〈二〉
今から二年前、人と魔族との間で散発的な衝突が起こってはいたが今年に入り人間側による大規模な軍事進行が開始された。初代魔皇帝時代に奪われた西部(魔族側からは東部)地域を奪還するためだ。人間側は帝国と連邦国家が覇権争いを行なっていたが、飢饉による土地の弱体化で両国ともに疲弊していた。豊かな土地を求めるがゆえの奪還作戦である。そうでもなければ魔族領に手は出さないのだ。 ーー表向きは。
本来、帝国側は連邦国家との戦争に近々停戦条約を持ちかけるつもりだった。魔族に対する兵器の開発に成功したからである。何年もの間対魔族兵器の開発に大量の金と血を注いだ結果、出来たのが魔導師である。人間には魔力が少なく、魔法は使え無い。それが使えるようになったのだから。
連邦・帝国連合軍前線基地近くの野営地
「イブ、たまには一緒に食事をどうだ。本当は一人で寂しいだろ。」
「もう食べた。それと寂しくない。」
「いや、それは無い無い。今配り始めたんだぞ。
まさか携帯食料じゃないよな?」
「違う。...もう寝たいんだけど。」
イブが所属するのはアッシュ大将率いる第三軍隊で、今イブのいる天幕に来たのは同部隊のリシア中尉。ちなみにイブは少尉である。
イブが帝国に来たのは今から二年前で、リシア中尉とはその時からの仲である。
当時、運悪く魔族の襲撃を受けたヨシュア師団長ーー散発的だが同じ帝国の人間が一方的にやられていたので近隣の村の避難誘導をしていたーー率いる一隊の窮地を救ったのがイブで、その時の礼として帝国に迎えいれた。が、人の虹彩は黒か茶色しかないので魔族(実際は半分そうなのだが)に間違われ、一時王宮内は混乱に陥った。
ヨシュア師団長一向の口添えにより事態は収集したが、イブの存在の保証等と引き換えに対魔族兵器開発のサンプルにされた。
すでに幾人かの魔族(衰弱した個体)が地下に幽閉されており、研究は進んでいたが完成には程遠かったが、イブの証言により一年後に完成した。
実はノエルがそうなるように仕向けたのだが.....
一方、イブはというと。ヨシュアのもとで軍規や帝国の歴史、世界情勢等を学び、リシアと共にアッシュ隊に入隊した。
「おはよう、イブ。今日も早いな。」
「日の出前に起きるのが習慣だからね。それに今日でしょ、本格的に仕掛けるの。フフッ、楽しくていつもより早く起きちゃった♪」
「...魔族を根絶やしにしたいか。どんな理由かはしらないが、みんなの前でそんな顔するな。それじゃあまるで...」
ーー魔族みたい。
そう言おうとしたが言葉が出ない。皆が遠巻きにしか見ない中リシアだけはイブの近くにいたが、そのリシアでさえもが初めて見た表情だった。
それは人では無く、闘うことに歓喜し恍惚の笑みを浮かべた魔族の顔だった。
(アハハハ、待っててねノエル。すぐに殺しに行ってあげるね♪ そしてあなたのことをいつも感じるこの体を燃やしてすぐにそっちに行くからね)
イブ・アスカロン
髪はべリーショートの黒髪、目は左が黄色で右が赤、背は165㎝ほど、スレンダー
言葉使いはみんなタメ口(ヨショアやリシアは直そうと試みたが効果は無かった)
全ての武器が扱え、闘う時は武器に雷を纏わせている 炎属性の魔法も使えるがあの時のことが原因で扱いたくない
自分の姓だけは伏せている
リシア・チェグス
髪はポニテの金色、目は黒色
背は170㎝ほど、スレンダー
第一軍隊率いるアルフ・チェグスの娘でチェグス家の次女
チェグス家は代々帝国に仕える騎士の家系
イブの唯一の親友
ヨシュア・レオナルド
髪は銀色、目は黒色、背は176㎝ほど
着痩せするタイプだがかなりの筋肉質
イブに窮地を救くわれ自ら教育係りをかってでた
母親似
今は第二軍隊大将の地位が与えられている
アッシュ・レオナルド
髪は黒色、目は黒色
背は184㎝ほど、かなりの巨体
ヨシュアの父 第三軍隊大将