対面
【2020年 6月12日 15:30】
「ようこそ神聖アレンシア帝国へ。私はアレンシア帝国陸軍 中佐のロイク・レイブルです。ここからは王城までは、私がお送りします。」
アレンシア帝国へと降り立ったアメリカ合衆国大統領のレオナルドと補佐官のバーンズ、そして各軍の幹部は、レイブル中佐による案内で飛行場前に用意されていた車に乗り込んだ。
「出迎えありがとう。ここからは王城まではどれくらいかかるのかね?」
レオナルドはレイブルに聞いた。
「王城までは30分程かかります。それまでに、何かご質問等ありましたら、なんなりと。」
「そうかね。それでは遠慮なく聞かせてもらおう。先程私達を襲った怪物。あれがニュールという奴なのか?」
「そうです。ニュールと一概に言っても様々な個体が存在します。最も数が多いのは陸戦型のグラントと呼ばれる個体です。
体長は10m程で、6足歩行で移動します。
先程大統領の乗機を襲ったヘルセイレーンは、地球上で確認されてる中では比較的希少な部類です。グラントやヘルセイレーンの他にも、十数種のニュールが存在します。」
レイブルはニュールについて説明する。
「なるほど。あれだけではないのか……。そのグラントとかいうのは、もう地球上に出没しているのかね?」
「はい。現在はアフガニスタン、イラク、パレスチナと我が国で確認されています。数分前に西の外門前に出現したとの報告があり、現在制圧中です。」
レイブルはサラッと言ったが、今もこの国は攻撃を受けているという。レオナルドとバーンズは驚きを隠せなかった。
「今戦っているのか!?非常事態ではないか!」
「グラント程度であれば日常茶飯事ですから問題ありません。出現したグラントの数も少ないので、あと数分もすれば殲滅出来るでしょう。」
レイブルは問題ないと笑顔で答えた。
「そういうものなのか……しかし、先程からよく軍の戦闘車両を目にするが……ここはもう市街地なのだろう?いつもこれなのかな?」
「ええ。我が国は警察組織が軍の1部ですので、警察車両も軍用車なのです。治安はかなり良いですし、犯罪なんて滅多に起きませんが、歩兵戦闘車が常に市街地を巡回しています。」
この後、幾度かの問答を経て、一行は王城に到着した。
「王城に到着致しました。」
車からでた2人は、王城の大きさと、その美しさに肝を抜かれたような気持ちになった。
「これは……素晴らしい。この世のものとは思えませんな……。」
バーンズは思わず呟いてしまった。
「それでは、玉座の間までご案内いたします。」
レイブル中佐に先導され、一行は玉座の間へと向かった。
王城内の造りはとても美しく、彫刻の入った柱に、鏡のように反射する大理石の床、数多のクリスタルを使用したシャンデリアなど、いかにも皇帝の住まう城。といった雰囲気であった。
「ここが玉座の間になります。」
そこには、重厚な見た目をした高さ5m程の大きな扉があった。
「アメリカ合衆国大統領ブルーム・レオナルド様。並びに、大統領補佐官ロナルド・バーンズ様と、アメリカ軍幹部の方が到着されました!」
レイブルが声を上げると、重い音をたてて扉が開いた。
レオナルドを先頭に一行が入ると、そこには凄まじい光景が広がっていた。
玉座まで一直線に伸びる真紅のカーペット。その両側には、近衛兵と見られる軍服を着た数百名の兵士が整列しており、玉座には放送でも見た豪奢な衣服を纏う初老の男性が鎮座していた。
「ようこそ。神聖アレンシア帝国へ。レオナルド大統領。歓迎するよ。私が神聖アレンシア帝国 皇帝 ドラシエル・エルバート・ハイマンだ。」
大統領一行は皇帝による熱い歓迎を受けた。
「アメリカ合衆国大統領のブルーム・レオナルドです。素晴らしい歓迎を感謝します。ドラシエル・エルバート・ハイマン皇帝陛下。」
レオナルド一行は膝まづいて頭を垂れた。
「頭をあげてくれ。それと、レオナルド大統領。私の事はドラシエルでいい。長ったらしくて言いづらいだろう。」
ドラシエルは笑顔で話しかける。
「はっ。ありがとうございます。して、此度私達をお呼びになった理由をお聞きしてもよろしいですか?」
レオナルドは、なぜ我々を呼んだのかとドラシエルに聞いた。
「その理由に付いては、もうじき着く日本の方々が来てから説明しよう。」
待つこと数分。日本の総理大臣 来栖昭雄と、防衛大臣の真田智仁が現れ、会議が始まった。




