。各隊の2番隊は、フォネティックコードに則り、第1小隊から順にフォックストロット、ゴルフ、ホテル、インディア、ジュリエットと呼称する。隊長は各小隊の副隊長だ!いいな!」


「「「「了解!」」」」


「よし。総員、搭乗開始!」

号令と共に、中隊メンバーは各々自分の乗機に走った。

俺も自分の機体に走り、コックピットに乗り込む。

コックピットは機体の胸部中央に位置している。

大きく開いたコックピットの装甲ハッチに掛けられたタラップを登り、中に入る。


中に入り、搭乗前に担当整備士から渡されていたカードキーをディスプレイ付近の挿入口に入れ、シートの横にあるサイドブレーキのような黄色いレバーを引くと、装甲ハッチが閉じる。

ハッチが閉じると同時に各ディスプレイが起動し、機械音声が流れて来る。


『ID認証、No.0212A 搭乗者レイ・ラインハルト少尉。起動シークエンス、開始します。

システムチェック……システムオールグリーン。メインカメラ起動。火器管制システム、セーフティ解除。兵装ロック、バーニアロック解除。各部エネルギー供給を開始……完了。出力正常。戦術サポートAIの人格を形成中…………形成完了。ファイナルチェックOK。以後の動作を戦術サポートAI【リエル】へ移行……移行完了。G-1 グランドマスター 起動します。』


機体が長い初期動作を終えて起動する。

俺は小隊各機に確認をとる。


「正常に起動が完了した隊は報告。」


『こちらデルタ。全機起動完了。』

『アルファ、全機起動確認。』

『エコー、同じく全機起動確認。』

……………

………

デルタ小隊を筆頭に次々と起動報告が成され、俺が締めくくる。


「ブリッジ、こちら第212特務中隊。出撃準備が完了した。指示をくれ。」


『こちらブリッジ。出撃準備の完了を確認。

第212特務中隊は出撃後、ポイントA-3の防衛に当たって下さい。』

ブリッジに指示を仰ぐと、淡々とした女性オペレーターから指示が出る。


「了解した。出撃後、A-3防衛の任に就く。俺達アルファ小隊とブラボー小隊が前に出る。チャーリー小隊とデルタ小隊、エコー小隊は取りこぼしを殲滅。他の隊はポイントA-3にある滑走路と管制塔を防衛しろ。」


『『『『了解』』』』

俺の指示に各隊の小隊長が応える。


「よし、第212特務中隊、出撃だ!他の隊の獲物を獲るんじゃねえぞ!」


『隊長、それは貴方が言えたことじゃありませんよ。』

『ははっ、ちげえねぇ。俺らの分、ちゃんと残してくれよな。』

『そうですよ!我々の分、しっかり残して下さいね中隊長!』


俺が冗談を言うと、ニックとグレイスや他の小隊の隊員が無線で返してくる。


「よし、今日の宴会は1番戦果の低い隊の隊長の奢りだ!金欠になりたくなけりゃ狩りまくれ!いいな!」


『『『『おおおおおおおおお!』』』』

何としても最下位にはなりたくない各小隊の隊長が雄叫びをあげる。


『1-4番カタパルト、準備完了。第212特務中隊、出撃を開始して下さい。ご武運を。』

オペレーターの合図と共にカタパルトに機体が移動させられる。


そして………


「よし、レイ・ラインハルト、出る!」

俺はブースターを点火して空へ飛び出した。


超遅れての次話投稿になります。

長期休暇で暇なので、今月はちょくちょく更新します。

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