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第三話 聖女召喚 前編



王都ルミナリア、王宮。


王宮の中でも最も広い舞踏会場には、すでに多くの貴族が集まっていた。


天井は高く、巨大なシャンデリアが光を落としている。

壁にはアルヴェリア王国の紋章と、初代聖女の肖像画が飾られていた。


ざわめきは止まらない。


「本当に聖女召喚を……」


「結界の揺らぎはそこまで深刻なのか」


「今日、歴史が変わるな」


 


舞踏会場の奥には、大きな階段がある。


その上には舞台。


そして舞台の中央には、台座が置かれていた。


 


やがて。


会場の空気が変わる。


 


国王アウレリウス・ヴァルセリオンが現れた。


黒い礼装の王は静かに階段を上り、舞台の中央に立つ。


その背後には王族が並んでいた。


 


第一王子ヴァレリウス。


第二王子セドリック。


第三王子レオニス。


そして第四王子ルシアン。


 


ルシアンは広い会場を見下ろしながら、胸の奥が重くなるのを感じていた。


貴族たちの視線。


ざわめき。


 


聖女召喚。


それはただの儀式ではない。


 


この国の未来を決めるものだ。


 


国王はゆっくりと手を上げた。


会場が静まり返る。


 


侍従が台座から、一つの宝物を差し出した。


 


宝石で飾られた卵。


 


インペリアルエッグ。


 


金と宝石で覆われたその卵は、王国の象徴だった。


初代聖女召喚の際に作られたと伝えられる聖遺物。


 


国王はそれを掲げる。


 


「諸君」


低く、よく通る声が会場に響く。


 


「アルヴェリア王国は長く平和を享受してきた」


 


貴族たちは黙って聞いている。


 


「それは初代聖女が残した結界のおかげである」


 


ルシアンは拳を握った。


 


結界が揺らいでいる。


それはすでに皆知っている。


 


国王は続けた。


 


「しかし今、その結界が弱まりつつある」


 


ざわめき。


 


「ゆえに」


 


国王はインペリアルエッグを掲げた。


 


「我々は再び聖女を迎える」


 


会場が息を呑む。


 


「聖女召喚の儀を行う」


 


しばらく沈黙が流れたあと、魔術師たちが進み出た。


王からインペリアルエッグを受け取る。


 


床に巨大な魔法陣が描かれていた。


 


魔術師たちが位置につく。


詠唱が始まった。


 


空気が震える。


 


魔法陣が光る。


 


そして。


 


光が弾けた。


 


――その頃。


 


日本のどこかの街。


 


高校二年生、小鳥遊美咲は雨宿りをしていた。


 


突然の夕立だった。


 


「最悪……」


制服のスカートを押さえながら、屋根の下に立つ。


スマホを取り出す。


 


しばらく雨は止みそうにない。


 


その時だった。


 


足元の水たまりが、妙に泡立っていることに気づいた。


 


「……なにこれ」


 


ぼこぼこと泡が立っている。


 


気持ち悪い。


 


美咲は一歩下がろうとした。


 


その瞬間。


 


水たまりが盛り上がった。


 


「え」


 


次の瞬間。


 


水柱が立ち上がる。


 


「ちょっ――」


 


水が美咲を包み込んだ。


 


流される。


 


水の中を落ちていく。


 


息ができない。


 


そして。


 


水が引いた。


 


「げほっ……!」


 


美咲は床に手をついた。


濡れた髪が顔に張り付いている。


 


「なにこれ……」


 


顔を上げる。


 


――そこには。


 


信じられない光景が広がっていた。


 


巨大なホール。


豪華なシャンデリア。


 


そして。


 


数えきれないほどの人。


 


貴族たちが一斉にこちらを見ている。


 


次の瞬間。


 


歓声が上がった。


 


「聖女様だ!」


「成功した!」


「聖女様!」


 


美咲は完全に固まった。


 


「……え?」


 


状況が理解できない。


 


その時。


 


階段の上から一人の青年が歩いてくる。


 


黒髪。


紫の瞳。


 


王太子ヴァレリウスだった。


 


彼は侍従からタオルを受け取り、ゆっくりと美咲の前に膝をつく。


 


そして穏やかに言った。


 


「聖女様」


 


タオルを差し出す。


 


「アルヴェリア王国へようこそ」


 


そして静かに続けた。


 


「来てくださり、ありがとうございます」


 


美咲はタオルを見つめたまま言った。


 


「……いや」


 


そして顔を上げる。


 


「帰してください」


 


舞踏会場が、静まり返った。


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