随筆/随筆/もう一度妻をおとすレシピ 『中華風茶粥』 ノート2009
1997年まで香港はイギリスの植民地でした。その香港を舞台にした昔日の映画に『慕情』というのがありました。第二次大戦終了直後、中国国民党軍将校の未亡人がヒロインです。ヒロインの名はハン・スーインといい、当時は国民党と共産党が大陸の覇権をかけた内戦をおこなっていました。そんななか、イギリスのジャーナリスト、マーク・エリオットが現れ、二人は惹かれ合います。
マークはハンと結婚を望み、シンガポールに別居している妻のところにいき離婚調停にいくのですがこじれたままとなり、不倫状態となり白い目でみられます。やがて共産党が大陸から国民党を一掃して中華人民共和国が成立、さらに朝鮮戦争が勃発。エリオットは朝鮮戦争の取材に派遣されて殉職してしまいます。
――そんな切ない系ラブロマンスが『慕情』。ヒロインのハン・スーイン役女優ジェニファー・ジョーンズのチャイナドレス、それに、相手役のマーク・エリオット役俳優ウィリアム・ホーデンのスーツ姿がセクシーでした。
DVDを鑑賞した後はランチタイム。本日のレシピは爽やかな「緑茶風味の中華粥」をご用意しました。さあ、名画の余韻をこれで締めくくれば、あなたの奥方は、もうイ・チ・コ・ロ。
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用意するものは、鶏肉200グラム前後、玉葱1個、米1カップ、塩・胡椒・オリーブ油・胡麻油。そして緑茶(烏龍茶でもよい。試してないけれど紅茶も合うかも)。
調理方法は、まず下ごしらえ、鶏肉・玉葱をほどよくぶつ切りにして、それぞれ容器に入れておく(しょせん男の手料理さ、ワイルドにいきましょう)。つぎにケトルで湯を沸かし、濃いめにする量の茶葉をいれた1号鍋に注ぐ。葉が沈んだら、2号鍋に茶の上澄みをうつす。他方で、オリーブ油をしいたフライパンに下ごしらえの具材をいれて炒める。
2号鍋が沸騰したら米1カップを入れ茶粥にする。そこに、フライパンで炒めた鶏肉と玉葱をいれて少し煮込み、塩・胡椒・胡麻油を加えて出来上がり。
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それでは、奥方を呼んでください。さあいつものように目を閉じ、席についた奥方の肩にそっと手を添えて、香港島を望んだ高台の岬を想像するのです。そして、マーク・エリオットになりきったあなたは、スイーツにこうささやくのです。
――ウオ・アイ・ニイ(愛してるよ)。
たまには中国語もいいかなあ……と。
了
ノート2009/校正20160506