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第十話 公爵令嬢のお茶会

本日も読んでいただきありがとうございます。


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王都ルミナリア、ヴェルディエ公爵邸。


春の光が庭に差し込み、温室の花々が柔らかく色づいている。


その庭に面したサロンで、五人の令嬢がテーブルを囲んでいた。


 


ミレイユ・ヴェルディエ。


そして彼女の友人たち。


 


クラリス・フォン・リーデル。

エレノア・シュタイン。

ロザリンデ・ケラー。

ベアトリーチェ・オルロフ。


 


五人だけのお茶会だった。


 


紅茶が注がれ、焼き菓子が並ぶ。


 


クラリスが微笑んだ。


「今日は久しぶりですわね」


 


ミレイユも頷く。


「ええ、少し落ち着きましたから」


 


聖女召喚。


王家の婚約変更。


 


王都はまだその話題で持ちきりだ。


 


ロザリンデが身を乗り出した。


「それで?


 


 第四王子殿下とはどうでしたの?」


 


ミレイユは少し考えてから答える。


 


「とても真面目な方でした」


 


エレノアが頷く。


 


「殿下は歴史研究がお好きだと聞いています」


 


ミレイユは微笑む。


 


「ええ。歴史の話をしました」


 


ロザリンデは楽しそうに言う。


 


「いいじゃないですか」


 


「殿下、ミレイユ様のことずっと見ていたそうですわ」


 


ミレイユは少し困った顔になった。


 


「……そうなのです」


 


友人たちが首を傾げる。


 


ミレイユは少しだけ言葉を選ぶ。


 


「好かれているとは思うのです


 


 ただ」


 


紅茶のカップを見つめる。


 


「憧れの目なのです」


 


クラリスが静かに聞いている。


 


ミレイユは続けた。


 


「私を見ているのではなくて


 


 理想の誰かを見ているような


 


 そんな気がして」


 


エレノアが少し笑った。


 


「それは仕方ないでしょう」


 


ロザリンデも頷く。


 


「好意があるなら十分ではありませんか」


 


クラリスが優しく言う。


 


「政略結婚ですもの」


 


その言葉に、皆が小さく笑った。


 


そして。


 


ロザリンデが言う。


 


「そういう意味では


 


 私は恵まれていますわね」


 


突然、話の方向が変わった。


 


ロザリンデは楽しそうに言う。


 


「婚約者、昨日も手紙を送ってきましたの


 


 三通目です」


 


エレノアがため息をつく。


 


「あなた方は本当に仲がよろしい」


 


クラリスも少し頬を染める。


 


「……私も、まあ」


 


ベアトリーチェも静かに言う。


 


「私の婚約者も優しい方です」


 


気づけば。


 


話は完全に惚気になっていた。


 


ミレイユは思わず笑った。


 


(みんな幸せそう)


 


その様子を見ながら、ふと別の顔が浮かぶ。


 


ヴァレリウス。


 


王太子。


 


幼い頃からの知り合い。


 


恋愛感情はなかった。


 


それでも。


 


少しだけ思う。


 


(大丈夫かしら)


 


彼は昔からそうだった。


 


何でも一人で抱え込む。


 


誰にも弱音を見せない。


 


そのまま口に出してしまった。


 


「王太子殿下はお元気かしら」


 


友人たちが顔を上げる。


 


「聖女様のことですわね」


 


エレノアが言った。


 


「まだ塞ぎ込んでいらっしゃるとか」


 


ミレイユの眉が少し寄る。


 


クラリスが続けた。


 


「でも最近」


 


「祈りの唄を歌われたそうです」


 


ロザリンデが頷く。


 


「結界の張り直しの祈り


 


 聖女様も協力してくださっているとか」


 


少し安心した空気が流れる。


 


しかし。


 


ベアトリーチェが小さく言った。


 


「……それでも」


 


皆が静かになる。


 


「突然、異世界から連れてこられるなんて


 


 辛いことでしょうね」


 


誰も否定しなかった。


 


ミレイユも静かに頷く。


 


「ええ」


 


紅茶の湯気がゆっくり上がる。


 


ミレイユは思った。


 


聖女。


 


この国を守る存在。


 


それでも。


 


きっと。


 


ただの女の子なのだろう。


 


突然、知らない世界に連れてこられた。


 


そのことを想像すると。


 


胸が少し痛んだ。


ここまで読んでいただきありがとうございます。

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