読書/『姫神の本』 ノート20160909
増田秀光編 『姫神の本――聖なるヒメと巫女の霊力』学習研究社2007
少年社、武田えり子、吉川順弘、幣旗愛子執筆
第1章
【巻頭写真-40頁キーワード】
柳田國男が「妹の力」と呼ぶ女神信仰。
神楽とは神座のこと。
「白山三所神像」
中央に白山女神。右に男神(金剣宮、きんけんぐう。軍神ニニギ、かつて剣峯というのがあった)、左に女神(三宮)……本地垂迹説
「白山女神立像」
根つき木像。秋田県湯沢市白山神社
「兜跋毘沙門天立像とその下部」
毘沙門天を支える女神:地天=堅牢地神
荒神・市比賣神:安産の女神
玉依姫命・有末光尊:子育て
天宇受賣命
弟橘媛:ヤマトタケルの側室
ヤマトヒメ:ヤマトタケルの叔母
宗像山女神、ナケイサワメ、ククリヒメ、ミズハノメ、セオリツヒメ
月読の神=かぐやひめ?
佐太大神。神魂神の娘キサガイヒメが産む。
オオゲツヒメ:穀物神。尻から食物をだしたので、スサノオに斬られる。
〈呪宝〉
トヨタマヒメ:山幸彦の妻。竜王の娘。塩盈玉と塩乾玉を山幸彦に与え、海幸彦を下す。
タマヨリヒメ:トヨタマの妹。甥ウガヤフキアエズノ尊の妻。
神功皇后:如意珠、カマヒメ:満珠・乾珠
仏教の弁財天・狐に乗ったダキニ天(人黄を食す=生体エナジー):如意宝珠を有する。
孝霊天皇皇女ヤマトトトヒモモソヒメ:蛇神大国主命の妻となる際、焼いた矢を女陰に当てて自死し異界に黄泉返る。
船霊様:ツンツン、チッチと音をだして異変を報せる。対極にあるのが、磯女(妖女):絶世の美女で船乗りを海中に引きずり込む。マゲをしない長髪が特徴。
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【日本女性宗教史チャート】
地母神 ⇒ 零落して妖怪化した女神:鬼女・山姥・産女(雪女・磯女)
山ノ神 土ノ神ハニヤマヒメ
水ノ神ミツハノメ 海の神宗像三女神
穀物神オオゲツヒメ・トヨヒメ・ウカノミマタ
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巫女アメノウズメ、タマヨリヒメ ⇒民間巫女(中世以降さかん)
巫女女王:卑弥呼・神功皇后・倭姫命 オカミサン、イタコ、勧進比丘尼
⇩ ⇩ 歩き巫女、梓巫女、ユタ(琉球)
宮廷神女 女性神官
猿女 伊勢斎宮、加茂斎院、春日斎女
内待
御巫
ノロ(琉球)
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中世となり、五障説:女人成仏の比定、
(血の穢れ=死の穢れとされた)
⇩
消滅
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第2章 神としての女――神女と神妻
概略
Ⅰ記紀の女神
イザナミの尊:地母神
菊理媛神:異界との境目を領する山の女神
天照大神:巫女にして女神
アメノウズメ:異界の門番のような女神
大気津比売神:五穀の神。スサノオに惨殺されその躯が穀物に。
クシナダ姫:スサノオの妻。本来は稲の神。櫛に変身してスサノオに妹の力を送る。
薩摩の国:大山祇の娘・コノハナサクヤ(カシツヒメ)がニニギ神の妻となる。姉のカシヅヒメは不細工なので返される。
豊玉姫と玉ヨリ姫の竜宮王女姉妹:姉が山幸彦の妻、妹が甥のウガヤフキアエズノミコトの妻
地母神のなれの果て/売子姫と山姥:瓜子姫は老夫婦が留守のとき天邪鬼に喰われる。姫になりすますがばれて切ざまれる。その死体からキビやソバが芽をだす。山姥の小屋に紛れ込んだ若者が釜で寝ている山姥を煮殺すと血だけになり、それをソバにかけたら赤くなった。
松浦佐用姫(弟日姫子):悲劇の女神
羽衣天女:富貴をもたらし追われる神女
〈異界に住まう神女らの神霊は水辺によりつく〉
亀比売:永遠の生命
異界の神女と地上の男が添い遂げられない悲劇:かぐや姫
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Ⅲ 歴史上の女王と神女
天皇を霊的に守護した皇女と、女帝となった巫女の王
倭迹迹日-百襲-姫命(やまとととひ-ももそ-ひめのみこと)
倭姫命:初代斎宮・天照大神を祭祀する
ヤマトタケルの叔母
弟橘姫命:ヤマトタケルの従軍側室
天照大神
豊鍬入姫命が仕える
神功皇后
卑弥呼
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【魔としての女――鬼女と女怪】
なぜ女神は魔物となったのか… 女性排斥 華厳経「女は地獄の使いなり。よく仏の種子を断ず。外面は菩薩に似て、内心は夜叉のごとし」――外面如菩薩 内面如夜叉
1山怪
山神――年神(歳神・お正月様・恵方(歳徳)神・年どん・年じいさん)とも習合・
「年」とは稲、「年神」とは稲霊・穀霊のこと。
神話ではオオイチヒメ(クシナダ)姫の娘との間に生まれた男神。民間では女神。
禍津神としての一面――山姥(山姫・山女郎)
イザナミの暗黒面をもつ山姥
山神に仕えた巫女が雪女になった
純潔と邪淫の同居――雪女
2水怪――濡れ女(磯女)人魚、ナーガの形で表現される場合も。
〈常世の子宮につながる昏い水〉
浦島子が遊んだところは神仙境=混沌の子宮/門は境界。橋。黄泉比良坂と同じ機能。
〈女の霊力と黒髪〉船霊様
〈忘れ去られた春秋去来の女神〉磯姫
〈妊産婦が負わされた浮上〉死穢(弥生以前から)・産穢(平安から)・血穢れ
〈血穢と産穢にまみれる女体〉腹に子を宿したまま死んだ産婦をそのままにすると産女になる
〈産女〉は女怪物の元型のひとつ。
〈血にまみれるヒメ神たち〉産女、山姥、雪女、磯神に海姫――産女が渡した子供の重さに耐えきった豪傑は太刀などの宝物をプレゼントされる。
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〈情念が実体化した鬼女〉
第2の鬼は、大江山の酒呑童子が代表的だ。
第3の鬼は、男の場合は支配体制への反逆児。菅原道真、『太平記』後醍醐天皇・祟徳院など眷属を率いる。支配者の怯えがつくる妄想。女の鬼は〝個〟として動き心の闇から鬼化けする。――ただし近世になると女盗賊、山東京伝『滝夜叉』、謡曲『紅葉』が登場。
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〈執念の化身となった女〉
謡曲『鉄輪』は丑の刻参りのもととなった曲だ。もとは『太平記』にある。さる公卿の娘が恨む女を取り殺さんと貴船神社に詣でて、「願わくば七日籠りたるしるしには。吾を行きながら鬼が身に為して給え。ねたましと思いつる女とり殺さん」と祈ると不憫に思った神が聞き届けてしまう。
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〈生霊と化した六条御息所〉
『源氏物語』の「葵上」にでてくる六条御息所は生霊。叡山横川の小聖を招いて対峙。五大明王勧請し、不動明王の慈救呪を唱える。「なまくさまんだらばさらだ。しんだまかろしゃな。そわたやうんたかんまん。聴我説者大知恵。知我身者即身成仏天…」この陀羅尼に畏れおののき、「あらあら恐ろしの般若声や。是までぞ怨霊。この後またも来るまじ」ちうって、生霊は「心をやわらげ。忍辱慈悲の姿」に一変して「成仏得脱する」しかしこの修法によって鬼は救われたのか?
台密・東密は体制側で、まつろわぬ者を調伏・封印した。怨霊の神への祀り上げはまさにそれ。鬼の調伏は異界への封印であって救済ではない。
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〈安達ヶ原の鬼婆と道明寺の清姫〉
安達ヶ原:那智東光坊の阿闍梨・佑慶による鬼女退治。
安珍寄与ひね伝説:なびかぬ安珍に恋焦がれて後を追い蛇身と化す。
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5授福
山姥・雪女・産女ら。女の霊力ネガティブ面が鬼。蛇に化身、祟る力、跳んだり消えたりする力を失う。時代とともにリアリティーが消失。民話に残る。
「糠福米福」赤い小袖で美女になり玉の輿に乗る話。「姥皮」隠れ蓑の話。延命小袋、金銀財宝、彼女自身の死体(薬や金銀財宝に変化するオオゲツヒメと同じ)
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6災いを予言し不老をもたす人魚。沖縄ザン:津波預言、人魚形の神社姫(竜宮の使い)疫病・作柄占い
八百比丘尼:人魚の肉を食べて不老不死。浦島子(玉手箱)