2+2=4 肉まん(健吾×時也)
健吾と一緒の学校帰り、コンビニに寄る。少しお腹が空いた。
「肉まん食べたい」
「俺も」
レジに並ぶと、俺のうしろに健吾も並んだ。肉まんのケースにはちょうどふたつの肉まんが並んでいる。でも、俺の前の人が肉まんをひとつ買ってしまった。ケース内には肉まんがひとつしかなくて健吾と顔を見合わせる。
「時也が買って」
「ううん。健吾が」
「じゃあ、ひとつ買ってふたりで食べよう」
「そうしよっか」
健吾が買って、半分の代金を渡す。コンビニを出て、公園で食べようということになり、近くの公園に行くと誰もいない。一番近いベンチに並んで座り、健吾が持つほかほかの肉まんをふたりで見つめる。
「おいしそう」
「うん」
「時也から食べて」
「ううん。健吾から」
ふたりで譲り合うけど、これじゃ肉まんが冷めてしまう。もう一度肉まんを見つめる。
「せーので食べようか」
「そうしよう」
健吾の言葉に乗っかる。
「せーの」
健吾の掛け声に合わせてふたりで同時に肉まんに顔を寄せる。
コツン
おでことおでこがぶつかった。
健吾と顔を見合わせる。ちょっと恥ずかしい。頬が熱くなってきて、視線をうろうろさせてしまう。
「や、やっぱり健吾から食べて……」
「いや、時也から……」
目が合わせられない。でも、このままじゃ本当に肉まんが冷めてしまう。どうしよう。
「じゃ、じゃあ、ゆっくり顔を近づける?」
「そうだね。そうしようか」
俺の言葉に、健吾が頷いてくれる。それで肉まんにゆっくり顔を近づけていくけれど、健吾の端正な顔がどんどん近づいてきて……なんだかこれって、キスをするときみたいですごく恥ずかしい……!
「……時也」
「な、なに?」
「これ、恥ずかしくない?」
「めちゃくちゃ恥ずかしい」
顔から火が出そうなくらいだ。
「……目、閉じようか」
健吾が瞼を下ろす。完全にキス顔。
「それ、もっと恥ずかしい……!」
顔を離して頬を手で押さえると、ぽっぽしている。健吾も同じように頬を染めて俺を見ている。
「どうしようか」
「うん……やっぱり健吾が食べて」
「いや、時也が食べてよ」
「そんなことできないよ」
「でも」
「おい、バカップル!」
突然会話を遮る声が。
声のしたほうを見ると、少し離れたところで友人の伊達と江藤が呆れ顔で俺たちを見ている。
「ふたつに分けて食べろよ」
「あ……」
「そうか。時也、そうすればよかったんだよ」
そっか、ふたつに分けるのか……全然思いつかなかった。江藤の言葉のとおりに健吾が肉まんをふたつに分けて、半分を俺に差し出すので受け取る。
「いつ気がつくかと思って江藤と見てたけど、いつまで経ってもイチャイチャイチャイチャ。我慢できなくて声かけちまったじゃねえか」
伊達がそう言ってため息を吐く。見られてたんだ……恥ずかしい。健吾を見ると、健吾も頬を赤くしている。
「だったら早く教えてよ……」
肉まんを食べながら文句を言うと、伊達が江藤を見る。
「だってさ、江藤」
「なんだよ」
俺たちのことバカップルとか言いながら、自分たちだってイチャついてるし。まあ、仲よくしているのはいいことだけど。
「いつからそこにいたの?」
先に肉まんを食べ終えた健吾が聞くと、伊達と江藤が口角を少し上げて顔を見合わせる。
「いつだっけ?」
「ふたりがコンビニから出てきたところを伊達が見つけて、後をつけたんじゃなかった?」
なんだそれ……最初から全部見てたんじゃん。めちゃくちゃ恥ずかしい……。更に頬が熱くなる。
「ま、とりあえず一件落着?」
伊達が、健吾と俺の肩をぽんぽんと叩く。
「おいしかったね、時也」
「うん」
微笑みかけられてどきりとする。健吾の笑顔はいつでも優しくて、心が温かくなる。
「じゃあ解散」
なんで伊達が仕切ってるんだろう。わからないけど、まあいいや。健吾と俺、伊達と江藤に分かれて公園を後にする。少し風が出てきた。
「時也、手繋ごうか」
「うん」
人通りがないから、指を絡めて手を繋ぐ。
色々恥ずかしかったけど、ひとつの肉まんがおいしかった。