小さな水しぶき3
チャイムがなり放課後になった。
部活いこっかー。
さぁ帰ろ!どっか寄ってく?
あーだりっぼちぼちテストかよ・・・
クラスは今日の鬱憤や今からの行動の楽しみで各々が話していた。
「部活・・・行かないとだめだよね・・・」
そんな中一人だけ憂鬱になっている凛がいた。
「あれー?りん部活はいったん?」
「えぇぇ!凛、うちたちが部活誘ってもこなかったやん?」
凛の言葉に友人2人が問いただす。
「昨日なんか無理矢理というか、なし崩しというか、なんというか」
「それ大丈夫なん?あんたお人好しと言うか騙されやすいんだから」
「悪い人ではないと思う」
「ちなみにーりんは何部はいったん?」
凛は一呼吸あけ、
「疑似餌同好会・・・・」
友人二人は顔を合わせ怪訝な表情をしている。これが普通の反応だ。
「釣りの同好会みたい。名前の由来は部長の考えだって」
「名前も置いとけないけど、あんた釣りしたことないやん」
「わたしもりんからそんなの聞いたことないー」
「釣りなんてしたことない・・・
でもなんか必死だったていうか、真剣だったていうか・・・私が妥協で入るってなったら凄い嬉しそうで・・・
あんなに喜んでもらえたことあったかな。。。」
凛の口元から笑みがこぼれ、顔いっぱいに笑顔になり、
「だから行ってみる!」
「凛、あんたが良いならうちはそれでいいわ」
「わたしもー」
二人は安心し、
「じゃあうちら自分らの部活行こっか?」
3人は笑顔を合わせて、それぞれの場所に向かっていった。
ガラガラッ
「遅くなりました」
謝罪の言葉を述べ中に入った
「よかった~ちゃんと来てくれた!来なかったらどうしようと少し思っちゃった」
「おつかれー春宮」
中には安心したカンナと瑞樹がいた。時雨の姿はなかった。
笑顔でカンナと瑞樹に挨拶をしていない時雨の事を尋ねた。
「あいつは先に釣り行くって。安心して待ってろって。たまにかっこよかったり・・なんでもない」
赤面したカンナにふふっと瑞樹は笑った。
「先輩は来ると信じて釣りにいったんだよ。俺も信じてたけどね」
瑞樹はそう言って凛に笑顔を向けた。
疑いなんてこれっぽっちもない笑顔に凛は照れてしまった後、罪悪感に苛まれた。
「私、実は少し考えたんです。行かないでおこうかって。でもあんなに入部しただけであんなに喜んでくれて・・だから・・」
カンナは落ち込んだ凛のそばに寄り、
「でも来てくれたじゃない?私はそれが嬉しかった。それに私も疑ってたわけだし、だからごめんね。」
凛は涙目のまま、
「ごめんなさい・・・ありがとうございます・・・」
一息つき、
「で、今日は初心者の凛ちゃんのために釣り講座をします」
カンナは今日の活動内容を告げた。
瑞樹がホワイトボードをどこから出してきて、カンナは釣り道具を出してきた。
「まず道具説明!まず竿ね!これは釣り業界ではロッドて言うの。で、糸を収納する機械がリール。どちらもベイトとスピニングって言うのが主流であって、初心者は使いやすいスピニング、中級者からベイトって言うのが一般的な考えみたいね!昨日プレゼントしたのはスピニングリールよ」
凛は真面目にメモをとり、瑞樹はせっせとアシスタントをしている。
「スピニングリールの特徴は細い糸使いやすく小さいルアーから多少大きいのまで使えるわ。香川では海でも淡水でもよく使われているみたい。ロッドの性能にも左右されるけどね」
「ベイトリールはスピニングより太い糸を使うことが多いわ。中級サイズからマグナムサイズまで物の性能である程度使えるの。カスタム機や専用機と言うのを使えばスピニングみたいな小さいのも使えたり、でも値段も高価だからなかなか私たち高校生にはね・・・」
遠い目をしながら言ったカンナの横で、
「でも詠先輩は持ってましたよね?ベイトフィネス」
瑞樹がカンナに質問を入れた。
「あいつは馬鹿だから」一言だった。
「凛ちゃん質問は?」
ホワイトボードは一つ一つ箇条書きでわかりやすく書かれていた。その内容に理解を求めた。
「えーっと、なんとなくわかりましたけど、じゃあなんでベイトは中級者からなんですか?専用機でも小さいのも使えるし、何でも使えるみたいですし高価なのはありますけど」
カンナはその一言に待ってましたと言わんばかりに、
「ベイトは糸が出て行く時に『バックラッシュ』ってトラブルが起こるのよ。出て行く糸と出て行こうとする糸の違いによってね。例えて言えばトイレットペーパーはおもいっきり引っ張ったらグルグルって回転してモコモコてなる感じで糸がクシャクシャになるのよねー」
瑞樹と凛はその例えに頭を傾けている。
カンナはコホンと一息つき
「まぁこれを未然に防ぐための技術を『サミング』ていって糸が巻かれている部分『スプール』を過剰回転しないように指で押さえたりするの!スピニングにも同じようなトラブルはあるけどそこまで頻繁にはおこらないから」
なるほどと凛はリールを触りながら理解している。
「次に糸を『ライン』て言って種類は大まかに3種類。
ナイロンライン、これはしなやかで伸びがあって比較的安価なの。ただ欠点は水を吸いやすく痛みやすいかったり、
次はフロロカーボンライン、張りがあって糸が擦れても傷つきにくいの。少し高価で折れとかに弱かったりするのよ。私や他のみんなもこれをよく使ってるわ。
で最後にPEライン、ポリエチレンて繊維を編みこんだ糸よ。値段は他の二つより高かったりするけど、その分日持ちもするし、同じ太さでも引っ張られても切れない強さが3~4倍はあったりするの。でも擦れに弱かったり全然伸びなかったりとメリットとデメリットがはっきりしたラインとこれらのし種類があったり」
糸は釣りの命綱。カンナはそこを踏まえてしっかりと説明した。
「では今日の最後!ルアーね」
さすがに疲れていた。必死に説明するカンナ、あくせくアシストする瑞樹、懸命に理解しようとする凛、一人いない時雨・・・
「これはおもに2種類ハードルアーの『プラグ』とソフトルアーの『ワーム』ね」
「たぶん普通に思い浮かぶのが魚の形を模したプラグね。魚をメインにいろいろな生き物を模した硬いルアー、値段もそれなりにして壊れにくいって特徴、
で次にワーム」
と凛に手渡ししたときに凛は勢いよく後ずさった。
瑞樹はそれに察して、
「部長、それはびっくりしますよ!」
「えーーー私は平気なのにー」
「そりゃあ部長は慣れてますから。普通はこうなります」
瑞樹が受け取り、凛に偽ものである事伝えて、手渡さずに自分の手のひらに乗せて説明した。
「これがソフトルアー、通称『ワーム』だ。虫や爬虫類に模した形で、一番魚が餌と思い込んで食いつく。柔かったりするから余計に女の子には嫌がられたりするかもな」
瑞樹は最後に笑って説明を終えた。
後ろでは、
「私は女の子でないってか?」
と不貞腐れている。
「まあこれでざっとした道具の説明は終わりね。後はまた釣り場に行って説明するわ」
カンナが最後を締めて部活動を終了した。
空もほんのり薄暗くなっていた。
3人はどこからか出したホワイトボードなどの片付けを終わらせ、3人で帰路に着いた。
時雨を忘れたまま・・・・