深淵
書き方を全面的に変更します。
「212中隊が来たって?」
「あの『黒鉄の鬼神』の?本当か?」
「ああ。11号兵舎に居るらしい。見に行こうぜ!」
第212特務戦車中隊はアレンシア帝国陸軍の中に存在する15の特務中隊の1つの部隊として有名な部隊だった。
帝国の精鋭中の精鋭が集まる伝説の部隊。
入隊基準が厳しく、基本的には各隊から大きな戦果を挙げた者や何らかの技術に長けた者が選抜されて入隊する。
志願する事も可能だが、志願して合格することはない。それが常識であり、それが第212特務戦車中隊だった。
しかし、その常識を覆した者達が居た。
レイ・ラインハルトと、その相棒のグレイス・アーゼンハイムだった。
212中隊の入隊試験は小隊同士の戦車戦で、その相手は212中隊から選抜された一個小隊。
レイとグレイスの2人は、その試験を僅か5分でクリアした。
入隊試験を難なくクリアし入隊した2人は、配属先でどんどん戦果を挙げ、212中隊は15ある特務戦車中隊の中でもトップの戦績を誇っていた。
レイの乗車はアレンシア帝国の一般的なフォリッジグリーンの迷彩ではなく、全体に艶消しの黒の塗装が施されていた。
多数のニュールを屠るその姿と、戦闘から戻る度にその車体をどす黒い返り血に染めいた事から、いつしか『黒鉄の死神』と呼ばれるようになっていた。
そんな最精鋭の隊が、最前線のエル・グロウに来ている。それだけで、エル・グロウ内の士気は最高潮に達しており、兵達は一目でも見たいと212中隊の居る兵舎に集まっていた。
「おい、あれかま212の連中か?」
「らしいな。最前線だってのにすげー余裕だ……」
「流石は最精鋭なだけはあるな……」
多くの兵の注目を集める212中隊の面々は………
「チェックメイト!」
「王手です。」
「ロイヤルストレートフラッシュ!」
「猪鹿蝶!」
………遊んでいた。それはもう子供のように。
「あ〜また負けた!レイったら少しは手加減しなさいよ〜。」
どうやらレイに連敗中と思われる第2小隊隊長のエレナ・イースが愚痴をこぼす。
「流石第1小隊……戦闘だけじゃなく遊びも強いとは……」
「ちくしょー、何やっても勝てねえかー。」
どうやら、中隊内の第1小隊と第2小隊で勝負をしていたらしい。他の第2小隊の面々も勝てた者は居ないようであった。
勝った負けたとワイワイと騒いでいると、外から大型トラックのクラクションが聞こえた。
「なんだなんだ?」
レイが外を見に行くと、そこには何やら大きなコンテナを積んだ輸送トラックが3台停まっていた。
「おーい、お前ら。本部から面白いモンが届いたぞー。」
そう言って輸送トラックから降りたのは、整備班のダレス・レプスだった。
212中隊の面々は兵舎から出て、トラックの前に並んだ。
「実は、数日前に開発部門からお前達に新型機の評価をしてほしいって依頼が来てな。今日、その実機が3機届いたもんだから見せようと思ってよ。」
そう言って、ダレスは荷台のシートを剥がした。
そこから現れたのは、前部に脚、後部には履帯が付いており。二門の砲と多数の機関砲や機銃を装備した戦闘車両だった。
「コイツはALW-01 ランドウォーカーだ。多脚戦車の試作型でな。直線走行性能を考えて、後部は独立した機関部に履帯がついてる。主砲は90ミリの速射砲二門だ。
お前達が今まで使ってたランバルドの戦闘データリンクを元に作られてるから、ニュール相手にはかなり使える。」
ダレスは自信満々に話す。
「あ、あの……一応、それ試作型ですよね?実験部隊ではテストしたんですか?」
ニックがオドオドと手を挙げつつ質問した。
「ああ。実際に実験部隊がグラント20体と交戦した。
「で、結果は……?」
「殲滅はスムーズに出来たんだが、実験部隊からは不評だった。」
「なぜですか??」
「脚と履帯の相性が悪すぎたんだよ。扱いづらすぎると苦情が殺到してな。そこで、お前達ならと……」
「アホか?そんなもん分かりきってるじゃねえか……せめて、駆動系を統一してくれ。」
ダレスの話を遮り、レイが文句を言った。
駆動系がバラバラなのはパイロットだけでなく整備士にとっても好ましい事ではない。
そんな物を到底使うつもりは無かった。
「だよなぁ……俺も嫌だぜ。こいつ整備すんのは……。ロイス爺さんも文句しか言わなかった。」
「ロイス爺さんが文句言うなら尚更だ。送り返してくれ。俺達からの評価は『使う価値無し』。だ。」
「りょーかい。そう伝えるよ。」
そう言って、ダレスがトラックに乗ろうとした時、突然緊急招集をしらせるサイレンが鳴り響いた。
『緊急招集発令。緊急招集発令。全兵士に継ぐ。直ちに司令部へ集合せよ。繰り返す……』
「おいおい。なんだなんだ?」
「わからん。とにかく、司令部へ行くぞ!全員トラックに乗車!」
レイの支持により、試作機の載ったトラックへ中隊のメンバーと付近にいた兵が飛び乗る。
トラックはそのまま司令部へと向かった。
司令部に着くと、そこには既に殆どの兵が集まって、部隊ごとに点呼をとっていた。
最後の部隊が到着した事が確認されると、司令部の大型モニターに大きなクレーターのような画像が映し出され、副司令官のレイベル・クラウザー少将が出てきた。
「さて、諸君らに集まってもらった理由だが、説明するより目で見た方が早いだろう。モニターを見てくれ。つい数分前、ロシアに突如現れた大穴だ。始めはクレーターのような見た目だったが、どんどん地面が沈んでいき、最終的には500m以上も沈んだ。」
モニターには、地面が沈んでいく様子が映し出されていた。地面が見えなくなってしばらくすると、黒い点のようなものが穴から多数出現した。
「この穴から出てきた点、これを拡大してくれ。」
端末を操作していた副官は、点のように見える物を拡大した。そこには、八足歩行の巨大なアリのような正体不明のニュールが多数映っていた。
「この大穴から出現した多数のニュールは、付近の街を丸ごと1つ飲み込んだ。いまは、それ以上の動きは見られていないが……この穴が世界各地で発見されており、多数の被害が出ている……」
レイベルは深刻そうな顔で、画面を指した。
そこには、ロシア、中国、エジプト、フランスの4カ国が表示されていた。
ネタはあるのですが、書く時間が無い……




