最高最悪再生賛歌
プロローグ
今、死んでいる真っ最中だ。
辺りは真っ暗。記憶に穴がある。
ドーナツみたいな穴じゃなく、
ボロボロのスポンジみたいなたくさんの穴が。
なぜだか知らないが、すぐに思い出しそうだ。
記憶はないけど、なかなかにいい感じの人生だったんだと思う。
喉が引きちぎれれそう。
腕はもう裂けた。
足がザラザラと崩れていく。
遠くで猫がないている。なんだったけ。俺の大切なもの。
終わるだなんて知りたくないけれど、もうすぐ終わるんだろう。
このまま気持ちのいい暗闇の中で、
壊れていくのもいいのかもしれない。
悲しそうな泣き声と嫌みったらしくどこか懐かしい声がする。
「はぁ、またか、君もよく飽きないね」
懐かしい?いや、さっきも聞いた声だ。さっき?いつだ?
「まったく、いい加減に目を覚ませよ」
静かにしてくれよ、丁度いい感じに気持ち良く死ねそうだったんだ。
「君が居なくても、この僕には大した問題じゃないけどさ」
うるさいな、誰だよお前。
「君みたいな奴でも死んだら、悲しむ阿呆がいるんだ」
まって、思い出せそうだ。頭がクラクラする。俺は誰だ?
「世界を救うんだろ?」
俺は、そうか。死んだ訳じゃない。
『最弱の英雄さんよ』
―俺は、死ぬことができない。