名字戦国時代
ある日の事。いかにも偉そうな椅子に佐藤が座っていると、扉を開けて、書類を持った佐藤が入ってきた。
「佐藤様。今日の報告に参りました。」
「もうそんな時間か、話せ。」
「はい。西日本では、今日も、田中から改名するものが、増加しているとのこと。東日本では、昨日一昨日と続いて、特に何もありません。鈴木、高橋も今は落ち着いています。」
「ふむ・・・そうか。平和なのはいいことだが・・・」
その時、扉が勢いよく開かれ、息を切らしながら佐藤が飛び込んできた。
「佐藤様!、大変です!!」
「どうした?」
「つい先ほど、鈴木から、即刻改名しなければ戦争を仕掛ける、との旨が」
「なに!?。佐藤、どういうことだ?」
「「はい」」
「いや、あの・・今伝えに来た方の佐藤よ、それは本当か。」
「本当でございます。」
佐藤は頭を悩ませた、数では鈴木に勝っている。だが、最近若者の佐藤の名字離れが深刻で、佐藤には若者が少ないのだ。
「なぜだ、鈴木も佐藤と同じ現状のはず・・・」
また、扉が開き別の佐藤が息を切らして来た。
「佐藤様、鈴木は、若者に人気のある名字に働きかけ、同盟を結んでいるようです。」
「なに!?、それは、ええと、・・二番目に伝えてきた佐藤、本当か。」
「本当です、かなりの名字と同盟を結んでいるらしく、数もあちらが上です。」
佐藤はさらに頭を悩ませた。数でも劣っているのではどうしようもないではないか。
「もはや、改名しかないのか・・・」
「佐藤様!諦めてはなりませぬ!」
「では、どうしろというのだ、佐藤」
「「「はいっ」」」
「ああ、いや、だから・・・ああもう、そもそも、名前が無いのがいけんのだ!こうなったら、皆に名前をつけてやる!!」
「なっ、佐藤様!それだけは、それだけは佐藤様でもゆるせませぬ!」
かくして、佐藤は内部崩壊し鈴木に吸収されたが、同じような混乱が、鈴木含む各名字で起き。やはり名前は必要とのことで、つけられるようになったのである。