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Make a Splash!!  作者: 橘 結城
4/4

小さな水しぶき4

「さー今日は凛ちゃんの実技勉強の第一回目になります」

気を取り直してのカンナの言葉だった。


日曜日の昼、学校の横にある池にての部活動であった。

あれから座学とキャスト練習を繰り返し、なんとかワームを触れるまでにも成長した。


「スピニング使うんだからワームぐらい使ってよ」はカンナの言葉だ。


朝から始める釣りが昼になったのにはわけがあった。


まず4人が揃わなかった。

カンナの寝坊、凛の服選び、時雨の単独行動。真面目に着いて待っていたのは瑞樹だけであった。



「まあーみんなまとまって釣りもいいんだけど、そんなに大きな池でもないし、折角だから2人に分かれて釣りにすることにしましょうか?」

カンナの提案に合意を得て、


「じゃあ俺は詠先輩と組みましょうか?」

瑞樹の組み合わせ案にカンナは少し考え、


「今回は凛ちゃんもいるしなんかあれば男ではあった方がいいでしょ?だから秋友は凛ちゃんと組んで。私は時雨と組むから」


合理的な案に3人は納得して分かれることになった。



「今日はよろしくな、春宮」

「うん!よろしく!」


二人はポイントを目指して歩き出した。

後ろにはそそくさと歩く時雨に文句を言いながら着いて行くカンナの組が遠ざかっていた。別のポイントみたいだ。



「まあ釣りやすい場所には案内できるとは思う。でも釣れるとは限らないいんだけどな」

笑いながら言う瑞樹に凛は頷いた。


「期待してる!」






ーーーーー「とりあえずここにするか」

ポイントに着いた。

定番の水門である。どの池にも存在して安定した釣果がある。引っかかる物も少なく、水の流れもあるので魚もいたりする。


「今回はワーム一本に絞ってみるか」

瑞樹からこれがいいだろうと4インチサイズのスティックベイトを勧められた。そのまま針だけのところにフルフルと装着した所謂ノーシンカーリグだ。


「春宮は初めてだしまだアクション、操作や動かし方な。それがわからないだろうからそのままでもいい動きするやつなんだ。まずは落ちる時にどんな動き方するかや流れにのった時の動きを把握してもらいたい」

親身にアドバイスを出す瑞樹に凛は嬉しかった。


「ありがとう。やってみる」


何度かキャストを繰り返した。

「今のいい場所だな」「うまいぞ春宮」

瑞樹は自分はキャストせずに凛のサポートをしていた。



ーーーーーーなかなか反応はなかった。

到着してから1時間が経過していた。


「きびしいなー」

休憩をはさみ、瑞樹は考えていた。

なんとか初心者に釣ってもらいたいと思うのが釣り人の性だと思う。


しばらく考えて、

「ちょっと移動するか?キャストも上手くなってるし」

凛も同意して移動した。



「じゃあ次はここかな」


少し歩き、木が水面まで伸びている場所に着いた。


「ここは引っかかる可能性があるから注意が必要なんだけどな。でも木の下とか人からも見えにくいしそこに魚が着いてたりするんだ。魚の休息場所」


今回もワームのセレクトをしてくれた。ストレートワームの真ん中に針をちょん掛けするワッキーリグだ。


瑞樹にあの辺りに投げてみてとのアドバイスにやってみると頷き凛はキャストした。


「えいっ」

力んでしまった。引っかかっては駄目だというプレッシャーに負けてしまった。


「あ!どうしよ・・・」

落ち込む凛に瑞樹は横からタックルを優しくとり、


「これぐらいなら大丈夫。安心しろよ」

ロッドを立てて、木の枝から丁寧にワームをかわしながら水面に落とした。


「な!大丈夫だろ?」

瑞樹は凛にタックルを渡した。


「うん!ありがとう!」

満面の笑顔の凛はタックルを受け取った。



「水中では竿を立てて、ちょいちょいと動かしてやるんだ。するとミミズみたいにクネクネと動くんだよ」

つききりでアドバイスをしていた。


「秋友くん?釣りしなくて大丈夫なの?」

凛は申し訳なく尋ねた。瑞樹はサポートに徹してアクションを教えるために2投しかしてなかった。


「春宮が釣ってからで全然大丈夫!たぶんそこも考えての組み合わせだろうし」

瑞樹は笑って答えた。

確かに時雨なら黙々投げるだろう。軽いアドバイスもするだろうが・・・


「ホントに・・・ありがとう・・」

凛は答えた。


「釣ってからでいいよ、お礼なんて」


瑞樹が笑顔で答えた瞬間に凛の竿に違和感が現れた。


クッククン

糸が引っ張られる感触、水面に続くラインは不規則な動きと始めた。


「なんかかかったみたい・・・」


「マジ!!とりあえず落ち着いて」

凛はあわてだした。はじめての感触。どうすればいいかと言うのも教えてもらったしかし頭は真っ白だ。


「えっとえっと??どどどどどうしたらよかったっけ・・・」

パニックだ。

ドラグがジジジと糸を出していく。


「少し糸を送った状態して・・・・今だ!!竿を勢いよく立てて!!」

瑞樹の声にハッとして教えてもらったことを思い出した。


魚がかかったら余分な糸とり、一気に竿を立てて針を魚の口に刺す。フッキングと言う技術だ。

この時に「フィッシュ!」と言うのがカンナの教え方だったが、これは後の二人に否定されていた。



グイッとフッキングをして魚とのバトルになった。


今まで以上に手元に負荷が表れた。魚も必死である。針を外そうと右へ左と動き出した。


その度に糸が少しずつ出て行く。


「いいぞ。ゆっくり糸を回収して!そう、いい感じだ。無理しない程度な」


瑞樹の声援とアドバイスを聞きながらゆっくりハンドルを回した。


リールは負荷を感じながらもラインを回収していく。りんも必死である。


ある程度回収して魚は近づいてくる。数メートルまで近づいた時、糸が上に走った。


バシャッバシャ


エラ洗いだ。

水面で魚が飛んだ首を振り、水しぶきをあげた。


「はう!」


と凛が声を出したが、凛はしっかりと糸を張り続けた。


針が外れることはなく、なんとか近くまで寄せることが出来た。


瑞樹はすぐに体を屈み、水中に手を突っ込んだ。


「掴んだ!」

その言葉と同時に魚を水面から取り出した。


魚を持ったまま凛に近づき、

「おめでとう!春宮のファーストフィッシュだ」

瑞樹は笑顔で魚を上げた。


凛は感極まって涙があふれていた。

瑞樹はそんな凛を見て、頭を掻きながらもう一度「おめでとう」といった。




「うん!ありがとう」




涙が出ながらも一杯の笑顔であった。




20cmちょいのブラックバスであったが凛にとってはそれが小さくとも大きな水しぶきであった。






その後は瑞樹から恐る恐る魚を手渡され写真を撮って、その手で逃がした。


写真はすぐにカンナに送り、休憩を取った。


返信があり、合流をして喜びを分かち合い、4人で釣りをして終了になった。



「今日はお疲れ様でした。凛ちゃんも釣れて満足な部活動でした」

カンナがしめている。


「てことで最後に4人で記念写真とって終わりにしましょうか?」


「はい!」

と凛が答えて、2人も合意した。


4人集まり、カシャと写真を撮った。




疑似餌同好会4人にとってのすばらしい思い出の記念写真であった

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