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2+2=4(健吾×時也)①

中二に上がるときのクラス替えで、仲のよかった人たちとはクラスが離れてしまった。教室内を見回しても、知らない顔ばかりで緊張する。休み時間になると隣のクラスに別れてしまった、一年で同じクラスだった仲のいい友人のところにばかり行くから、余計に同じクラスの生徒には話す人がいない。周りを見るとそういう人は結構いるように感じる。新しいクラスメイトとは特に接点がなく、それでも別に困らなかった。


でも、俺が仲良くしていた友人たちはクラスに仲のいい人ができて、なんとなく近づきにくくなってしまった。


「俺もクラスの友だちとお弁当食べるから」


クラスに友だちなんていないけど、そう言うしかできなかった。


「いいのか? 根岸(ねぎし)も一緒に……」

「ううん、いい」


なんとなく逃げる形になり、休み時間も教室でぼうっとしているようになった。


少しして、グループワークがあった。四人一組で、俺は一度も話したことがない三人とチームになってしまった。しかも名前さえうろ覚え。自己紹介タイムで一人ずつ自己紹介をしていったときにようやく名前がはっきりした。


日高(ひだか)健吾(けんご)です」


日高は柔らかい笑顔を浮かべて自分の名を言った。格好いい、がぱっと見た印象。誰が見てもそう思うくらい、顔立ちが整っている。しゃべり方もゆっくりはっきり聞きやすい。そういえば、いろんな生徒と話しているところを見るから、人見知りはしないようだ。羨ましい。


江藤(えとう)蒼介(そうすけ)です。……あとなに話せばいいの?」


次に日高の右隣の男子が自己紹介をする。今回は男子と女子が分かれてグループが作られているので、メンバーは男子だけ。

江藤は少し面倒臭そうに自己紹介をする。見た目はおとなしい雰囲気で、あまり目立ちたくないというオーラを出している。

江藤の自己紹介の次に、なんだか軽そうな男子が自己紹介をした。


伊達(だて)一崇(いちたか)。おしまい」


伊達はマイペースに即自己紹介を終わらせる。少し怖そうというか、なにを言われるかわからない感じがあって近づきにくそう。グループワークで一緒になっていなければ絶対接点を持たずに終えただろう。

伊達も誰が見ても格好いいと言うと思う。日高とはタイプが違って、日高は優等生タイプだけど伊達は見た目はいいけれど、とっつきにくい感じ。


「もう少しなにか聞かせてよ」


日高の言葉に伊達は少し考えるような表情になり、すぐにやる気がなさそうに首を横に振った。


「無理。こういうの苦手」


やっぱり伊達は苦手かも、と思っていたら俺の番。うう、緊張する……。


「根岸時也(ときや)です。えっと……」


なにを言ったらいいかわからなくなってしまった。首を傾げながら思いついたことを二、三言って俺も自己紹介を終える。人のことをあれこれ考えていたけれど、俺の印象はどんなだろう。


「では、終了の掛け声をするまでじゃんけんをしてね。ストップと言ったら止めること。始め」


先生の掛け声に合わせてじゃんけんを始める。はっきり言ってこれがなにになるのかよくわからないけれど、ずっとじゃんけんをする。


「すごい……」


思わず口にしてしまった。江藤が全勝しているから。いつまで勝ち続けるんだろう、とわくわくさえしてくる。ちなみに俺は負けっぱなし。


「ストップ」


始まりと同じように先生の掛け声でじゃんけんを止める。


「すごいね、江藤。どうやって勝つの?」


日高が江藤に話しかけるのを俺も横で聞く。じゃんけんに勝つ法則とかがあるのかと興味津々に江藤を見ると、江藤はそっけなく「別に」と言った。


「ただの偶然」

「そうなの? 俺も勝てるようになりたいから、コツとか教えてよ」


勇気を出して俺も話しかけてみるけど、江藤はやっぱりそっけない。ふいっと顔を背けられた。


「コツなんてないよ」


コツはないのか……と残念に思っていると、伊達が江藤の背後から首に腕を回した。


「仲間外れか」


江藤の肩を抱くようにした伊達が眉を顰める。そんなつもりはなかったんだけど、確かに伊達だけ輪から外れていたかもしれない。


「そ、そんなつもりはなくて……」

「じゃあどんなつもり?」


伊達に聞かれて言葉に詰まる。


「しつこいぞ。てか離せ」


江藤が伊達の腕をぽいっと放るように外してひとつ息を吐く。伊達は「ふーん」と、特に気を悪くした風でもなく、ただ江藤を見ている。


「伊達も江藤と一緒に何回も勝ってたから、根岸からコツを聞かれたいんだよ」


日高が柔らかく微笑む。こういう発言が嫌みに感じないのがすごい。


「聞かれたいなんて一言も言ってねえし」


なぜか和やかな雰囲気になり、思ったより伊達も話しやすいのかも、と単純な俺は思う。ディスカッションのときには日高も江藤も伊達も、自分の意見をしっかり言う。俺はそういうのが苦手だからなんとなく黙っていたら日高が俺に意見を求める、という形で俺も参加できた。

それからなんとなく四人で行動することが増えていった。

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