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銃騎士物語  作者: 水姫 七瀬
第2章 新しい日々、フォレスタ家の人々
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第2章 第1話 はじめての朝

こんばんは。

なんだか体調が優れなくて頭いたいわ、吐き気がするわで大変でしたが、新しいお話をお送りいたします。



―― がちゃり


 遠くで小さな音がした。


「――さま? 奥さま! いい加減起きてくださ――え?」


 ばさり、という音共にいきなりの眩しさに覚めかけてた目が痛くて思いっきり目をつむってしまった。


「な~に? シーリア? 今日はゆっくり寝かせてと……」


「ちょっと奥さま? どうしてこの子がここにいるんですか!?」


 頭の上でだれかが言い争う声がする。いい加減うるさくて頭が痛くなりそう。

 一体誰がうるさくしてるのか、確認するために目を開けようとしたら何かに締め付けられる感触。


「いたっ!? なに? なんなの!?」


 目を開けると、女の人の顔が至近距離にあって驚く。


「あらあら? 起きてしまったじゃないの。もう少しくらいゆっくりさせてくれてもいいのに。ねえ? アリシアちゃん」


「ねえ? って同意を求められても困るんですけど……」


 どうしてボク、この人と一緒に寝てるんだ?

 やっとはっきりしてきた頭を振って、ボクの今の状態を把握する。

 まず、ボクのこと。腰に回された温かい感触。どう考えても、カルティナさんが抱きしめてるようだ。

 正直、この顔に当たる柔らかい感触……どうにかしてくれないですか? すごく恥ずかしいんですけど……。

 カルティナさんはどう思ってるのか分からないけど、笑ってるようで、悪い感情は見られない。

 次にシーリアって呼ばれた人。給仕服に身を包んだ、長い薄青色の髪のお姉さん。どっかで見たような……。


「奥さま、この子がさんざん昨日暴れまわったことをお忘れですか?」


 鋭い目で、流し見られてちょっと冷や汗。


「まあまあ、色々と誤解があったみたいだから責めないであげて?」


「それは……一応聞きましたけど……」


「ああ! 思い出した!」


 この人、確か足払いした後に壁に激突して気絶した人だ‥…。どうしよう、すごく気不味い……。この様子だとすごく根に持ってそう……。


「あの……昨日はごめんなさい。怪我とかしませんでしたか? 思わず襲い掛かられて、怖くて足払いしてしまったんですが……」


 とりあえず、これから末永くお世話になるかもしれない相手。無用なわだかまりを作るくらいなら、と素直に謝罪することにする。

 もっとも、謝罪するような体勢ではないけれど……。未だに抱きしめられたままなんですけど、そろそろ離してくれないかなぁ?


「シーリア? どうしたの?」


「あ、いえ、謝罪は受けます。こちらも追い立てるような真似をしていたようで、申し訳ありません」


 少しだけ取り繕う様子は見せたけど、姿勢正しくお辞儀された。この人、できる。もうぜんぜん顔から感情が読み取れない……。


「と、それよりも、遅目ではありますが、朝食をご用意して旦那様がお待ちしています。ハルマーさまも同席される予定です。早めにご支度を」


「ええ、分かったわ。ごめんなさいね?」


 カルティナさんが謝罪の言葉を口にして、ボクをやっと開放してくれた。

 顔を上げると、頭をひと撫でされて徐ろに――


「うわわっ!?」


 いきなり服を脱ぎ始めて、反射的に肌掛け(シーツ)を引き上げ頭からひっかぶる。


「どうしたの? そんな頭から肌掛けを被って」


 少しからかうような口調の、カルティナさんの声が聞こえてくる。なにが原因か分からないけど、焦るボクの心の中を見透かされてるような気がして、さらに恥ずかしくなった。


 寝台から、着替え終わったカルティナさんと、シーリアさんのふたりに手伝ってもらって立ち上がると、部屋の全貌が明らかになった。

 窓辺には乾燥させるためか、草花が並べられていたり、天井から吊るされてたりしている。

 近くの木製の作業台や机には、大量の硝子瓶や鉱石、工具などが散乱している。

 まるで、女性の部屋の、寝室にはとても見えない。

 むしろ、魔導研究室のように見えて薄気味悪い。息を吸うと少しだけ薬っぽい臭いがする。


「あんまり女の子の部屋らしくなくて驚いた?」


「ふぇ? あの……」


「私ね、薬師なの。ここは私の私室ではあるけど作業部屋でもあるのよ」


「へ~……」


「奥さま? お早くしないと旦那様がお怒りになりますよ?」


「ああ、ごめんなさいね? さあ、行きましょう?」


「は、はい……」


 今から朝食……。旦那さまってのは……やっぱり昨日のあの人……なんだろうか。



 ■◇■◇



 目の前の大きな扉を開くと、中は食堂。真ん中に10人は掛けれる長食卓に、もう3人腰掛けている。

 ひとりは銀髪の女の人、パリッシュさん。軽く会釈をすると、軽く会釈を返してくれた。

 でも、表情は相変わらず乏しくて、ちょっと苦手。

 ひとりは、水色の髪をした髭面のおじさん。眼鏡を掛けていて、柔和そうな印象を受けるおじさんが、心配そうな顔をしてボクを見ている。

 最後に……。

 最後に長食卓の上座から、ボクを真っ直ぐ見つめる男の人。逆立った紫色の髪の毛が特徴的な男の人。その顔はなんだか怒ってるような、困ってるような、なんとも言えない複雑そうな表情。やっぱり、昨日のあれで怒ってるのかな……?


「ほら、どうしたの? 入って入って」


「う、うん……」


 カルティナさんに背中を押されて、ゆっくり進む。


「あなたはここに座りなさい」


 示された席は入って右側、上座から数えて2番目の席で、カルティナさんがその隣みたい。向かいにはパリッシュさんが座ってた。


「どうぞ」


「あ、はい……」


 シーリアさんが席を引いてくれたのを、合図だと思ってそそくさと座る。

 正直、こんな席を引かれて座るなんて手順、堅苦しくて好きじゃない。と思いつつも、自分の右手を見て考えを改める。

 痛みは昨日より、幾分かましにはなったけど、持ち上げることすらできない状態だ。この配慮には素直に感謝することにしてさっさと座ることにする。


「さて、全員揃ったな」


 上座の男の人がボクの着席と同時に声を上げる。


「初顔合わせの者も居るから、各々紹介でもしようかな?」


 ボクを見て、長食卓に着いた人達が揃って頷く。


「まずは私から」


 声を上げたのはパリッシュさん。ゆっくりと席を立って一礼。


「パリッシュ=メイクラントと申します。アファリア修道院系列マールジア修道支部に所属していました。一命を受けて、翌日からこちらに給仕として働かせて頂くことになりました。よろしくお願いします」


 パリッシュさんが座ると、次は右向かいの、髭面のおじさんは片手を上げて席を立つ。


「私はグウェイズ=ハルマー。君の主治医になる医者だ」


「じゃあ、ボクの右腕とかの手当をしてくれたのは、おじさん?」


「半分はそうだな。もう半分は……君のとなりに座ってる女性の手によるものだよ」


「え? カルティナさんが?」


 反射的に隣を見ると、カルティナさんがにっこりと笑い返す。


「次は私ね?」


 そう言って立ち上がって、ボクを真っ直ぐ見つめる。


「私の名前はカルティナ=メディス=フォレスタ。このお屋敷の奥さまって事になってます。あなたの未来のお母さま、ということでよろしくね?」


 ……まだ、養子になってないんだけど、話しぶりからもう半分は確定事項になってそう。


「最後になったが、俺がこの屋敷の主。アンガース=リオルテ=ムルトラ=フォレスタだ。君の今後の保護者、という立場になる。よろしくな」


 仏頂面から急ににやりと笑いかけられて、どう接したらいいか分からない。


「よ、よろしくお願いします」


 無難に挨拶だけ済ませようと思って、手短に。


「ああ、言い忘れたが――」


「ひぅっ……」


「もう脱走してくれるなよ? 探すのは一苦労だし、私有地とは言え屋敷の裏の森には熊が出るときもある。危険だからやめておきなさい」


「は、はい……」


 やっぱり、昨日のこと、根に持たれてるのかな?


「あの……。昨日のことなんですけど……」


「なんだ?」


「他の男の人達、怪我をしてませんでしたか……? 大丈夫でしたか? ボクが聞くのも筋違いかもしれませんけど……」


「ああ、そのことか……。特に誰も怪我をして訳でもない。もし、君がどうしても気になるというなら、機会があったら謝れば良いさ。それで誰もが許してくれるだろう」


「そう……ですか……」


 それなら、後で全員に心から謝ろう。これからお世話になる人達だ。謝っておいて損はないと思う。


「ああ、言い忘れていた。横に控えているのが給仕だ。それぞれシーリアとマルカ、後は厨房の方にアプリカ。今はこの場にいないが後ふたりほど給仕が居る。護衛は男が4人。執事がひとり。そんなもんか? まあ、小さな屋敷に大人数だが、仲良くしてやってくれ」


 小さいと言われても、人数的に15人くらい? かなりの大所帯からしてやっぱり貴族の人達なんだろうか?


「あ、あの! ボクも自己紹介を!」


「必要あるまい? 皆知ってるぞ?」


「そ、それでも! これからお世話になるので自分からさせてください」


 一瞬、逆立った紫色の髪の男の人改め、アンガースさんが驚いた顔をした。

 なにか驚かせるようなことをしただろうか?


「ああ、すまない。そういうことなら、是非お願いしようかな?」


 そう言って、アンガースさんが手の平を返してボクに自己紹介を促す。


 ひとつ頷いて見せ、席をゆっくりと立つ。少しだけふらついて、カルティナさんが慌てて支えてくれた。小さく感謝の念を目配せで送って、両足で踏ん張る。


「あの……。アリシアって言います。昨日はご迷惑をお掛けして申し訳ありません。これからご厄介になります。どうぞよろしくお願いします」


 深々と頭を下げて挨拶をすると、なぜかみんな揃って拍手をされた。

 なんだか、それが凄く恥ずかしくて、身を縮こませて席に着席するはめになってしまった。




 こうして、みんなの自己紹介からボクのフォレスタ邸での生活が幕を開けたのだった。







                    ――> To Be Continued.

結構自分で校正はしているのですが誤字脱字が多い性分です。

誤字とか脱字があったらご指摘いただけたら幸いです。



今回は第2章のプロローグ的なお話。

次回からは新生活に向かってアリシアが動き始めます。

体調が悪くて色々と執筆に手間取っているのでなんとも言えませんが、近日には更新できるといいなぁと思ってます。

よろしくお願いします。

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