第2章 第2話 しなければいけない事
いや~、気付いたら1年も放置していたという恐ろしさ。
マジぱねぇっす。
これがスランプ……恐ろしい(汗)
いや、スランプじゃなくて、忙しかったのですよ、この一年。
特にお仕事とか、お仕事とか、お仕事とか……。
まぁ、放置しちゃったのは問題ですよね。今回はリハビリってことで文字数少なめ。
と言うか、キリがいいところがここだった……ってだけかも?
まあ、そんな感じで、一年ぶりの更新をよろしくお願いします。
朝食が終わるとみんなそれぞれ食堂を出て行く。
ハルマー先生は自宅に帰ると申し出て、アンガースさんは送りますと追随して出て行った。
「ボクもお見送りしなくちゃいけないんじゃないかな?」
「あら? どうして?」
カルティナさんがにっこりと微笑んで、茶器を手に取り、口にする。
「だって……ハルマー先生はボクのためにここに呼ばれたんでしょ? だったら見送るのは礼儀じゃ……」
カルティナさんがため息をひとつして、ボクの右の太ももを撫で――。
「いっ……ぅっ……」
酷い激痛が右太ももから身体中に走り回って、思わず大声を上げそうになって唇を噛む。
「さっき、右足引き摺ってたでしょう? ばれないとでも思った? これでも、医師資格も持ってるんですから、所作で分かります」
指摘された通り、確かにさっきここまで歩いて来た時に右足が痛くて我慢してた。でも、我慢してばれないくらいに平静としていたつもりだったのに……。
「痛み止めが切れてるのね。ここまで歩いてくるのも相当苦労したでしょう? どうして素直に『痛いです、歩けません』と言わなかったの?」
少しキツめの表情をして、カルティナさんがボクを真っ直ぐ見つめる。
「……これ以上迷惑かけたくなかったから……」
「あのね~? アリシアちゃん。医者や薬師にとっては患者が早く快方に向かうことが喜びなの。無理したり、我慢したりで悪化されると悲しいのよ?」
「は……はぃ……」
「だから! これからは痛かったらすぐ痛いって言いなさい。わかった?」
「……わかりました」
「よろしい! それじゃあ、ハルマー先生には、身体が良くなったら改めてご挨拶しましょう」
いいですね? と優しく言い聞かせるように言うカルティナさんに頷く。
「うん、わかった。ボクの体、きちんと治したらお礼をする!」
「よしよし~。それじゃあ、私たちは私たちでやらなくちゃいけないことをしましょうか? パリッシュ、お願いね?」
「はい、奥さま」
「それじゃあ、部屋まで戻りましょうか?」
部屋っていうと、カルティナさんの自室でいいんだろうか?
カルティナさんが指をついっとボクに向けて動かすと、パリッシュさんが席を立ち、ボクの隣まで来て抱え上げた。
「パ、パリッシュさん!?」
「無理に動かすと悪化するわよ? 素直に甘えなさい」
「は~い……」
諦めて、体の力を抜くと苦笑されてしまった。
抱き抱えられて移動する事になって改めて、右太腿に酷い痛みを感じる。
使っている時は、歩く事に意識を向けているからあまり痛みを感じなかったけど、何もしていない今はどうしても痛みに意識が行ってしまう。これだったら歩いた方がましだ。
「大丈夫ですか?」
声がして上を見ると、パリッシュさんが僕の顔を覗き込んでいた。
表情に乏しくて、思ったように彼女の心情を推し量ることはできないけど、眉間に寄った皺がボクをものすごく心配している事を物語っている。
「ごめんなさい、心配かけて。ちょっと痛むだけで大した事ないから」
「できるだけ、揺らさないようにしますから我慢して下さい」
「あ……うん……。お願いします……」
返事をすると、当然とばかりに強く頷いて、パリッシュさんがさっきよりも振動を少なくなるように気を付けて運んでくれる。それはもう、大切な物を扱うように。
記憶を全て無くしてしまったボクは、いつか彼女がボクを大切に扱う理由を思い出せるだろうか?
「とりあえず、寝台に」
がちゃり、と扉の取っ手の開く音と共に微かに香る干し草の様な匂いと薬品の臭い。カルティナさんの部屋の、独特の空気が鼻を突く。
それが嫌ではなく、逆に懐かしさと共に『帰ってきたのだ』と思わせる何かを感じる。この匂い、僕はいつも嗅いでいるような環境に居たんだろうか。
「こっちに寝かせましょう?」
カルティナさんは寝台を指差して、机に備え付けられた椅子に座る。
「他に給仕と針子を呼んだから、暫くくつろいで待っててくれる? 来たら、あなたの身体の丈を測りましょう」
「……丈?」
首を傾げて聞き返すと、カルティナさんはにっこりと笑うだけでなにも言わず、机の上で作業をはじめてしまった。
■◇■◇
「――ア、アリシア?」
「んにぃ? くぁ~……ふにゅ……」
大きく欠伸をして左手で目をこする。
「あれ~? 寝てた~?」
しばらくどころか、だいぶ寝てた気がする……。
「起こしてごめんね? 針子さんが来たから辛いだろうけど頑張って?」
「ふぇ?」
首を傾げると、パリッシュさんがボクの脇の下に手を入れて、一気に引き起こした。
なになに? と思って目を白黒させると、部屋の隅に職人用の貫頭衣の上に前掛けをした緑色の長髪を結い上げた髪型の女性とひとりの給仕さんが立っていた。
給仕さんの方は……たしかマルカ……さんだっけ?
職人さんらしき人と目が合ったので軽く頭を下げると、深々と会釈されてしまった。
「カルティナさま、可愛いお嬢様ですね」
「そうでしょう? どう? 作りごたえありそう?」
「はい、それはもう!」
目を輝かせた職人さんがボクに詰め寄るように近寄って、深く謙譲の礼を踏んで頭を下げる。
「私の名前はペレルータ=マチェリ。リタとお呼びください。フォレスタさまの針子をしています。以後お見知り置きを。お嬢さま」
「え~っと……お嬢さま? お嬢さまってボクのこと?」
お嬢さまという言葉もそうだけど、クロカットまでされて挨拶される立場、という事実を認識させられて顔がひきつってしまう。
ボクが偉いんじゃない。後ろのこのカルティナさんが偉いんだ。ボクが偉いんじゃない。ボクは付属品、ボクは貴族の付属品なんだ。
「それでは失礼しますね?」
「……はぇ?」
気付いたらリタさんがボクの貫頭衣の裾に手をかけてめくり上げ――。
「にゃぁ~~~~!? にゃにしゅるんだ!?」
膝上近くまで引き上げられて、じたばた足を振り回す。
「ひゃあ!?」
驚いたリタさんがすっ転び、手を離しそうになったパリッシュさんがボクの襟首を慌ててつかんで引き上げる。
「こら、アリシアちゃん! 暴れちゃダメでしょ?」
「だだだ、だって~!」
横まで来て怖い声で起こり始めたカルティナさんに慌てて反論しようとしたら、こわ~い笑顔で頭を撫でられた。
「今から採寸するんだから恥ずかしいなんて言わないで? ここには女性しかいないんだから」
有無を言わさないほどの黒い笑みを浮かべるカルティナさん。すごく怖いです……。
恐ろしい物に睨まれているような気がして身体が竦む。
助けて、と視線を頭上のパリッシュさんの顔に向けると、顔色ひとつ変えずに首を振る。
目の前にいる、マルカさんに救援信号を送る。
しかし、なにを思ったのかにっこりと笑みを浮かべて手を振る。
こんなことは止めよう、と首を振ってリタさんに抵抗して見せる。
いつの間にか取り出した巻き尺を手で弄びながら嗜虐的な笑みを浮かべる。
あ……もしかして、ここにいる人たちはみんな敵なのか?
泣きそうな顔で首を振るボクに、彼女たちは一斉に飛びかかってきたのだった。
――> To Be Continued.
結構自分で校正はしているのですが誤字脱字が多い性分です。
誤字とか脱字があったらご指摘いただけたら幸いです。
『次回からは新生活に向かってアリシアが動き始めます』と書いたけど、実際は動かされてました(白目)
それに、近日詐欺は出来るだけしないようにします。
もうなんて言うか、リアルの生活優先なので、血行厳しいのですよ。
そんなわけで、放置を出来るだけしないように頑張れたらいいなぁという希望的観測で行ってみます。




