2+2=4(伊達×江藤)⑥
そのまま伊達の第一志望校は聞けず、あっという間に入試の日になってしまった。入試の日、試験会場である教室に着くと伊達がいる。一瞬目が合って、すぐに逸らされた。伊達のそばにいたい……そう強く思った俺の心にあるのはなんなんだろう。
健吾と時也は別の教室だったようで、入試の日は会わなかった。
合格発表の日、俺は無事合格していて、伊達はどうだっただろうと思っていたら伊達からメッセージが届いた。
『後で会いたい。詳しくは全部そのとき』
高校に必要書類を取りに行き、中学の担任に合格の報告をして俺の帰宅後少ししてから伊達が家に来た。「どうだった?」と聞くので、合格していたことをそのまま答える。『詳しくは全部そのとき』と書かれていたのでメッセージではなにも伝えていなかった。
「伊達は?」
「俺も」
「じゃあ担任に報告行ったんだよな?」
「行った。その前にちゃんと高校に行って書類ももらってきた。おまえと同じ高校」
さらりと答える伊達は表情が読めず、なんだか今日は表情が硬いようにも感じる。同じ高校、というところで心臓が高鳴った。
「で、詳しくってそのこと?」
「じゃんけんしようぜ」
唐突な言葉に首を傾げる。
「なんで?」
「俺が勝ったら言うことひとつ聞け」
「そんなの嫌だよ」
「じゃーんけーん」
人の話を聞けよ、と思いながらチョキを出すと伊達はパーで俺の勝ち。
「しょうがねえな。江藤の言うことひとつ聞いてやる」
随分偉そうに言うな、と思いながら、心になにか引っかかるものがある。伊達は俺になにか言いたいことがあって来たんじゃないのか。
「じゃあ、もう一回じゃんけんしよう」
「え」
「ほら」
驚いている伊達ともう一回じゃんけんをすると、俺の勝ち。
「もう一回」
複雑な表情をしている伊達とまたじゃんけんをして、パーを出そうと思ったところをチョキに変える。ちょっとずるいけど、伊達の勝ちだ。
「しょうがないな。言うことひとつ聞いてやる」
「……」
暫しぽかんとしてから、自分の出したグーと俺の顔を交互に見た伊達が笑い出す。
「素直じゃねえな」
そう言って俺の手を取り、軽く握った。その指先が妙に冷たくてどきりとする。伊達が緊張してる……?
「俺の恋人になって」
心臓がどくんと大きく脈打つ。俺の顔を見て返事を待つ伊達から視線を逸らしたくなってしまうけれど、今はそうするときじゃない。どきどきをごまかすように小さく息を吸って吐いて、口を開く。
「じゃんけんで負けたし、仕方ないな」
こういうときくらい可愛いことが言えたらよかったのに、と自分でも思う。でもそんな俺を伊達はこの上なく優しい瞳で見つめる。
「ほんとに素直じゃねえな」
手を引かれ、伊達の腕の中に閉じ込められてしまってどうしていいかわからないけど、どきどきしながら伊達に身体を預けてみたらとても心地よかった。