2+2=4(伊達×江藤)⑤
伊達は要注意人物だ、と脳にインプットする。気をつけろ、隙を見せるとまた手を出される、と警戒しながらも一緒にいる。健吾と時也はうまくいっている様子でほっとする。ふたりが名前呼びになり、伊達が冷やかして「俺たちも真似しよう」と言い出したのがきっかけで「日高と根岸」は「健吾と時也」になった。
「伊達は絶対ないわ……」
俺の呟きは本人には聞こえていないようで、伊達は窓の外を見ている。伊達は絶対ない、そう思うのに、ふとした瞬間に観覧車でのキスを思い出してしまう。伊達はあれからもなんでもないように接してくるので、それもまた腹が立つ。
夏になる前、時也が伊達と俺に第一志望校を聞いてきた。俺が答える前に伊達が、教えない、と答える。
「なんで教えてくれないの?」
時也は寂しそうな表情で伊達と俺を見ている。別に俺は教えないわけじゃなけれど、と思い口を開こうとしたら伊達が視線を送ってきて、その目が「言うな」と言っている。
「そんなにいつまでも四人一緒にいられねえよ」
伊達がため息を吐いて言った言葉に、さすがにその言い方はないだろうと俺が口を挟もうとすると、伊達に、行こう、と手を引かれてしまう。ショックを受けた様子の時也を健吾が慰めているのを見る。
「あんな言い方ないだろ」
「いいんだよ。いつまでも四人で仲良ししてられないのはほんとだろ」
それは確かにそうかもしれないけれど、と俺は口を噤む。なんとなく健吾と時也とは気まずくて、伊達とふたりで行動することが増えた。
「時也に謝れよ」
「俺はほんとのことしか言ってねえ」
「それは……そうかもしれないけど」
俺も伊達の第一志望を知らない。もう決めているはずなのに。
「伊達はどこの高校が第一志望なの?」
勇気を出して、軽い口調で聞いてみる。気軽に聞いた風ならば答えてくれるんじゃないかと少しだけ期待して。
「どこでもいいじゃん」
突き放すような答えにつきんと胸が痛くなる。俺の志望校を伊達に聞かれたときには正直に答えてやったのに……と唇を噛む。なんでこんなにいらいらするのかわからない。
俺も健吾と時也と同じ高校を第一志望で受ける。伊達も一緒だったらいいな、と思いながら、伊達が時也に言った言葉が思い出されてしまう。