2+2=4(健吾×時也)②
伊達も江藤もいい奴だと思うけれど、やっぱり俺は日高が格好いいと思う。優しくて穏やかで、同い年と思えないくらい落ちついている。自然と目が引き寄せられ、四人でいてもつい日高ばかりを見てしまう。日高の笑顔がもっと見たいし、笑いかけられるとどきどきする。変な感じだ、と思いながらそれでも日高を見てしまう。
伊達はいつもやる気がなさそうだけど、授業中は真面目。見た目だけだといい加減そうなのに、案外そうでもないのかもしれない。
江藤は言葉に抑揚があることが少しずつわかってきたけれど、基本的にはそっけない感じ。
仲のいい四人組という認識をされるくらいに、俺たちはよく一緒にいた。
翌年、そのまま三年に上がった。二年から三年に上がるときは、三年ではなるべくすぐに受験体勢に入りやすいようにクラス替えがないのでそのまま持ち上がり。相変わらず俺は日高ばかりを見ていた。
「日高が好きなの?」
「えっ」
ある日、江藤に突然聞かれて初めて自分の気持ちと向かい合った。
「別に好きとかそういうんじゃなくて……!」
いや、俺は日高が好きだ……。口に出すと頬が熱くなってしまうけれど、そういうことなんだと思う。でも、自覚したところで告白なんてできない。
「そっか……好きなんだ」
「他人事みたいに言うなよ」
俺の呟きに江藤が呆れた顔をする。
「でも、日高には俺なんかだめだよね。だって日高は格好いいし、頼りになるし、人気者だし」
「根岸、うるせえ」
ぐじぐじといろいろ言っているといつの間にか伊達が江藤の隣に立っている。
「しょうがねえな」
そのときは伊達の言葉の意味がわからなかったけれど、翌日すぐにわかった。伊達と江藤は日高と俺をふたりきりにするようになった。
「また伊達と江藤、どこか行っちゃったの?」
「う、うん……」
「じゃあふたりでお昼食べようか」
小さく頷く。俺はずっとどきどきしてどうしようもないけれど、日高は俺の様子に気づいているのかいないのか。
「わ……」
「大丈夫?」
ぼんやりしていて転びかけた俺を日高が支えてくれる。
「ありがとう」
距離が近くて、お礼を言って慌てて離れる。
日高が優しくしてくれるたびに俺は嬉しいのに切なくなる。俺の気持ちを知ったら、日高はこんな風に優しくしてくれない。だからこの気持ちは隠したほうがいいんだ。
「根岸はあぶなっかしいところがあるね」
「……ごめん」
それでも日高といられることが嬉しくて、気持ちが膨らんでしまうのが止められない。
気がつくと俺は、日高と視線が合うと目を伏せるようになってしまった。