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2+2=4(伊達×江藤)③

日曜日、駅での待ち合わせに向かう途中で伊達と会った。


「あいつら、すっきりしてくれるかね」

「してほしいな」


伊達の言葉に思ったまま答えて、ふたりで駅に向かう。でも途中で、これだと伊達と一緒に来たみたいだなと思い、伊達に、先に行け、と言って俺は足を遅くする。


「なんで?」

「いいから」


伊達の問いかけに答えず、俺はコンビニに入る。コンビニの中から伊達が先に行ったのを確認して俺も駅に向かう。……伊達は待っていてくれると思っていた自分が心のどこかにいて戸惑ってしまう。


「江藤、遅い」


駅に着くと伊達に文句を言われた。


「時間どおり」


時計を見てから答えて、一瞬交わった視線を逸らした。

電車に揺られて数駅進んだら座席がふたつ空いたので、日高と根岸に座らせようと考えて声をかけようとしたら、日高が先に「根岸、座って」と言った。


「ひだ……」


隣は日高に、と思ったのに、伊達によってなぜか空いたもうひとつの座席に俺が座らされた。


「ちょっと待て、違うだろ」

「違わない」


ここは日高が座るべきであって、と言いたいけれど本人を目の前にして伊達と言い合いをすることもできない。口を噤む俺の前に伊達が立つ。なんだか変な感じだ、と思いながら伊達を見上げると、どの角度から見ても格好よくて少し腹が立つ。


遊園地に到着し、まずはジェットコースターに乗る。それからティーカップ、バイキングと乗った。


「ちょっとハード……」

「少し休もうか」


音を上げる根岸と、と根岸を気遣う日高。


「……」


こいつら、バレバレなのになんでくっつかないかな、と思いながらふたりを見ていると、伊達が俺の首に腕を回す。


「休む時間がもったいない」

「離せよ」

「いいだろ」


伊達に引きずられるように連れて行かれる先は――お化け屋敷。勘弁してくれ、と思いながらそんなことは言えない。


「なに、江藤怖いの?」

「全然」


本当はすごく怖いけど、素直に言えない。

お化け屋敷は歩いて進むタイプで、現れるお化けにびくびくする俺の肩を伊達が抱く。


「怖いなら素直に言えよ」


少し笑っている表情がなんだか癇に障ってやっぱり素直に言えない、というより言いたくない。


「怖いわけじゃない。驚いてるだけだ」


そう答えている間も、現れるお化けにびくつく俺。


「素直じゃねえの」


肩を抱いていた手が離れて、そのまま手を繋いでくれた。それだけなのに急にほっとして、なぜかどきどきし始める。お化けがどこから現れるかわからないどきどきじゃなくて、伊達にどきどきしている自分に、なんでだろう、と思う。


「ほら、もう出口」


お化け屋敷を出ると、伊達がぱっと手を離した。お化けはもう現れないのにまだ心臓はどきどきして、もっと手を繋いでいたかったと思ってしまう。


「さっさと戻って邪魔しようぜ」


伊達が悪戯っ子のように笑いかけてくるから、また心臓がおかしな動きをする。


「くっつけに来たんじゃないのか」


ため息を吐いて伊達から目を逸らす。


「俺とふたりでいたいか」

「全然」


俺が言い返すと、伊達に髪をぐしゃぐしゃと撫でられた。


「それ、いつもやるけどやめろよ」

「素直な奴にはやらねえよ」


髪を直しながら文句を言う俺に、伊達はさらっと言った。その言葉にまた俺はむっとする。


「素直じゃなくて悪かったな」


真実を言われて不機嫌になってしまう俺の隣で伊達が少し笑ってから、俺の頭をぽんぽんと撫でた。今度のそれは優しくて、まだどきどきしていた心臓が更に動きを速くする。おかしい、と俺は自分のシャツの裾を握った。

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