小さな水しぶき2
「あの~言ってる意味がわからないんですけど?」
「今書いてもらったのが入部届けになります!」
「いやっ入部するなんて言ってないですし、それって卑怯じゃないですか」
「だって・・・正式に入って!って頼んでも入ってくれないのよ、1人を除いて・・・疑似餌同好会怪しいみたいで」
カンナは遠い目をしながら落ち込んでいる。
(じゃあやっぱり変な名前つけなければいいのに・・・)
怒りを通り越して呆れているが、ここは敢えて言ってはならないと凛は心のうちにしまっておいた。
「でもやっぱりこんな卑怯なやりかたしなくても!お礼だなんて口実で無理矢理入部させるのはよくないと思います。ちゃんと言ってくれれば少しでも話は聞きます」
「ごめんなさい、反省します。少しでも部員増やそうとして躍起になってたみたい・・・でもお礼はちゃんとするつもり!」
カンナは立ち上がり、棚の横から長い棒を取り出した。
「これ、釣りの道具!これをあげる。私のサブのサブタックルで使わないし、釣り初心者が入部したときに使ってもらおうと思ってたから
!だからついでに入部してみない?」
ほんとに反省しているのだろうか疑問に思ってくる。
「だからホンッッッットにお願い!友達からも断られてあなたしかいないの!!」
カンナは両膝をつき、おでこを地面につけた。さすがのこの行為には時雨も驚いている。
「あの、やめてください。そんな事されても困ります・・・私釣りに興味なんてないですし・・・」
「大丈夫。うちは初心者、未経験者大募集!だからお願い!!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・わかりましっ」
「ありがとーーーーーーーー」
凛の答えを完全に聞かず、カンナは凛に飛びつき、うれしさから凛に抱きつき飛び跳ねていた。
時雨も呆れた顔を見せつつ、カンナの喜んだ姿を見て、笑顔がこぼれていた。
「では改めて、部長?会長?の夏目カンナよ。でこいつが副のって今度は自分から挨拶しなさいよ!」
時雨を指差し挨拶を促した。
「2年の詠 時雨だ。すまんなこいつが」
初めて言葉を発した時雨に驚きつつも、意外に常識あることを言ったのでまたそこで驚いていた。大変失礼である。
「いえ、なんか無理矢理感はありましたけど、よろしくお願いします」
時雨と挨拶をすませたところに、後ろの扉が開いた。
「あれ、どうしたんですか?その子?」
部室に入ったきた男子生徒は最初にそう言葉を発した。
「ちょうどいいタイミングよ秋友!彼女が新入部員の凛ちゃんよ」
「なるほど、部員増えたんですね。よろしく、春宮。俺は秋友 瑞樹1年」
瑞樹が差し出した手に少しびっくりしながら凛は手を重ねて握手をした。
「いっ1年の春宮 凛です。よろしく。秋友くん」
凛がびっくりしたのは普通に女子に握手を求めたからではなく、顔立ちが整っていたからだ。身長も高く、言葉使いも安心できるしゃべり方だった」
「さぁて、自己紹介も済んだところで私は入部届けを先生のとこに持って行って帰るわ。」
「凛ちゃんも今日は解散にしよっか?」
「じゃあ僕たちもボチボチ行きますか?詠先輩」
瑞樹の提案に時雨は頷くと、二人は奥よりタックルを取り出していた。
「では僕たちは隣の池で1時間だけやって帰ります。春宮は遅いしまた今度にしよう」
カンナに活動報告をし、凛の疲れを察しての言葉だった。
時雨はテーブルの丸い物体、リールをロッドに装着していた。
「そう、一緒に帰ろっか?凛ちゃん。遅くなっちゃったし」
凛の同意すると、二人は「じゃあ!」と出て行った。
「ボチボチアフターですかね」との瑞樹の問いに時雨は首をかしげていた。仲は良いみたいだ。
凛はその後、顧問を紹介されカンナと帰路についた。
凛と疑似餌同好会メンバーとの最初の疲れた一日だった。