読書/『レオン=ウェルト『僕の知っていたサン=テグジュペリ』 ノート20170018
~レオン=ウェルト著『僕の知っていたサン=テグジュペリ』藤本一勇翻訳 大月書店2012年
レオン=ウェルトは、ジュペリの『星の王子さま』の献辞に出てくる謎めいた人物であった。ジュペリに関連した伝記・書簡集などの資料に目を通すと、だんだん判って来た。アンリ・ギョメとともに、ジュペリの数多い友人の中でも親友というべき人なのだ。
ギョメは『人間の土地』に出て来るパイロットのモデルだという。
ジュペリ小説の解説か伝記かを読んでいたところ、ギョメ夫人をして、ジュペリを初めてみたとき、てっきり兄弟かと思ったと述べている。
ジュペリがギョメをレオン=ウェルトに紹介したときは、パーティーのような席でのことだった。ジュペリはギョメの肩をむんずとつかんで引っ張ってきて、「こいつがギョメだ」と言った。レオン=ウェルトに言わせると、ジュペリの最高の宝物の一部をプレゼントしてくれたのだと述べた。
レオン=ウェルトは共産主義者だった。対してジュペリは保守的なところがあり、共産主義が大嫌いだった。しかし、レオン=ウェルトとは魂の上で共鳴したのだという。
そして、日本では無名であるこの作家の翻訳本としては、恐らく、『僕の知っていたサン=テグジュペリ』が最初なのだろう。
裕福なユダヤ系フランス人家庭に生まれた、才能豊かな人物ではあるのだが、反骨精神があり、学校を中退して職工となっていたのだが、作家オクターヴ・ミラボーの知遇を得て秘書となった。その後、第一次世界大戦に参加し、戦争に疑問を持つ。ロマン・ロランが主催する雑誌の編集長となり、やがて、ジュペリと出会い親友になった。
ジュペリはトランプで仲間達を魅了したという。
レオン=ウェルトは特にテクニックを要しない心理ゲームだったという。
またジュペリが『星の王子さま』をどのあたりで着想していたのかという事に関して、よくカフェのテーブルクロスや手紙に端書して、「僕の頭にはこんな子供が住んでいるんだ」と言った。さらに、『人間の土地』でかなり歩いたという箇所があるのだが、ジュペリは僅かな距離でもタクシーで移動したとか、興味深い証言をしている。
ジュペリは戦前に、パリ‐ダカール‐サイゴン航空機レースに参加して、北アフリカで墜落した。このときに乗っていたジムーン機の写真もあった。そこには、レオン=ウェルトが、コンスェロ夫人を含む友人達と仲良く、倉庫から押し出すスナップもあった。
サン=テグジュペリの友人達は、奔放な性格のコンスェロ夫人を悪妻として、ジュペリの姉妹達同様に無視したというのだが、一連のスナップ写真をみるとそのような様子はない。
ノート20170918