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第九話 王子の責任



ミレイユが帰ったあと。


ルシアンは一人、応接室に残っていた。


 


さっきまで座っていた椅子を見つめる。


 


(……喋れた)


 


思ったより普通に会話できた。


 


途中から。


 


歴史の話になってから。


 


それまでは。


 


ほとんど息が止まっていた。


 


ルシアンは大きく息を吐いた。


 


緊張が一気に抜ける。


 


(綺麗だった)


 


それが最初の感想だった。


 


子供の頃から知っている。


 


王宮でも何度も見ている。


 


でも。


 


今日のミレイユは違った。


 


大人だった。


 


六歳差。


 


その差を、初めてはっきり感じた。


 


ルシアンは手を握る。


 


(……頑張らないと)


 


その時だった。


 


扉がノックされた。


 


「入れ」


 


扉が開く。


 


入ってきたのは、言語オタクの第二王子セドリックだった。


 


金縁の本を片手に持っている。


 


「終わったか」


 


ルシアンはうなずいた。


 


セドリックは部屋を見回す。


 


「どうだった」


 


短い質問だった。


 


ルシアンは少し考えてから言った。


 


「……立派な人でした」


 


セドリックは小さく笑う。


 


「そうだろうな」


 


兄たちはミレイユをよく知っている。


 


王宮にもよく来ていた。


 


セドリックは続けた。


 


「困っていないか」


 


ルシアンは顔を上げた。


 


「何が」


 


セドリックは淡々と言う。


 


「婚約だ」


 


ルシアンは少し黙った。


 


王命。


 


断れるものではない。


 


でも。


 


それ以上に。


 


ルシアンは答えた。


 


「困ってはいません」


 


セドリックは少しだけ眉を上げる。


 


ルシアンは続けた。


 


「ただ」


 


少しだけ言葉を探す。


 


「釣り合うようになりたい」


 


セドリックは静かに聞いていた。


 


ルシアンは言う。


 


「六歳差です


 


 今は


 


 まだ子供です」


 


セドリックは本を机に置いた。


 


そして言った。


 


「そうだな」


 


ルシアンは続ける。


 


「でも


 


 追いつきます」


 


その言葉は迷いがなかった。


 


セドリックは少しだけ笑った。


 


「いい目だ」


 


ルシアンは少しだけ驚く。


 


セドリックは言った。


 


「王族は時間を味方につける


 


 焦るな」


 


そして本を持ち直す。


 


「お前はまだ十二歳だ」


 


扉へ向かう。


 


その前に振り返った。


 


「十年もあれば


 


 大抵のことは変わる」


 


扉が閉まる。


 


ルシアンはその言葉を考えていた。


 


十年。


 


ルシアンは窓の外を見る。


 


王都ルミナリアの空は青かった。


 


(追いつく)


 


静かにそう思った。


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