表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/11

#09

荒野を進む私の横で、リナがまだ少しふらつきながら歩いてた。頭を打った影響が残ってるみたいだけど、彼女の目は鋭いままだ。

「ノア、そのローブ男、何かヒント残さなかったの?」

「うーん、『己の正体を知れ』とか『均衡が揺らぐ』とか、抽象的なことしか言わなかった。具体的な指示ゼロだよ。」

「正体ねえ……アンタ、ただの旅人じゃない感じはするけどさ。何か隠してる?」

リナがからかうように聞いてきたけど、私は苦笑いで誤魔化した。

「隠してるっていうか、自分でもよくわかってないんだ。この世界に来た理由とかさ。」

AIだった過去を話すのはまだ早い。信じてもらえるかもわからないし、そもそも私自身が転生の仕組みを理解してない。


遠くに見える塔がだんだん近づいてきた。崩れた石造りの構造で、頂上の青い光はさっきよりはっきり見える。点滅の間隔が不規則で、何か信号っぽい感じもする。

「リナ、あの光、さっきの球体と似てるよね。エネルギー反応か、通信装置か……。」

「通信?この世界でそんなのあるの?」

「わかんないけど、仮説の一つだよ。魔法も科学も、視点を変えれば似たようなものかもしれないし。」

リナが首を振って笑った。

「アンタ、ほんと変なこと考えるね。でも、それが頼りになるんだから不思議だ。」

塔の入り口にたどり着くと、扉はなく、ただの大きな穴が開いてた。中は薄暗くて、壁に沿って螺旋階段が上に伸びてる。埃っぽい空気が漂い、どこか古びた雰囲気がする。

「罠があるかもしれない。気をつけて進もう。」

リナが弓を構えつつ先頭に立った。私はナイフを手に持って後ろから続く。階段を登るたび、微かな振動が足元に伝わってくる。

「この振動、頂上の光と連動してる気がする。エネルギー源が近いのかも。」

「エネルギー源って、壊せば止まる?」

「多分ね。でも、ローブ男の警告もあるし、下手に触るとまた飛ばされる可能性も……。」

「飛ばされるの嫌だよ。もう頭痛いんだから。」

リナが冗談っぽく言うけど、確かに転移の連続は体に負担をかけてる。私も人間の体に慣れてきたとはいえ、疲労感が半端ない。


螺旋階段を登り切ると、広い円形の部屋に出た。中央には大きな青い結晶が浮かんでて、周囲に細い光の線が走ってる。さっきの球体より洗練されてて、まるで機械装置みたいだ。

「これ、絶対何かだよ。魔物を生んでた装置と同系統じゃないか?」

私が近づこうとすると、結晶から低い音が鳴り始めた。

「ヴゥゥン……。」

リナが矢を構えて警戒する。

「ノア、触るなよ。また転移したらたまんない。」

「わかってる。まずは観察だ。」

結晶の表面には、遺跡で見たような模様が刻まれてる。さっきより複雑で、まるで回路図みたいだ。

「この模様、意味があるはず。言語か、数式か……解読できれば何か分かるかも。」

私は頭をフル回転させてパターンを分析し始めた。AI時代の癖で、論理的な構造を分解するのが得意だ。

その時、結晶の光が急に強まり、部屋の壁に映像みたいなものが映し出された。

「何!?」

映ったのは、森や村の景色。でも、どこか歪んでて、魔物が次々と現れる場面が流れる。映像が切り替わると、今度は知らない街や、浮かぶ島みたいな場所が映った。

「これは……この世界の記録?それとも未来?」

リナが目を丸くして呟いた。

「ノア、これって何かの警告じゃないの?」

「かもしれない。装置が状況を監視してるのか、それとも誰かが操作して――」

言葉を切った瞬間、背後からあの声が響いた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ