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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

恋愛短編シリーズ(作者名サウス・ジュンでの)

鬼神の婚約

作者: サウス・ジュン

「クリス!君との婚約を破棄する!」


うちの王子が馬鹿なことを言い出した。


昼休み、王子に呼び出されて中庭にいくと、何故か王子の他に俺以外の側近達と王子の婚約者のクリス様、そして最近王子にまとわりついてる男爵令嬢がいた。


なんとなく、雰囲気で王子で嫌な予感はしてたけど、まさか婚約破棄を宣言するとは・・・

しかも、中庭のこんなにギャラリーの多いところで・・・


「・・・・理由をお聞きしてよろしいかしら?」


いきなり婚約破棄を告げられたクリス様は静かにそうかえした。

少し手が震えてる気がするが、その表情はあくまでの平然としていた。


「ふん!決まっている。お前が未来の王妃であるラフレを傷つけたからだ!」

「未来の王妃?そもそもラフレとはどなたですか?」

「貴様!あくまでしらを切るか!あれだけのことをラフレにしておいて!」

「ひ、酷いですぅ・・・クリスさん。あれだけのことをしておいてぇ・・・」

「ラフレ。大丈夫だ。俺が必ず守るからな。」

「マージ様ぁ・・・」


・・・なんだこれ?

ここ最近、王子にまとわりついていた男爵令嬢・・・ラフレ?が王子と抱き合って、茶番を演じていた。

さすがのクリス様も呆れているようだ。


「それで?殿下は私という婚約者がありながらそこの令嬢と浮気をしていて、本気になったから私を消そうとしているという認識でよろしいのでしょうか?」

「そ、そんないい方ぁ・・・」

「お黙りなさい。今は私は殿下と話してるんです。」

「ええい!生意気な女め!ラフレ、大丈夫か?」

「ぐすん・・・はぁい。大丈夫ですぅ・・・」

「貴様!よくもラフレをいじめてくれたな!」

「はぁ・・・話が進みませんね。それで?この場が初対面のあなたの浮気相手に私は何をしたのですか?」

「わかってるだろ!ラフレに暴言を吐いたり、周りの連中をけしかけてラフレを孤立させたり、ラフレの私物を壊したり、授業の妨害をしたり、挙げ句の果てにこないだはラフレを階段から突き落としただろ!」


あの馬鹿は何を言ってるのだろう?

おっと、仮にも王子に馬鹿はヤバイか。

でも、ほんとに何を言ってるのだろうか。


「身に覚えがありませんが。」

「あくまでしらを切るか!なら証拠をみせてやる!ダイン!ドバル!リンネル!スワン!それからアレックス!頼んだぞ!」


王子が上げた名前は王子の側近達で、順番に宰相の息子、伯爵家の息子、商人の息子、クリス様の弟、そして、騎士団長の息子である俺が呼ばれた。

俺以外の連中はそれぞれ口々にクリス様に反抗現場をみたと言って、それぞれ責め立てる。


クリス様は平然としてはいたが、その表情はなんとなく悲しげにみえた。


「おい!アレックス!貴様も何か言え!」


俺がクリス様に視線を送っていると、何も言ってないのに気付いた王子が俺にそう言ってきた。

いつの間にか視線は俺に集まる。


つってもな・・・


「殿下。確認ですが、婚約は破棄なさるのですよね?」

「そう言ってるだろ!俺はラフレと結婚する!」

「マージ様ぁ・・・・」


俺はその茶番をスルーするとクリス様の前まで移動する。

俺が近づくと少し警戒したような、でもさっきより悲しそうな表情になるクリス様。

俺はクリス様の前に立つとそっと膝をつき、クリス様の左手をとり、真っ直ぐにクリス様の瞳を見つめた。


「クリス嬢。わたしと結婚してください。」


静まりかえる周囲。

目の前のクリス様は呆気にとられた表情でこちらをみていた。


「こんなタイミングでのプロポーズをお許しください。わたしはあなたが昔から好きでした。殿下の婚約者だから諦めてましたが、殿下が手放すというならわたしにあなたをください。わたしだけをみてください。そして・・・どうかわたしの手をとってください。」

「アレックス様・・・」


俺の告白にクリス様は一瞬迷ったようだが、にっこりと少し赤く頬を染めて手をとってくれた。


「わたしもアレックス様が好きです。是非あなたのお側にいさせてください。」

「・・・・!クリス!」


俺はその返事に思わずクリス様を抱き締めてしまった。

クリス様・・・いや、クリスは驚いたような表情だったが、抵抗はせずにむしろ力を抜いて受け入れてくれた。

ぎゅっ、と力をいれてクリスを抱き締めているとようやくフリーズから復活したのか王子がこちらに声をかけてきた。


「・・・!ええい!アレックス!!貴様は自分が何をしているのかわかっているのか!!!」

「アレックスさん!クリスさんに騙されちゃダメだよぅ。」


みんな口々に目を覚ませだの、ふざけるななどといってくる。

まったく・・・

俺は少し名残惜しくもクリスを腕から解放しる。

離れる瞬間に少し寂しそうな、不安そうなクリスに俺は頭を撫でて微笑みかけてから、王子の方に視線を鋭くして向く。


「見た通りですよ。俺が結婚相手を見つけて愛を伝えただけです。何か問題でも?」

「当たり前だ!そいつは罪人だぞ!」

「おや?もしやさっき言ってたのが罪なのですか?でしたら、それは冤罪なので問題ありませんね。」

「なんだと!」

「まあ、決定的なことを語る前に殿下。質問があります。そこにいる男爵令嬢の嫌がらせはここ半年の出来事ですか?」

「何?」

「質問に答えてください。どうですか?」

「・・・そうだが、だからどうした!」


はぁ・・・と俺は小さくため息をつくと、目の前の王子に誰もがしる“真実”を告げる。


「じゃあ、クリスは関係ありませんね。何故ならここ半年は王妃教育で学園にはほとんど通ってませんから。」

「「「「「はぁ?」」」」」


全員の間抜けな声がハモる。

まったく、自分の元婚約者の居場所すら知らないとは情けない・・・


「ですので、クリスは無関係です。これは全校生徒と王城の者たち、そして、陛下や王妃様もご存じです。」

「な!?そんなことは一言も・・・」

「報告はしてますよ?おそらく殿下が興味ないから聞いてなかっただけで。なんなら周りを確認してみてくださいよ。」


ここ最近の王子は男爵令嬢のことを追いかけ回し、政務への関心がゼロだから聞きのがしていたのだろう。

周囲の空気があからさまに呆れているとわかったのだろう。

王子はさらに顔を真っ赤にして憤慨してしまった。


「黙れ!貴様も私を愚弄するか!!ええい、こいつらを捕らえよ!」


王子がそう言うと、辺りに隠れていた王子の私兵が飛び出してきた。

俺とクリスを囲むように辺りにいる複数の男たちに、少し怯えたようなクリス。

俺は安心させるように笑顔で言った。


「大丈夫だよ。君は俺が守るから。」


そう言った途端に飛び掛かってくる男たち。

周りからあがる悲鳴。


しかし、俺は慌てず騒がずに、クリスを横抱きに抱えると大きく跳躍した。


「「「な!?」」」


いきなり目の前から消えた俺とクリスに男たちは驚きの声をあげる。

俺は余裕をもって距離をとるとギャラリーの中にいたクリスの親友の前にクリスをおろした。


「すまない。一瞬だけクリスを頼んだ。」


驚いたようなクリスの親友に任せて俺は男たちへと突撃する。

男たちも俺が迫ってくるのに気づくとどこからか剣やナイフを抜くと構えた。

いちばん近くにいた男が剣で俺に斬りかかってきた。


「アレックス様!?」


後ろからクリスの必死な声が聞こえてくる。

剣が俺に当たりそうになるがーー


「ぐぼ!」

「「「なっ!」」」

「えっ・・・・」


驚きの声があがる。

地面に倒れたのは俺ではなく、斬りかかってきた男だ。

俺は相手の剣を特別な素材でできた靴で蹴りあげてそそままかかとおとしを見事に決めた。


相手は白目をむいて倒れており、それをみて他のメンバーも襲ってくる。


俺は落ち着いてすべての攻撃をさばき、それぞれに死なない程度に意識を奪って眠らせる。

そこそこ力をこめて殴ったりしたので、いくら王子の私兵でもしばらくは起きないだろう。


全員をダウンさせて、俺は王子へと視線をむける。

王子と側近連中は今の流れをみて顔を真っ青にしていた。

そして、男爵令嬢はというと・・・


「すごいですぅ。やっぱりアレックスさんは強いんですねぇ。見惚れましたぁ。」


そう言って甘えた声をだしてこちらにすり寄ってきた。

こちらに近づいてくるのを俺は無言でかわして王子へと足をすすめる。


目の前にたつと怯えたよう王子たち。

それでも、悔しいのかこちらを睨み付けてきた。


「ば、化け物め!おい、アレックス!貴様俺の側近なのにこんなことをしてタダですむと思うのか!」

「化け物ねぇ・・・」


にやりとその台詞に思わず笑みを浮かべてしまう。


「ああ、そうそう。殿下。俺は今は殿下の側近ではありませんよ?」

「はぁ?」


その言葉にポカンとする王子。

クスクスと俺は笑いながら説明をする。


「1年前におきた戦争から俺は殿下の側近を外れてましてね、今は特別部隊の部隊長を任されております。」

「特別部隊だと?」

「ええ。聞いたことないですか?国王陛下直属の特別部隊。通称、《メビウス》。」

「なっ・・・・!メビウスだと!?まさか・・・お前があの『鬼神』なのか!?」

「その名前も知ってましたか。」


俺は一年前の戦争で前線にたち、多くの敵国の兵を倒した。

英雄として祭り上げられ、その戦う姿からいつの間にか『鬼神』という二つ名で呼ばれるようになってしまった。

と、まあそれはさておき・・・


「俺は国王陛下と王妃様にここ半年ほど、とある任務を言い渡されていました。それは、あなたの見極めです。最近のあなたの行動が目に余るので、次期王太子候補として相応しいかどうかを側近のふりをして見極めろと言われていました。男爵令嬢との噂は陛下も耳にしていたみたいですからね。結果は・・・この状況から言わなくても分かるでしょう。」


王子はその俺の台詞に真っ青になり膝から崩れ落ちた。

俺はそれをスルーして他の側近たちに目を向ける。


「お前たちも側近として見極めさせてもらった。ここ最近、側近としての仕事の放棄に、側近として王子を諌めるどころか逆に煽って・・・結果は勿論全員不合格。お前たちの処分は家で下されるだろうが、良くても日蔭の生活になるだろう。」


そう言うと真っ青になる側近たち。


俺はことの成り行きを見守ってた警備の兵に声をかける。


「王子と側近たちを拘束して運べ。陛下からのお許しはでてる。」


王子と側近たちを捕縛する警備兵。

それを見届けた後で、うしろに固まっている男爵令嬢に俺はにっこりと笑いかける。

俺にスルーされて固まっていた男爵令嬢はそれをみて笑顔を浮かべてこちらによってきた。

それをみて俺は・・・


「ああ、それと、君には国家反逆罪の容疑があるから同行してね。警備兵。これも護送して。」


そう言うと暴れる男爵令嬢を連れていく警備兵。

去り際に男爵令嬢が、「こんなの知らないわよ!完全に逆ハールートだったのにぃ!」と叫んでいたが、頭のネジが飛んでるようだった。


「アレックス様!」


それを見届けていると、ギャラリーから急いでこちらにかけてくる人物が一人・・・そう、クリスだ。


慌ててかけてくるクリスは途中で躓いて転びそうになるが、俺はすぐに側により支えた。


「クリス。大丈夫?」

「は、はい。ありがとうございます・・・って!それより、大丈夫ですか、アレックス様!」


腕のなかのクリスは心配そうにこちらをみていた。

俺はそんなクリスの態度を嬉しく思いながらも安心させるように微笑んだ。


「大丈夫だよ。見てたでしょ?殿下の言ってた通り、化け間みたいな力があるからね。」

「違います!」


和ませるように言った台詞を思いがけず否定されてしまった。

クリスは泣きそうな表情を浮かべていた。


「アレックス様は人間です!わたしの大切な人なんです!そんなこと言わないでください!わ、わたしがどれだけ心配したと・・・」

「クリス・・・」

「アレックス様はお強いです。でも、心配なんです。だから・・・心配させないでください。アレックス様にもしものことがあったらわたしは・・・」


ぎゅっと強く抱きついてくるクリス。

いつの間にか俺は力を付けすぎて最近は言われたことがない心配という言葉。

俺は不謹慎ながらも、クリスの台詞が嬉しかった。

そして、同時にこんな心配をクリスにかけた自分に腹が立つ。


「クリス。」


優しく声をかける。

顔をあげてこちらをみたクリスは目に涙がたまっていた。

俺はそれを手でぬぐいながら、笑顔を浮かべた。


「心配してくれてありがとう。あと、心配かけてごめん。約束するよ。俺はもう、クリスに心配かけるようなことはしない。絶対に生きてクリスを守るよ。だから・・・」


俺はクリスに真剣な表情で言った。


「愛してるよ。ずっと側にいてくれ。クリス。」

「アレックス様・・・」


クリスは俺の台詞に顔を赤くしてから、笑顔を浮かべた。


「私も・・・愛してます。ずっとお側にいさせてください。」

「クリス・・・」

「アレックス様・・・」


互いの顔が近づき、そして、俺とクリスはキスをした。






その後のことを簡単に話そうと思う。


まず、側近たちはそれぞれ家で厳しい処分がされて、表舞台からは消えた。


次に、王子だが、離れの塔での飼い殺しになったらしい。

王位継承権は当然剥奪で、これからはひっそりと生きていくことだろう。


問題の男爵令嬢は、どうやら親が他国のスパイで色々やってた挙げ句に本人も自作自演の嫌がらせでクリスに冤罪をかけたことで、処刑になったらしい。


そして、俺とクリスは・・・



「どうかしら?アレックス。」


俺の目の前にはウェディングドレスに身を包んだ俺の花嫁・・・クリスが立っていた。

あまりの美しさに息をのんで見惚れてしまう。


「アレックス?」


不安そうなクリス。

俺は意識を戻すとすぐに側によって声をかける。



「ごめん。見惚れてた。綺麗だよ。クリス。流石は俺の花嫁だよ。」

「ふふ・・・ありがとう。」


笑顔を浮かべるクリス。


あれから、俺とクリスはすぐに婚約をして、学校を卒業して半年後の今日、結婚式をあげていた。


俺とクリスの結婚は様々な人に祝福されて行われている。

クリスの両親や兄妹、俺の家族、そして、友人はは特に祝ってくれた。


俺とクリスは誓いの言葉をたてて、キスをする。


「クリス。」

「なに?」

「愛してるよ。」

「私もよ。」


その後、クリスとの間に可愛い子供ができても、ますます俺とクリスの愛は深まって幸せに一生を終えられた。


ーー鬼神と呼ばれた英雄は妻と幸せだったーー

お読みいただきありがとうございます。

婚約破棄ものでした。


少し補足をすると・・・


主人公は本来は攻略キャラなのですが、ゲームよりハイスペックでなおかつ、本来はなかった悪役令嬢のクリスへの恋心があったので、ゲームとは違う人間になりました。


クリスは、本来は王子にベタぼれのはずが、辛辣な王子のフォローをいつもしてくれる主人公に惹かれてしまい、そうはならなかった。

主人公が好きだが、婚約者がいて諦めていた。

なので、婚約破棄した後で主人公との婚約は実は舞い上がるほどうれしく、家族や侍女の前で惚気ていた。


ヒロインについては、前世の記憶持ちでゲームの知識があり、逆ハーを目指してた。

主人公にもアプローチはかけていたが、てきとーな愛想笑いでスルーされており、それをみて攻略は順調だと思っていた。


さて、大まかにはこんな感じです。

評判しだいでは別視点か続きを書きたいですが、個人的には主人公とクリスのイチャイチャの糖分が高めの話を書きたいですねww


さて、ひとまずはここまで。

ではまたm(__)m

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― 新着の感想 ―
[一言] 誤字報告です。 >反抗現場
[良い点] 男主人公視線のざまぁは貴重だし爽快 戦闘シーンがあるのもいい 面白かったです [気になる点] クリスの弟がクリスが王太妃教育で半年学校にろくに通って無いのを知らない部分 騎士団団長の長男…
2018/03/13 17:36 退会済み
管理
[気になる点] クリスがアレックスを心配する所でクリスにアレックスが「化け物みたいな」って説明している所が「化け間みたいな」になっていますよ。 あと、ラストの地の文で「クリスの両親や兄妹、俺の家族、友…
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